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松井優征が語ったメディアミックス成功の秘訣!ネウロアニメ化失敗から学んだ術とは!?

魔人探偵脳噛ネウロ:全9巻セット [マーケットプレイスDVDセット]

松井優征といえば「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」で大ヒットを飛ばした人気漫画家だ。ネウロは年齢層の高いコアなファンがつき、暗殺では幅広い年齢層からライトなファンを獲得したオンリーワンとナンバーワンになれる凄腕漫画家だ。また「暗殺教室」は実写映画化され大ヒットを記録した作品でもある。インタビューを読むとこれはネウロのアニメ化失敗から学んだ結果だと分かった。今回は実際の現役マンガ家が語ったメディアミックス成功への秘訣をまとめたい。

 

魔人探偵脳噛ネウロ 文庫版 コミック 全12巻完結セット (集英社文庫―コミック版)

ネウロといえば「人間の成長」をテーマにした奥行きのある人間ドラマに加え、小ネタや時事ネタ、キャラ同士のやりとりや個性的な凝った作画が魅力の作品だ。 そんなネウロのアニメ化は、2007年10月から日本テレビの深夜で2クール放送された。今と違い深夜アニメはそんなに多くなく、特にジャンプアニメとしては「デスノート」くらいしかなく珍しかった。アニメ会社マッドハウスと高クオリティな作画と演出で大成功したデスノートと同じ会社と話題を呼んだりもした。しかし実際アニメが放送されると不評が相次いだ。理由は原作を大幅に改変していたためだ。時系列やキャラクターの性格を大幅に改変して、原作にあるシーンをバッサバッサとカットする割に対して面白くもないアニメオリジナルストーリーを入れまくる1番イラつくパターンだ。もちろんアニメは2クールしかなくて原作は未完の作品だから、原作をベースにオリジナルストーリーの手段を選んだのは理解できるしヤコの父親の謎を物語の軸に置いたのも悪くないと思った。しかしアニメオリジナル展開でやるにしても、最低限の原作リスペクトは欲しかった。ネウロのアニメはそれすらできていなかった。例えば電子ドラッグという犯罪願望の無い人間を犯罪に走らせるウイルスを扱うエピソードがネウロには中盤存在する。そのドラッグは犯罪願望のある人には効かない設定にも関わらず、犯罪願望のあるヒステリアこと百舌貴康に電子ドラッグが効いてしまっている。これでは台無しだ。何故なら電子ドラッグはあくまでも犯罪願望が薄い人の理性を洗脳し、犯罪を犯してしまうドラッグ。つまり自分の中に芯のある動機で犯罪を犯す奴には効かない設定だ。その為芯のない「謎」はネウロの腹は満たされない。これは作品のテーマにも関わる大事な部分だ。しかしアニメではその設定を無視している。尚且つ「伏線を張ってやったぜ!」という勘違いドヤ顔が透けて見えるのが腹立たしい。これでは「原作を理解していません」と無知を晒しているようなものだ。

また原作最大の魅力であるコラージュの効いた魅力的な独特の作画の再現は愚か、監督が見せ場にしたいと語っていた犯人の豹変すらクオリティが低かった。豹変シーンくらいはアニメというマンガと違い音と動きで表現するメディアな分見せ方はいろいろ工夫できたはずだ。しかしなんの工夫もない原作の縮小生産でしかないクオリティは絶望的だった。

アニメのラストも百歩譲ってヤコとサイが異母兄弟というオリジナル展開は許せたとしても、ネウロとヤコの再会シーンは最悪だ。最後ネウロと再会したヤコが涙を流し嬉しそうな顔で振り向く。これは完全にヤコのキャクターを読み違えている最悪のカットをラストに持ってきてしまった。原作のラストカットと見比べて欲しい。

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<出典:『魔人探偵脳神ネウロ』/松井優征/集英社>

どちらもネウロと再会した時の顔だ。

もう説明はいらないだろう。

松井優征はアニメ放送前にジャンプのコメント欄にこんな嬉々として「おかげさまでアニメ化まで来れました… ぜひご期待ください!!実現すれば面白そうなプランもいくつか…」というコメントをしていた。果たして実現すれば面白かったいくつかのプランとは何だったのか?今は知るよしもない。

 

 

暗殺教室 コミック 全21巻完結セット (ジャンプコミックス)

松井のネウロの次の作品はネウロを大きく超える大ヒット作となった。(ネウロ好きな自分としては少し寂しかったりするエピソードの元で暗殺は成功していて機会があればいつか語りたい)大ヒットのおかげで暗殺の7巻はアニメDVD同梱版が発売されたのだが、その時の松井のコメントが「原作を尊重して頂けるというのは幸せな事なんだなあ… と、しみじみと感じました。」というものだった。

「アレ?これネウロのこと言ってね?」

長年ファンの中で松井先生自身のネウロのアニメについての本当の気持ちについて考えてたファンにとってはようやく本音が聞けたと感じた瞬間だった。その後暗殺はテレビアニメ化だけでなく、実写映画化も決まる。

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アニメはともかく実写はとにかく不安だった。監督は「海猿」シリーズの羽住英一郎監督と海猿の4作目のクオリティを考えれば悪くない人選かなと感じましたし、主演の「Hey!Say!JUMP」の山田涼介も4代目金田一少年の演技は良かったし、他に誰が渚を演じられるかを考えると悪くないと感じた。ただビッチ先生が元KARA・知英という韓国人が演じると発表されたのには違和感を感じた。別に韓国人に差別感情を持っているわけではない。しかし「日本語すらカタコトの彼女を何故他国語ペラペラの外人役に選んだのか?」と疑問に感じたのだ。また、映画オリジナルキャラを投入するという地雷としか思えない材料まで発表されもはや絶望しかなく、殺せんせーのCGの安っぽさや当時まだあまり有名でなかった菅田将暉演じるカルマは「何故前髪をあげてるのか?」など不満点ばかり目につくようになっていった。

しかしいざ公開されてみると原作ファンの感触は悪くなく映画は大ヒットした。ただし映画の内容は実写化によくある基本ダイジェストで所々オリジナル展開で補うという作りで際立って優れた作品ではなかった。では何故原作ファンに受けたのか?それは原作をしっかり尊重した作りだったからだ。インタビューで羽住監督と松井先生は何度もキャッチボールのようにやり取りをして脚本を作ったと語っていたが、映画はそのやり取りがしっかりと感じられる作りになっていた。具体的にいうとカエデのキャラの描き方が素晴らしかった。原作でもまだ披露されたばかりの展開がスクリーンでしっかりと描かれていたのだ。この時「色々大人の事情こそ挟まれてはいるが現場のスタッフやキャスト、そして原作者の絶対原作ファンを満足させてやる!」という熱意が伝わって来た気がした。この熱意によって原作ファンを満足させることに成功したのだと感じる。そして映画の大ヒットにより第2弾も決まり、アニメも1クール目も原作に忠実に手堅く成功させ2クール目が決定した。

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正直もう一作目でそこそこなものが観れたし2作目は安心だろうと考えていた。ここで松井先生はこのメディアミックスでとんでもないことを考えてた。それは映画と漫画の同時完結だ。基本的に漫画が終了してから映画で原作と同じラストを描くか、もしくは原作完結を待たずに映画オリジナルのラストで完結させてしまうかなどちらかが今の日本映画界のやり方だ。原作と同じラストにしたければ原作の完結を待つしかなく、それだと旬を逃した時期の映画公開になってしまう。それを避けるために松井先生は今回の同時終了プランを打ち出したのだ。そのために松井先生は原作完結のかなり前の段階で完結までのプロットを完成させて、映画スタッフ、アニメスタッフに渡して念入りに話し合いをしてみんなでラストを共有して作り出していくことでジャンプでの連載終了と映画公開を同時タイミングに出来たという非常に珍しい事が起きたのだ。

 

 

これに対して松井先生はインタビューで「自分の好きな漫画こ実写映画を観た時に原作と違うところや原作の意図を汲み取れているのか?」ということばかり気にして審査員のような窮屈な気持ちになることがあり純粋に楽しめない事があると語ったいた。これは「ネウロのアニメでも同じ思いだったのではないかな?」と思う。

現にそのインタビューで松井先生はネウロのアニメについて本音をぶっちゃけており、今回はその失敗を生かしてコミュニケーションを積極的にとり原作ファンを大切にしたと語っていた。

 

 

  • 最後に…

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN

もちろん考えは様々だと思いう。「進撃の巨人」の諫山創先生のように、映画として面白くして欲しいから原作とは全く別のものを作って欲しいとオーダーを出す原作者もいる。

バクマン。

しかしどちらの作品が、原作ファンを満足させ、新規ファンを取り込めたのだろうか?仮に原作から大きくアレンジを加えるとしても大根仁監督の「バクマン。」ぐらい映画として面白い作品なら文句はない。しかし今の実写映画で大きくアレンジを加える作品は基本的にどっちも満足させられず誰得作品になってしまう事が多い。そんな中、松井優征先生のように原作ファンを第一に考える作家は魅力的に映った。

 

mjwr9620.hatenablog.jp

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※今回の記事に参考にしたインタビューはこの本に載ってます!