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自分は『トランスフォーマー』ではなくマイケル・ベイが好きだったんだなと思った『バンブルビー』

バンブルビー (吹替版)

トランスフォーマー』史上最高傑作と言われる『バンブルビー』を観たけど物足りなかった。

 

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興行収入の面でいえばシリーズ最低の部類らしいが、製作費が今までの作品と比べるとかなり安いので大ヒットと言えるらしい。それでも日本の興行は物足りないというのが本音だが、世評は物凄く良い。アメリカの大手批評サイト『ロッテントマト』を見ると批評家支持率が93%で観客支持率が76%とトマトが腐りまくり、ポップコーンが倒れまくっていたベイ版と比べればその評価の差は歴然だ。

 

ラヴィス監督のインタビューを読むと『トランスフォーマー』を愛している事が伝わってくる。そもそもマイケル・ベイは初め本シリーズのオファーが来た時に「おもちゃの映画なんてやりたくない」と渋ったエピソードがある。トランスフォーマーに思い入れのカケラもない監督なのだ。それに対してトラヴィス監督はおもちゃで遊んだ世代。だからビジュアルはおもちゃの質感に近づけるし、トランスフォームシーンもおもちゃ同様に頭がお腹に収まるように細かい演出にこだわる。ベイはカッコよさ重視でガチャガチャと変形していただけだけど、トラヴィス監督は丁寧かつスムーズな変形を演出しておもちゃで遊んだ世代の懐かしさを刺激する。きっと「トランスフォーマーのおもちゃのあるあるネタ」に溢れていたのだろう。

 

ただ残念な事に自分は本作の評価ポイントとしてよくあげられるおもちゃにもアニメにも80年代にも思い入れがないから、「良い映画」とは思ったけど世間の絶賛ムードとは少し違う感想を覚えた。それどころかベイ版が相対評価で下げられるコメントを見る度にナイーブな気持ちもなった。何故片方の作品を上げる為に片方の作品を必要以上に下げるのだろうと疑問に思う。

 

 

ミュータント・タートルズ (吹替版)

ただここから書くことはベイ版を持ち上げてトラヴィス版を下げるような事だから、自分も同じ穴の狢なのだろう。それでも勘違いして欲しくないのは自分はトラヴィス監督が作りたいと思った映画のビジョンを実現した映画作りの姿勢は本当に憧れるし、自分とは違う方向の監督であることを理解した上でアドバイスをしたベイも頼れる監督だなと思う事だ。ベイはミーガン・フォックスの時も大人の対応をしてたし、自身製作の『ミュータント・タートルズ』にヒロインでキャスティングしてあげたりと本当に良い人なのだろう。だから下に書くことは本当に個人的な好みの話でしかないし、一部報道にあるようなベイイズムを続編では追加するという話はベイとしてもトラヴィス監督の個性を消すことになって不本意なのではないかと思ってる。だから仮に続編がトラヴィス監督が撮るにしても下手にベイに近づけて欲しくないというのが本音だ。もちろん彼が本心からベイに近づけることを望むならそれに意を唱えることもしない。

 

前置きが長くなったが、『バンブルビー』は個人的にかなり物足りなかった。上映時間もベイ版より短いはずなのに、かなり長く感じた。別に退屈だった訳でもないのだが、ベイの兎に角BGMガンガンの騒がしい作風が懐かしくなる作品だった。

 

 

本作ではベイらしさは殆どない。ベイの十八番のスローモーション演出が1つもなければ、カーチェイスシーンもカメラが色々な視点に切り替わってく演出もなくマイルドな演出が続く。バンブルビーがカーチェイスシーン中に変形するシーンは『最後の騎士王』にもあったけど、まるで慌ただしくなく落ち着いて観ることが出来る。下ネタもマリファナネタもないから小さい子も安心。その割には人の死に方描写は液体が飛び散ってエグかったけど!無駄に細かいカット割りもなければ、ヒロインもセクシーではなくナード。セクシーなのは悪役の方だ。トランスフォーマーの造形だってもっとゴチャゴチャしてた方が好きだし、登場するトランスフォーマーの数も基本的にバンブルビー1体と敵2体で物語が進む。誰がどこで何をしているかが凄く分かりやすいし、ベイ版で偶にあるどっちが敵でどっちが味方か分からなくなる現象もなかった。

 

ラヴィス監督は80年代の映画の質感に拘って画面のアスペクト比にも相当拘ったという。ベイ版は普通のカメラで撮ったシーンもIMAXで撮ったシーンもトリミング無しにゴチャゴチャに編集するからカットが切り替わるごとにアスペクト比が代わって映画に集中出来ない人も少なくなかったらしい。

 

2人の監督の作風の異なるポイントを並べていくとトラヴィス監督の『バンブルビー』が如何に優れているかが理解出来る。普通に考えればトラヴィス監督版のが優れてるのだろう。原作へのリスペクトもシッカリとある。ただ人間とは不思議なもので、必ずしも優れているモノの方を好きなるという訳ではないのだ。自分は足し算方式で要素を積み重ねていきゴチャゴチャになり収拾がつかなくなり映画としてのバランスを完全に失っているマイケル・ベイの作品のが好きなのだ。

 

 

結局自分は『トランスフォーマー』ではなく、マイケル・ベイ監督が好きだった。そんな事を再認識させられる映画だった。

 

最後に書きたいのは本作の3D公開少なくないということ。ベイ版の時は「最先端3Dを体感せよ!」みたいな感じでメチャクチャ拡大公開してたのに… こういう部分も監督の拘るポイントの違いが出ているのだろう… ベイはシリーズ毎に3Dのレベルを更新しようと努めていた。