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新海誠監督作品『君の名は。』興行収入250.3億円・国内歴代興行収入歴代4位の奇跡

君の名は。

興行収入250.3億円を記録して国内興行収入歴代4位を記録した新海誠監督作品『君の名は。』がメガヒットした理由を考える。

 

興行収入250億円突破までの奇跡

シン・ゴジラ

君の名は。』が公開されたのは天皇陛下生前退位SMAP解散こち亀連載終了など平成の終わりを感じさせ始めた2016年の夏公開だった。この年の夏、東宝庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』が興行収入82.5億円の大ヒットを記録していて「日本映画もやれば出来るじゃん!」というムードが世間に漂っていた。

ルドルフとイッパイアッテナ

その日本映画にとって良いムードの中、2016年8月26日に全国301スクリーンで封切られたのが『君の名は。』だ。ただ今から冷静に振り返ると本作の公開日は8月の最終週であり、小・中・高校生にとっては夏休みの最終日前後であり、大学生にとっても残り1/3の時期である。実はこの年の東宝は夏休み向けのアニメ映画は本作ではなく、3DCGアニメ『ルドルフとイッパイアッテナ』の方に期待をかけていた。確かに10代後半から20代にかけてをメインターゲットとする『君の名は。』より、ファミリー層が多そうな『ルドルフ〜』を夏休み映画の軸に置くという公開順は至極当然の考えに思える。

ファインディング・ドリー (吹替版)

ペット (吹替版)

しかし2016年8月6日に全国346スクリーンで公開された『ルドルフ〜』のオープニング興行は土日2日間で約2.11億円、最終興行は14.6億円とイマイチ振るわなかった。コレは同時期公開の『ファインディング・ドリー』『ペット』と客層が被っており、食われてしまったのが敗因と考えるのが妥当だろう。

つまり『君の名は。』は『シン・ゴジラ』大ヒットのお祝いムードの中での公開というよりは、同じアニメ映画の流れとして『ルドルフ〜』の興行がイマイチ伸び悩んだ後の残念ムードの公開だったとも言える。更に台風10号の接近で太平洋側の天気が荒れる中での公開などネガティブ要素は続いた。

言の葉の庭

ただ多くの人がご存知の通り君の名は。』はオープニング3日間で興行収入12.8億円を記録する大ヒットスタートを切った。東宝はオープニング記録を受けて最終興行60億円を狙えると発表。恐らくこの段階で「この手の熱心なファンが多いアニメ作品の興行はオープニングに集中する」と予想して最終興行から逆算すると控えめとも捉える事が出来る興行予想になったのだろう。ただしこの段階で既に新海誠監督作品の中で歴代No. 1ヒットだった『言の葉の庭』の興行収入1.5億円を超えている事、川村元気プロデューサーの公開前の興行目標だった15億円に既に肉薄していた事も記述しておきたい。

踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!

南極物語

しかし「興行はオープニングに集中する」という予想は良い意味で裏切られた。2週目の土日2日間の興行は11.6億円と1週目対比で124.8%を記録。興行収入も10日間で38億円を突破して、一部の関係者が「声には出さないけどこのクオリティなら興行40億円突破もあるかも」と思っていた夢のヒットラインを軽々と超えた。更に3週目ではオープニング時に予想されていた興行収入60億円を軽々と突破して、100億円突破も現実味を帯びてきた。そして公開5週目に日本映画としては宮崎駿監督作品5作品と『踊る大捜査線』2作品、『南極物語』の計8作品しか達成した事のなかった興行収入100億円を突破。歴代最高興行が1.5億円で一般人にとっては無名と言っても過言ではない監督の作品が興行収入100億円を超えた事は正に奇跡の大ヒットであり、「どの映画にも大ヒットの可能性は秘めている」事を提示した。

風立ちぬ [DVD]

崖の上のポニョ [DVD]

ただ本作の恐ろしいのは興行収入100億円突破が通過点に過ぎなかった事だ。公開6週目で興行収入128億円を突破して『風立ちぬ』の興行を超えて邦画アニメ歴代5位にランクイン。9週目には興行収入164億円を突破して『崖の上のポニョ』の記録を超えた。

デスノート Light up the NEW world

一方で本作の10週連続動員ランキング1位の夢は原作者がデスノートの存在する世界では「君の名は?」と聞かれても極力本名は言わない方がいい」とネタにした2016年10月29日公開の大ヒットシリーズ最新作『デスノート Light up the NEW world』に食い止められる。

もののけ姫 [DVD]

ハウルの動く城 [DVD]

ただ翌週には首位を奪い返して、公開14週目には興行収入194億円を突破して『もののけ姫』の記録を抜き国内興行収入歴代6位に浮上。更に公開15週目には興行収入199億円を突破して『ハウルの動く城』の記録を抜き国内興行収入歴代5位にランクイン。

千と千尋の神隠し [DVD]

アナと雪の女王 (吹替版)

そして公開16週目に『千と千尋の神隠し』『タイタニック』『アナと雪の女王』『ハリー・ポッターと賢者の石』の4作品しか到達した事のなかった国内興行収入200億円を突破

海賊とよばれた男(完全生産限定盤) [Blu-ray]

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー (字幕版)

その後『RANMARU 神の舌を持つ男』『海賊とよばれた男』など実写邦画が振るわなかったり、期待を大きく下回った『ローグ・ワン』などが公開された年末年始興行もロングランヒットを続け、公開22週目に再び動員ランキング1位を獲得。春休み興行までロングランを続け驚異の29週連続動員ランキングトップ10圏内をキープし、最終興行は250.3億円と国内興行収入歴代4位の記録的なメガヒット作品となった。

 

 

奇跡的なヒットの理由

youtu.be

奇跡的な大ヒットとなった『君の名は。』は「どうしてヒットしたのか?」という分析記事が数多く書かれた。その中で説得力があるのが、RADWIMPSの音楽を評価するもの。歴代のメガヒット作品の傾向を見ても『千と千尋の神隠し』『タイタニック』『アナと雪の女王』『ハリー・ポッター』『踊る大捜査線』『崖の上のポニョ』『美女と野獣』『ボヘミアン・ラプソディ』、そして現在大ヒット上映中の『アラジン』もつい口ずさみたくなるお馴染みの音楽が劇場だけでなく、テレビやラジオ・コンビニ等色々な場所でテロ的に流す事で多くの人の興味を引くことに成功した。

またSNSを上手に利用したという説明も説得力がある。過去には角川が「小説と映画」、フジテレビが「テレビドラマと映画」、ワーナーが「人気コミックと映画」と相乗効果でヒット作を連発してきたが、コレはあくまでも企業側が狙って起こしたブーム。一方で『君の名は。』は一般人がSNSで口コミを投稿することで普段の一人一人が宣伝をしている状況を作り出す事が出来た。当然この口コミを巨大なものになったのは前述したRADWIMPSの音楽や新海誠監督作品特有の圧倒的な映像美、ストーリー展開などの作品そのものが持つ魅力に加えて、関係者から「公開後の客がいなくなるんじゃ…」と不安視された大量の試写会や本作公開前に『名探偵コナン 純黒の悪夢』と『シン・ゴジラ』が大ヒットして合計約1000万人が劇場で本作の予告編を体験した事など運も絡めて様々な要素が重なり合った結果とも言えるだろう。また本作に対して否定的な意見もただ単に「つまらなかった」「ヒドイ映画」というモノではなく、ストーリーに関連した内容が多く「自分はどう感じるか確認したい」と思うキッカケになったのも興行的にプラスに働いた。

一方で「『恋愛』『入れ替わり』『タイムトラベル』『ディザスター』『記憶を失う』等、売れる要素をここまで詰め込んだのならヒットして当然」という意見も一部からは出た。ただ売れる要素を詰め込むだけでヒット作が出せるなら映画会社は苦労しないし、過去に売れる要素を詰め込んで大コケした作品が山ほどある事実を考えれば流石にこの意見は無理があるように感じる。何より2016年は上述した通り『シン・ゴジラ』が大ヒットした年でもある。そして『シン・ゴジラ』は庵野秀明総監督が東宝からの「恋愛要素を追加してくれ」というオファーを跳ね除けて無駄な要素を省いた事でヒットしたと評されていた。それなのに公開が1ヶ月程度しか違わない『君の名は。』が「売れる要素を詰め込んだからヒットした」という分析では、余りに全体の流れを捉えられていない様に感じる。シン・ゴジラ』と『君の名は。』の共通項は「やりたい事をハッキリさせてブレずにやりきった」という点だろう。コレは映画興行に関わらず全てにおいて当てはまる部分だと感じる。

 

 

SNSの悪い面も露呈

君の名は。』はSNSによってメガヒットに導かれた作品だが、SNSの悪い面も露呈させた。その1つが公開中にTwitterで拡散された本作の違法にアップロードされた動画へのリンクの拡散だ。実は日本の法律では違法にアップロードされた動画をダウンロードすることは犯罪に当たるが、ストリーミング再生する分には犯罪に当たらない。その為「自分は『君の名は。』をお金を払わずスマホで無料で観た」と自慢するツイートが相次ぎ、「合法だからセーフ」と知識をひけらかすモノも少なくなかった。公式がTwitterで注意勧告をするなど異例の措置を取った事も話題になった。違法で作品をアップロードした無職の男性は後に著作権法違反(公衆送信権の侵害)の疑いで書類送検されている。

また本作に限った事ではないが、「『君の名は。』を認めない人間をどうしても許せないタイプのファン」や「『君の名は。』を好きなファンをワザと不快させようとするアンチ」の書き込み合戦が起こったのも残念だった。映画の感想は人それぞれ多様な意見があって当然だし、1本の映画に対して議論が起こるのは寧ろ良い事だと考えてるけど「自分の意見を他人に押し付ける」タイプはファンにしろアンチにしろ勘弁して欲しいというのが正直なところだ。

 

 

最後に…

youtu.be

国内興行収入だけでなく、世界的に大ヒットを記録した『君の名は。』。今年は本作以来の新海誠監督最新作『天気の子』が公開される。果たして『天気の子』の興行収入はどうなるのか?今から楽しみだ。

 

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