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アンディとの思い出を胸におもちゃと子供を繋げる「ウッディの新たな役割」を提示した『トイ・ストーリー4』のラスト

トイ・ストーリー4 (字幕版)

<注意>『トイ・ストーリー4』のネタバレ

トイ・ストーリー4』に込められたメッセージについて考えたいと思う。

 

mjwr9620.hatenablog.jp

自分は『トイ・ストーリー4』を公開初日に鑑賞して否定的な感想を書いた。ただ今回は警察がクロ認定した容疑者に対して送検前に「シロにする捜査」をして冤罪被害が起きないようにするように、自分も本作のメッセージについて作品の完成度は置いて考えたいと思う。

 

 

  • 『4』のウッディの存在価値

トイ・ストーリー (吹替版)

本作のウッディはボニーの1番のお気に入りのおもちゃでは無いどころか、完全に忘れ去られた状況でクローゼットの中で埃を被っている悲しきおもちゃに成り下がっている。その上アンディの家ではリーダー格だったが、ボニーの家ではその役割もなくなり完全に存在価値が失われていた。つまりウッディはシリーズを通して暗示されていた「要らないおもちゃ」になってしまったことを意味する。

 

  • フォーキーを守る仕事に固執

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本作ではボニーが幼稚園で作ったフォーキーという先割れスプーンのおもちゃが登場する。しかしフォーキーは自分がゴミから作られている事実から「僕はゴッ、ミッだー!」と笑顔でゴミ箱へダイブする事を繰り返す。ウッディはフォーキーがボニーの1番のお気に入りのおもちゃだと理解しているから、彼がゴミ箱へ向かう事を阻止することに奔走する。この行為はおもちゃ仲間のバズやジェシーと協力して行う事も出来たはずだが、バズの「見張りを交代しよう」という声を無視して「自分の役割だ」と言い張りフォーキーの任務を眠たい目をこすりながら執拗に遂行しようとする。その姿はまるでフォーキーの見張りの仕事がなくなったら自分の役割、即ち存在価値がなくなってしまうという脅迫概念に駆られているようだった。ウッディはその後もフォーキーに対しておもちゃの役割について説く。しかしその説得は自分に言い聞かせる様に自己カウンセリングの意味も持っている様に演出されている。つまり自分がゴミだと感じてるのは他でもないウッディなのだ。

 

※ゴミなのにおもちゃとして求められているフォーキーとおもちゃなのに相手にされないウッディの対比が辛い… またゴミが求められるとおもちゃになるけど、おもちゃが求められないと…、的な問いにもなっている

 

 

  • ウッディの忠誠心は…

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物語の中盤で本作の悪役にフォーキーは誘拐される。ウッディはフォーキーを救う為に救出作戦に出るが失敗。共に戦った仲間も傷を負ったが、それには御構い無しに再び救出に向かおうとして「何故そこまでフォーキーを助けることに拘るの?」と質問される。ウッディはその問いに「忠誠心だ!」と怒鳴り、「もうオレにはそれしか残ってないんだ!」と嘆く。しかしウッディの忠誠心は既にボニーから必要とされておらず一方通行になってしまっている。

 

  • ギャビー・ギャビーとの出会い

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今回の悪役であるギャビー・ギャビーは前3作と異なり、1人の子供に愛されて助けたいというおもちゃの役割を全うしたいというウッディと同じ思想の持ち主だ。しかし彼女はウッディと同じタイプの内臓レコードを所有しているにも関わらず、壊れていて音が出ない。その為子供から選ばれることもなく、常に棚の中で「自分が子供と遊ぶ姿」を思い描いて過ごしていた。ウッディは彼女の想いを知り共感する。そしてボニーの為にフォーキーを救うためという理由と、恐らく内心では彼女に子供と遊んで貰うチャンスを作ってあげたいという気持ちから自分の内臓ボイスを彼女に託す。その結果彼女は迷子になっていた女の子を救う事が出来、彼女から愛される幸運を得る。彼女は長いおもちゃ人生の中で初めて子供に愛される喜びと子供を助けるおもちゃとしての役割を果たす幸せを噛み締めたのだ。そしてウッディはその彼女の笑顔を見た時、既に「自分の新たな役割」に気付いていたのだと感じる。

 

 

  • ウッディの「新たな役割」

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ウッディは内臓ボイスを失い壊れたおもちゃとなった。当然ヴィンテージ物としての価値も無くなった。ボーも腕が壊れている事からアンティークとしての価値はない。つまり2人とも本来のブランド品としての価値は失ったおもちゃとなってしまった。だからウッディはボニーの子供部屋を出てボーと一緒に「無限の彼方」へ向かう事を決める。ウッディがボーと共に行うのは未だ一度も子供達に愛されたことのないおもちゃと子供を繋げる役割だ。ウッディはアンディのおもちゃとして掛け替えのない思い出を貰った。だから今度は他のおもちゃにもその幸せを噛み締めてもらおうと持ち主がいた事がないおもちゃの為に活動しているのではないかと感じた。つまりおもちゃとしての役割を捨てたのではなく、現役としてのおもちゃを引退して新しい世代の為への活動を始めたという解釈も出来るのだ。こう考えると歳を取ってレーサーを引退しても、弟子を取って次の世代に繋げていった『カーズ3』的なメッセージ性を持った作品とも言えるし過去シリーズのウッディの哲学も全面肯定していることになる。

 

  • 結局ウッディはアンディを忘れられない?

トイ・ストーリー2 (吹替版)

トイ・ストーリー4』は好意的に解釈すれば上記の様な説明になる。しかし見方を変えればウッディは結局アンディとの思い出を忘れられないでいる様にも感じる。ウッディは『トイ・ストーリー2』で初めての持ち主に捨てられ傷付いていたジェシーに対して再びおもちゃとしての役割を与えてアンディの家に導いた。ジェシーはその過程でエミリーとの思い出を過去として断ち切った。ジェシーはおもちゃの宿命である最初の持ち主との別れを見事に乗り越えて成長したのだ。しかしウッディはアンディを忘れられずに、その思い出を胸に報われないおもちゃ達の救済活動に打ち込んでいるビターなラストにも解釈出来てしまう。

 

※ここら辺を踏まえると、ウッディがジェシーに保安官バッジを渡すシーンとか本当に切ない…

 

  • 最後に…

トイ・ストーリー4』の評価は本当に難しい。当たり前だけど現実世界にウッディは存在しない訳だからこれ以上考えても答えは出ない訳だが、それでも考えてしまう。本当の幸せは何なのかと… そして本当に残酷なのはこのエントリー自体が『トイ・ストーリー4』をテーマにした自己カウンセリングに陥っている事だ。

 

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