『アベンジャーズ エンドゲーム』の世界興行収入が『アバター』を抜き歴代1位となった。
- 3Dで映像革命を起こした『アバター』
『アバター』はジェームズ・キャメロン監督が2009年に公開したSF映画。最大の特徴は監督自らが開発した1台のカメラ本体に2台のハイ・ディフィニション・カメラを使用する「フュージョン・カメラ・システム」で撮影することで従来の3Dにはなかった、「奥行き感」のある3D映像を表現したことだ。製作費2.37億ドルに対して全米興行収入は7.60億ドル、世界興行は27.87億ドルを記録して監督の前作である『タイタニック』を抜いて全米・全世界共に興行収入歴代1位の座を更新した。
日本でも「観るのではない。そこにいるのだ。」という3D映像の魅力を謳ったキャッチコピーで公開され興行収入156.0億円の大ヒットを記録した。一方で『タイタニック』の国内興行収入262.0億円を100億円以上下回る結果になっており、世界的なヒットと比べると大人しい結果になったともいえる。
ちなみに現在では世界興行を大きく左右する中国では政治的な含意と革命をテーマとしていることや国内映画からシェアを奪う恐れがあることなどの理由から2D版の上映を禁止され3D版のみが短期間上映されるというよく分からない上映の仕方をされた。
本作が記録的なヒットとなった結果、その後数年間は「3Dブーム」が巻き起こった。その中でも一番の恩恵を受けたのがジョニー・デップとティム・バートンのタッグ作である『アリス・イン・ワンダーランド』だ。本作は製作費2.00億ドルに対して全米興行3.34億ドル、世界興行10.24億ドルの大ヒットとなった。日本でも興行収入118.0億円のヒットとなっている。ちなみに本作は『アバター』と異なり2Dカメラで撮影した映像をポスト・プロダクションで3Dに変換する方法が採られた。
ただ『アバター』の記録的なヒットは『タイタンの冒険』のように「元々2D映画として撮影した映像を、『アバター』の記録的なヒットを受けて急遽3D化された」作品も乱発された。
ちなみ日本ではフジテレビ製作の『THE LAST MESSAGE 海猿』が『アバター』のヒットを受けて急遽3D映画化を発表。興行収入80.4億円の大ヒットとなったが、本作も2D映画として撮影された映像を3D化した作品で3D映画としてのクオリティは最悪の部類。
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その後3D映画はチケットアベレージが高くなるから興行収入が見込めるというビジネス面での都合のみで作られたクオリティの低い作品ばかりを連発して「3Dブーム」は終焉を迎えた。今年公開されたキャメロン製作の3D映画『アリータ バトル・エンジェル』も製作費1.70億ドルに対して全米興行0.85億ドルの大コケ。今年は『アバター』が公開されて「3D元年」といわれた2009年から10年なので3D映画を振り返るエントリーを書きたいと思っている。
- ユニバース映画の成功作『アベンジャーズ』
3D映画で一時代を築いた『アバター』の世界興行収入を抜いて歴代1位の座を獲得したのが今年公開された『アベンジャーズ エンドゲーム』だ。本作は製作費3.56億ドルに対して全米興行は8.57億ドル、世界興行は27.93億ドル(2019年8月4日現在)と製作費も興行収入も驚異的。日本では興行収入60〜62億円程度と世界的なヒットに対してやや物足りないのが残念だ。
本作は「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」とよばれる同一世界上で独立した主人公の作品が描かれるシリーズの22作目で、最大の特徴は歴代の主人公が勢揃いする集大成映画になっていることだ。
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『アバター』と同じくMCUのやり方は他作品にも影響を与え数々の映画がユニバース化にチャレンジした。その最たる例はその最たる例はマーベルコミックスのライバル会社であるDCコミックスの実写映画化シリーズである「DCエクステンデッド・ユニバース」(原作はマーベルよりDCが先)だ。しかし本ユニバースはMCUの記録的なヒットに追いつこうと突貫工事的に作品を公開してしまったため、製作費3.00億ドルを注ぎ込んだヒーロー大集合映画『ジャスティス・リーグ』は全米興行2.29億ドル、世界興行6.57億ドルと振るわなかった。
またレジェンダリー・ピクチャーはゴジラやキングコングなど怪獣が同一世界上に存在する「モンスターバース」を展開したが、3作目の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は製作費1.70億ドルに対して全米興行1.10億ドル、世界興行3.85億ドルと苦戦。
更にユニバーサルが過去に製作したホラー映画をトム・クルーズやジョニー・デップをキャストに迎え同一世界上でリブートする「ダーク・ユニバース」も1作目の『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』が製作費1.25億ドルに対して全米興行0.80億ドル、世界興行4.09億ドルと振るわなかったことから「ダーク・ユニバース」は1作目で頓挫してしまった。
日本では東宝が2021年から「ゴジラユニバース」の公開を予定しているようだが果たして…
- 最後に…
記録的なヒット作品が登場すると、確実に後追い作品が登場する。しかしいくら後を追っても中々同じようにはヒットしない。3D映画もユニバース映画も成功作の表面をなぞるだけではダメなのだ。