2010年度代人気マンガの実写映画化作品興行収入ランキングトップ10を発表!
第10位 銀魂
興行収入 : 38.4億円
第10位は累計発行部数5500万部を超える空知英秋原作の人気マンガを『勇者ヨシヒコ』シリーズなどの福田雄一監督が小栗旬・菅田将暉・橋本環奈・長澤まさみ・新井浩文・堂本剛など豪華キャストで実写映画化した『銀魂』が興行収入38.4億円でランクイン。
原作でも屈指の人気を誇り、アニメ映画化もされた『紅桜編』を福田雄一監督が実写映画用にアレンジした脚本が使用された。「『コスプレ感』という批判に恐れず、リアルではなくマンガのデザインに寄せる」「CGのクオリティを意図的に下げてアニメっぽくする」「戦闘シーンは韓国のアクション監督に任せる」などして原作マンガ、というよりはテレビアニメの再現に徹した作りになっている。一方で福田雄一監督のオリジナルギャグが随所に挟み込まれているのが、作品全体のテンポを悪くしているという指摘もある。またシリアスシーンにも関わらず画的にチープな場面が目立つこともマイナスポイントとしてあげられる。
ただし「オリジナルギャグの挿入」と「シリアスシーンのチープな演出」というマイナスポイントは、シリーズ2作目の『銀魂2 掟は破るためにこそある』では大幅に改善された。『銀魂2』の興行収入は37.0億円で第13位にランクインしている。
第9位 のだめカンタービレ 最終楽章 前編
興行収入 : 41.0億円
第9位は累計発行部数3300万部を超える二ノ宮知子の人気クラシックマンガ『のだめカンタービレ』を武内英樹監督が上野樹里・玉木宏など豪華キャストで実写化したフジテレビのテレビドラマの劇場版にして完結編の前編が興行収入41.0億円でランクイン。
原作にあるマンガ特有のギャグ演出なども人形やCGなどを使用して再現することに成功した。またクラシックの演奏も主要キャストに楽器や指揮を習得させることで、音楽として聴き応えのあるシーンに仕上げている。
完結編の後編である『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』は興行収入37.2億円で第12位にランクインしており、前後編合計で興行収入78.2億円を記録している。
第8位 るろうに剣心 伝説の最期編
興行収入 : 43.5億円
第8位は累計発行部数6000万部を超える和月伸宏の人気マンガ『るろうに剣心』を大友啓史監督が佐藤健・武井咲・江口洋介・神木隆之介・藤原竜也・福山雅治など豪華キャストで原作の人気エピソード『京都編』を実写映画化した二部作の後編『るろうに剣心 伝説の最期編』が興行収入43.5億円でランクイン。
アクション監督の谷垣健治を招き、ワイヤーアクションを駆使して迫力があり見応えのある殺陣を演出。また原作では志々雄真実が全財力の五分の三をつぎ込んだにも関わらず、作画の関係からアシスタントに配慮して登場の次の週には左之助の手投げ爆弾で沈没した「煉獄」が実写映画版では最終決戦の舞台として使用される原作ファンには堪らない設定変更がなされている。その影響で実写映画版の志々雄真実と左之助には因縁がなくなってしまったため、最終決戦では志々雄真実が左之助に「誰だ、おまえ」と尋ねるシーンがある。原作を読んでいる身からするとツッコミポイントは盛りだくさんの実写映画版ではあるが、大迫力のアクションシーンで全て許されているといっても過言ではない作品。やはりどこか一要素でも突き抜けて良い部分がある映画は強い。
第7位 テルマエ・ロマエII
興行収入 : 44.2億円
第7位は「このマンガがすごい!」2011年版オトコ編2位などに選ばれ高い評価を得たヤマザキマリの人気マンガ『テルマエ・ロマエ』を『のだめカンタービレ』の武内英樹監督が阿部寛・上戸彩で実写映画化した『テルマエ・ロマエII』が興行収入44.2億円でランクイン。本作はシリーズ1作目が上位にランクインしているので、解説はその項目でまとめて記すものとする。
第6位 信長協奏曲
興行収入 : 46.1億円
第6位は第57回小学館漫画賞少年向け部門などを受賞した石井あゆみの人気マンガ『信長協奏曲』を松山博昭監督が小栗旬・柴咲コウ・向井理・山田孝之など豪華キャストで実写化した月9ドラマの完結編として公開された『信長協奏曲』が興行収入46.1億円でランクイン。
原作が未完のため映画オリジナルストーリーで完結を迎えた。「本能寺の変」はCGではなく本能寺のオープンセットを建てて本当に燃やすことで本物の火の迫力と緊張感を再現した。
第5位 るろうに剣心 京都大火編
興行収入 : 52.2億円
第5位は上述した『るろうに剣心 伝説の最期編』の前編にあたる『るろうに剣心 京都大火編』が興行収入52.2億円でランクイン。実写映画版『るろうに剣心』はシリーズ1作目製作時に『京都編』から描くという案もあった。しかし神谷道場でのエピソードを描かないと剣心と志々雄真実の対決が深まらないと判断した製作陣は1作目がヒットしたら『京都編』を実写映画化しようと決意。1作目が興行収入30.1億円の大ヒットを記録したことにより、映画1本のボリュームでは収めることが出来ないと不安視されていた『京都編』を総製作費30億円という日本映画としては破格のバジェットで二部作として公開することが決定。最終的に二部作合計95.7億円の大ヒットを記録しており、2020年夏にシリーズ完結編となる『るろうに剣心 最終章』が二部作連続で公開されることが決まっている。ただしワーナー・ブラザースは後に人気マンガの実写映画化作品である『テラフォーマーズ』『ジョジョの奇妙な冒険』『鋼の錬金術師』『BLEACH』でも同様の製作方式でヒットを狙ったが、興行的には振るわずシリーズ化には至っていない。
第4位 キングダム
興行収入 : 57.3億円
第4位は累計発行部数3800万部を超える原泰久の人気マンガ『キングダム』を『GANTZ』『アイアムアヒーロー』『いぬやしき』『BLEACH』など数々の人気マンガを実写映画化してきた佐藤信介監督が山崎賢人・吉沢亮・長澤まさみ・橋本環奈・本郷奏多・大沢たかおなど豪華キャストで実写映画化した『キングダム』が興行収入57.3億円でランクイン。
本作は興行収入40億円に届かないと厳しい、日本映画史上トップクラスの製作費を注ぎ込むことで「原作に見合った豪華なセット・衣装・美術」「原作の舞台となっている中国ロケ」を実現することで原作の世界観を見事に表現した。偶に「映画は製作費ではない」という指摘も目にするが、『キングダム』のようなスケール感のある作品ではアクションができるエキストラ一人、撮影用の馬一頭でも多く用意する必要がある。そのためにやはりある程度の製作費は必要となり、本作はその資金を用意して真っ向から勝負して興行的に勝った作品といえるだろう。また原作の人気キャラクターである王騎に大沢たかお、楊端和に長澤まさみというキャリアを積んだベテラン俳優を起用したことも高評価に繋がる要因となった。続編ではよりスケールアップした映像が期待される。唯一の懸念は『ジョジョの奇妙な冒険』では仗助を熱演していた山崎賢人が、『キングダム』では何故か演技がキツいこと… 続編では改善されることを望む。
第3位 テルマエ・ロマエ
最終興行 : 59.8億円
第3位は上述した『テルマエ・ロマエII』の1作目『テルマエ・ロマエ』が興行収入59.8億円でランクイン。
古代ローマ人が現在日本にタイムスリップしてきてカルチャーギャップに驚くという基本1話完結型のギャグマンガを上戸彩演じる実写映画版オリジナルの漫画家志望のオリジナルキャラクターを通して1本の長編映画化に落とし込むことに成功した作品。阿部寛・北村一輝・市村正親など顔が濃いキャストを集めて古代ローマ人を再現した。また1作目ではイタリアドラマを撮影するためにチネチッタ撮影所に作られた古代ローマのオープンセットを流用することで古代ローマの世界観を見事に再現。更に2作目では製作費が増えたことから高さ50mのコロッセオなどのセットを独自に建設して古代ローマの街並みを再現した。古代ローマの世界観を重厚に表現したことで、現在日本にルシウスがタイムスリップしてからカルチャーギャップに驚くコメディを成立させることに成功したと考えられる。
武内英樹監督は『のだめカンタービレ』『テルマエ・ロマエ』以外にも『翔んで埼玉』が興行収入37.6億円の大ヒットを記録して第11位にランクインするなど、コメディ色の強い人気マンガの実写映画化で数々のヒット作品を出している。
第2位 BRAVE HEARTS 海猿
興行収入 : 73.3億円
第2位は佐藤秀峰の人気マンガ『海猿』を羽住英一郎監督が伊藤英明・佐藤隆太など豪華キャストで実写映画化したシリーズ4作目が興行収入73.3億円でランクイン。
本作は原作の最終エピソードにあたるジャンボジェット機「ボーイング747-400」海上着水による救助を実施するストーリーが描かれた。一方で原作では海上着水後に機内は死屍累々の状況になっているのに対して、実写映画版は既に原作と作品イメージが大きく乖離していたことから海上着水後の機内で死亡数はゼロ、乗客346人全員を救出する物語に変更されている。ただし2009年に起きた「ハドソン川の奇跡」を参考にしているため、映画として原作エピソードを現代版にアップデートしたともいえ、安易に奇跡的な感動物語に変更した訳ではない。航空パニック映画としても緊張感があり、前作までの『海猿』を否定するキャラクターを登場させ、人間ドラマシーンもスマートにまとめている。更に東日本大震災の翌年公開だったことから、「みんなで協力して奇跡を起こしたい」という世間の願いと一致したことからもシリーズ最高傑作という声も多い。
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第1位 THE LAST MESSAGE 海猿
興行収入 : 80.4億円
第1位は『海猿』シリーズ3作目『THE LAST MESSAGE 海猿』が興行収入80.4億円でランクイン。
本作は『海猿』シリーズ完結編として原作マンガにはない巨額を投じた国家プロジェクトの天然ガスプラント「レガリア」で事故が発生する映画オリジナルストーリーが描かれた。本作は2010年公開だが、2011年の福島原子力発電所爆発事故後に観返すと「リアル」という声が多数ある。『海猿』シリーズは3作目が完結編として公開されたが、その2年後に前述した4作目が製作された。ただしその後製作のフジテレビと原作者のトラブルが起きたことからシリーズ終了となった。
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総括
人気マンガの実写映画化を数多く手がけてきた三池崇史監督作品が一本もランクインしていなかったのは残念だ。トップ10の傾向は出版社別だと集英社が4本で最多、雑誌別だと『週刊少年ジャンプ』が3本で最多、監督別だと武内英樹監督が3本で最多、ジャンル別だと時代劇が5本で最多、主題歌別だと「ONE OK ROCK」が3本で最多、配給会社別だと東宝が7本で最多、テレビ局別だとフジテレビが6本で最多。ただしフジテレビ製作映画のうち4本はテレビドラマの劇場版となっている。2020年度代のトップ10が『銀魂』『るろうに剣心』『テルマエ・ロマエ』『キングダム』の続編で埋め尽くされる可能性は高いと感じる。これらの映画の続編に勝る評価を得る人気マンガの実写映画版が登場することに期待したい。