この冬の映画興行についてのレポート。前編は興行収入10億円を超えたヒット作を紹介。
この冬ブッチギリのヒットとなったのは『アナと雪の女王2』で興行収入は130〜140億円程度が見込まれている。一方でこの数字は2014年に公開された前作『アナと雪の女王』の興行収入255.0億円から100億円以上落とす結果に… やはり「イントゥ・ジ・アンノウン」は「レリゴー」ほどのインパクトがなかったということなのだろうか?それとも漫画家たちによるステマ漫画の効果が発揮されなかったということなのか?前作より確実に良かったといえるのはエンディングを担当した中元みずきがMayJ.みたいに叩かれなかったことと前作の春公開と違って冬公開と劇中の季節感とマッチしていたことくらいだろうか。ちなみに『アナ雪』の前作からの落ち幅は新海誠監督の『君の名は。』から『天気の子』への落ち幅と同程度が予測されている。
- スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け
『アナ雪2』に次ぐヒットになったのは『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』だが、興行収入は70〜75億円程度が見込みと物足りない。賛否が割れた『最後のジェダイ』の興行収入75.1億円を下回る可能性も高い。ディズニーとしては3部作、否9部作の完結編として『アベンジャーズ エンドゲーム』のような歴史的な大ヒットを狙っていたのかもしれないけど、現実は残酷。「お金儲けをしたいけど、作品的な評価も欲しい」という気持ちは分かるけど、それを作品ごとに分けてやられてしまうとただ単に世論に忖度しただけのブレブレな3部作が出来上がってしまうことを教えてくれた作品。それとも後先のことはあまり考えずにバトンを渡していく映画製作スタイルが今後の主流になるのか?もちろんそういうスタイルで成功する作品もあると思うが、本シリーズの興行収入を振り返ると完全に右肩下がりの失敗。日本ではプリクエルの興行収入も下回る結果となった。
- 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング
冬休み興行を狙った日本映画のトップ候補がアニメになることは想定内だが、まさかそのトップアニメが『僕のヒーローアカデミア』だとは予想できなかった。『NARUTO』が去った『週刊少年ジャンプ』で看板候補とされていたが、最近は『鬼滅の刃』の進撃でスッカリ影が薄くなってしまっていた本作。ただ映画では興行収入15億円前後のヒットを記録した。原作者が想定していた最終回の構想の一つを使ったらしく原作ファンからの評判はすこぶる良い。
- 男はつらいよ お帰り寅さん
22年ぶりの新作となった山田洋次監督の『男はつらいよ』で、興行収入は13億円前後が見込み。客層は年配層が中心で地方での興行が強いという。山田洋次監督の「アイディア盗用疑惑」も話題になったが、客層的に影響もなかったようだ。ちなみに本作は中学生以下は鑑賞料金100円という破格のキャンペーンを実施。正直どの程度このキャンペーンの恩恵を受けた中学生以下がいるかは知らないが、孫・娘と映画を観に行けたおじいちゃん・おばあちゃんがいたらそれはそれで良かったのではないか。
- ルパン三世 THE FIRST
冬休み興行のトップ争いを期待されていたが、伸び悩んだのが山崎貴監督の3DCGアニメ映画『ルパン三世』で興行見込みは12億円前後。10億円を突破したのは「さすが山崎貴監督!」といったところだが、製作費を考えると足りないとか。『STAND BY ME ドラえもん』と同じく、世代を超えて愛される『ルパン三世』の3DCGアニメ映画化はそれなりにウケると思っていたが現実は厳しい。評判も悪くないが、ターゲット層をどこに置いてるかイマイチはっきりせず、毒にも薬にもならないような作品になってしまった。『ドラクエ ユア・ストーリー』に続き期待外れの興行となってしまった山崎貴監督の3DCGアニメ映画シリーズだったが、今年の夏は興行収入83.8億円の大ヒット作品の続編『STAND BY ME ドラえもん2』が公開予定。大ヒットは約束されているようなものだろう。
- 午前0時に、キスしに来てよ
この冬の松竹は年配層に向けた『男はつらいよ』だけでなく、スイーツ層に向けた『午前0時に、キスしに来てよ』も興行収入10億円を超えるヒットになった。松竹は山田洋次監督のイメージからか年配層向けの映画を作るイメージが強いが、実はスイーツ映画にも強い。
- 屍人荘の殺人
ミステリー賞4冠達成をした人気原作を神木隆之介・浜辺美波で実写映画化した『屍人荘の殺人』も興行収入10億円を超えた。全国311スクリーンで公開された東宝映画としてはもう少し欲しかったのがホンネだろうが、去年の東宝の冬は期待された実写映画『来る。』と『ニセコイ』が2作品とも10億円未満に終わる大コケだったことを考えれば、今年は善戦したともいえる。ちなみに本作は予告編で「ネタバレ厳禁!」と謳うことだけあって、結構ビックリなことが起きるのだが、あまりそのことは話題にならなかった様子。『カメラを止めるな!』のような口コミで話題になるようなヒットの仕方は狙っても中々出来ないものだ。
後編に続く。