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『僕のヒーローアカデミア』改造人間生み出す医師「志賀丸太」が「731部隊」を連想 中国・韓国から批判

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<出典:堀越耕平/集英社>

僕のヒーローアカデミア』のキャラクターの名前をめぐる問題で集英社堀越耕平先生が釈明と謝罪をした。改造人間を生み出す医師の名前が「志賀丸太」であったことから、「旧日本軍の731部隊が捕虜の名前を『マルタ』と呼んで人体実験をしていた歴史を連想させる」として中国・韓国から批判を集めていた。

 

  • 中国・韓国の人が誤解した理由

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日本では「『丸太』だけで、そんな歴史を連想するなんておかしい!」という声をよくみるが、果たしてそうだろうか?まず中国や韓国では「丸太=丸い木材」という前提がない。その一方で日本と違い「731部隊が捕虜に『マルタ』と隠語をつけて人体実験していた歴史」は広く知れ渡っているという。そういう前提を元に「日本の漫画で『人体実験』をするキャラクターの名前が『マルタ』」という情報を目にすれば、「作者が歴史を前提に意図的に名付けたのでは?」と疑念を抱くのは自然な流れだと感じる。

 

 

  • 堀越先生「意図なし」

この疑惑に対して原作者の堀越先生は「そのような意図はなかった」と事実関係を否定。「『志賀(しが)』は他の登場人物名の一部から、『丸太(まるた)』はその外見から命名した」と釈明した。日本での「731部隊が捕虜に『マルタ』という隠語をつけていた歴史」の認知度の低さと堀越先生の他キャラクターの名前からも、個人的にこの釈明は信用できると感じた。

 

  • 集英社「火に油」となった初期対応

集英社は『週刊少年ジャンプ』発売日に「名前変更」を発表した。個人的には「堀越先生が今後の物語の展開とかいろいろ考えて名前を付けた可能性も高いし、複雑な気持ちだな…」という思いはあったが、集英社と堀越先生がそういう選択をした以上その点について文句を言う筋合いはないだろう。しかし「名前変更」を発表するときに「釈明と謝罪」がなかったことには違和感を感じた。何故なら疑念を持っている中国や韓国の人たちからすれば、「釈明・謝罪なし」で「名前変更」だけを発表するのは疑惑を強めるだけで「火に油」になる可能性が高いと感じたからだ。現にネットでは炎上。やはり「名前変更」を発表する段階で、「731部隊の日本での認知度」「日本では一般的に丸太は『丸い木材』の意味」という背景を説明したうえで、「不快な思いをさせたなら申し訳ない」等の謝罪の言葉を添えておくべきだっただろう。もちろんこの「釈明と謝罪」があっても大きな流れは変えれなかったかもしれないが、少なからず納得してくれた海外のファンも居たはずだ。

 

 

  • 改めて感じた歴史問題の「根深さ」

www.nhk.or.jp

炎上中に複数の韓国人と思われる『ヒロアカ』ファンのツイートを見てみると、「堀越先生にそういう意図がなかったことはわかりました。しかし祖先の名誉のためにも謝罪の言葉が欲しいです」というようなツイートを複数見た。個人的には「戦争の過ちや被害の歴史は国ではなく、時代で見るべき」という考えを持つタイプなので、そこら辺はイマイチピンと来ないのだが、日本でも「核」絡みの表現にはセンシティブになる人が多いのは事実だし歴史の問題は改めて「根深いな」と感じた。

 

  • 「お互いの常識」のぶつけ合い

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Twitterで過激な日本人と韓国人のやり合いを見ていて「なんだかな…」と感じたのは、お互いがお互いの常識だと思うそれぞれの「マルタ」の写真をアップし合って煽り合っていたことだ。中国・韓国の人は「あー、日本では『丸太』は普通『丸い木材』なのか… 少し誤解があったかもな…」、日本の人は「中国・韓国で『マルタ』がセンシティブなワードだったとは知らなかったな… 勉強不足だった。ゴメンね」となって「相互理解」をして「許し合える」ことが理想だけど現実には難しい。いくら説明しても「丸太は『丸い木材』の意味で、隠語の意味はなかった」ということを分かってくれない中国・韓国の人もいれば、「中国・韓国ではマルタは捕虜の隠語として広く認知されていて、今回の表現は誤解を招く余地があった」ということを分からない日本人もいる。結局理解した人はある程度納得してこの話題からフェイドアウトしていくけど、分からない過激派だけがネット上では永遠にやり合ってるのは地獄だった。

 

  • 『ヒロアカ』は「日本の漫画」?

My Hero Academia, Vol. 1: Izuku Midoriya: Origin (English Edition)

この騒動の初期にはTwitterで「日本の漫画」というワードがトレンド入りしていた。これは『ヒロアカ』は「日本の漫画だから嫌なら読むな」というもの。ただ『ヒロアカ』は中国・韓国でも発売している(今回の炎上の発端は違法ダウンロードの可能性が濃厚だが、遅かれ早かれ問題になっていた)わけだし、結局「ビジネス相手のセンシティブな部分を理解していなかったことが問題」ということになってしまうのだろう。また本作はハリウッドでの実写映画化も決まっている。そういう部分も含めて既に『ヒロアカ』は良くも悪くも「日本だけの漫画」という訳ではなく、世界展開のために色々面倒なことが多いのだろう。

 

 

  • 最後に…

「中国・韓国よりの意見だ!」と思う人もいるかもしれないけど、個人的に『ヒロアカ』読者として「名前変更」は複雑。ネットでは「丸太のキャラが『個性なし』だから、主人公・デク(『個性なし』のキャラのため「役に立たない木偶の坊」から取ったあだ名)と何らかのエピソードの伏線だったのでは!?」という推測をよく見るけど、仮にそういう意味で名付けていたとしたら今後の物語の展開に影響を及ぼすのではないかと不安になる。出来れば堀越先生が最初に構想した通りの形で描かれる物語が読みたかったが、『ヒロアカ』は大きくなりすぎてしまったということなのだろう。繰り返しになるが、複雑な上に実に残念な騒動だった。

 

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