近年人気漫画の実写映画化作品は批評的・興行的に振るわない作品が続いたが、昨年は『翔んで埼玉』『キングダム』など批評的にも興行的にも高く評価される作品が多かった。人気漫画の実写映画化における「成功」「失敗」の要因は様々あると思うが、個人的には「リアリティライン」もしくは、「コメディライン」の高さが成功の秘訣の重要な要素となっているように感じる。
- 「リアリティライン」の高さ
人気漫画の実写映画化の成功作を振り返ると『デスノート』『20世紀少年』『カイジ』『GANTZ』『るろうに剣心』『寄生獣』『キングダム』など時代に違いはあれど、「現代の日本」など「実際に実在する(した)世界」を舞台にした比較的「リアリティライン」の高い作品が並ぶ。これらの作品は現実世界がベースとなっているため、漫画という二次元の媒体を実写映画という三次元の媒体に置き換えても、ビジュアル面である程度の説得力を担保することができる。
一方で失敗作とされる『進撃の巨人』や『鋼の錬金術師』などは架空の世界を舞台としているため、1から世界観を構築しなくてはならない。しかし日本では大作アクション映画の製作費も「150-250億円の予算が投下されるハリウッド大作」と比べて10億円程度と少ない。そのためVFXのクオリティにも限界があり、セットや美術品などの小道具にもあまりお金がかけられない。そのためビジュアル的にどうしてもショボくなってしまう。また架空の世界を舞台にした作品の場合、登場人物の服装や髪型などが個性的な場合も多いが、この点も日本の俳優がそのビジュアルに合わせようとした結果「コスプレもどき」という悲惨な結果になることが多い。その上、この手の作品は外国人の設定であるケースも多く、『キングダム』のように中国人設定なら同じアジア人なので日本人キャストが演じても違和感は少ないが、『鋼の錬金術師』のように日本人キャストに原作通り外国人を演じさせれれば違和感が生まれてしまう。だからといって『進撃の巨人』のように日本人設定に変更すると物語が歪んだり、原作ファンから叩かれたりする。そのため人気漫画の実写映画化を成功する秘訣の一つは現代日本と原作漫画の設定の距離感を軸とした「リアリティライン」の高さだと感じる。それは世界観だけではなく、服装や髪型などを含めての話である。そのため「リアリティライン」の高い恋愛漫画の成功率は高い。
- 「コメディライン」の高さ
その一方で「リアリティライン」が低くとも大成功している人気漫画の実写映画化作品も複数存在する。その具体例を挙げるなら『銀魂』や『翔んで埼玉』などだろう。これらの「リアリティライン」が低いにも関わらず、成功を収める作品の共通点は「コメディライン」の高さである。『銀魂』も『翔んで埼玉』もギャグ漫画であり、「コメディライン」が非常に高い。そのため原作の奇抜なビジュアルを再現した結果「コスプレもどき」という結果に陥っていても、作品が持つ「コメディライン」高さによって「コメディだから、コレはコレでアリ」という空気を作り出すことができ、観客側もそのビジュアルをスンナリ受け入れる傾向にある。やはり「大真面目にカッコいい画作りをしようとしている中に、コスプレもどきの役者がいる」のと、「初めから笑わせるために作られた画の中に、コスプレもどきの役者がいる」では天と地ほどの差があるのだ。そのため「リアリティライン」が低い作品でも「コメディライン」が高ければ、人気漫画の実写映画化は成功する傾向にある。
人気漫画の実写映画化作品ではないが、『ヤッターマン』と『ガッチャマン』の実写映画版の比較が一番分かりやすいかもしれない。似たようなビジュアルだったとしても、作品の「リアリティライン」と「コメディライン」の高さによって、その評価は180度変わるのだ。
- 最後に…
当然「リアリティライン」「コメディライン」が高いからといって、何でもかんでも実写映画化が成功する訳ではない。例えば失敗作として悪名高い『デビルマン 』だって「リアリティライン」は高いし、他の製作陣がキチンとやればもっとクオリティの高い映画が出来上がった可能性だって十分ある。また興行的には失敗したが、「リアリティライン」が低い『ジョジョの奇妙な冒険』は「漫画を実写映画化する」ということに真剣に向き合い、かなり善戦していたように思える。そのため「リアリティライン」「コメディライン」の高さで全てが決まるという訳ではない。ただ「リアリティライン」「コメディライン」が高い作品ほど、成功作品が多い傾向にあるということは確かである。
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