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2020年度1・2月期映画興行レポート/『パラサイト』『カイジ』、「格差社会映画」ヒットも全体としては…

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今年の1・2月の映画興行は昨年にの同時期に対して大きくマイナスだったという。この原因を「新型コロナウイルスの影響」と見ることもできるが、あまり国民の関心事ではなかった1月の興行も大きくマイナスとなっているので「作品ラインナップの魅力に欠けた」、もしくは「昨年のラインナップが強すぎた」と見るのが適切なのかもしれない。

 

  • 実写邦画のヒット作品が続いた昨年同時期

マスカレード・ホテル

翔んで埼玉

昨年の1・2月期はテレビ局主導の実写邦画が好調で、フジテレビからは木村拓哉主演の『マスカレード・ホテル』が興行収入46.4億円、埼玉disが話題を呼んだ『翔んで埼玉』が興行収入37.6億円のヒット。また日本テレビからも若手俳優が集結した『十二人の死にたい子供たち』が興行収入15.5億円、TBSテレビからは池井戸潤の人気原作を映画化した『七つの会議』が興行収入21.6億円のヒットとなっていた。テレビ局主導ではなくても百田尚樹の人気小説を神木隆之介主演で実写化した『フォルトゥナの瞳』が興行収入13.7億円、EXILE主演映画『雪の華』が興行収入11.2億円と実写邦画のヒット作品が続いていた。

 

 

  • カイジ』『犬鳴村』ヒットも…

映画「カイジ ファイナルゲーム」オリジナル・サウンドトラック

【映画パンフレット】犬鳴村 監督:清水崇 主演:三吉彩花

一方で今年の実写邦画は人気漫画の実写映画シリーズ・最終回の藤原竜也主演『カイジ ファイナルゲーム』が興行収入20億円突破のヒットになったことと、三吉彩花主演のホラー映画『犬鳴村』が全国211スクリーンと中規模公開だったにも関わらず興行収入10億円突破のヒットになったことを除けば全体的にパッとしない。

映画「ヲタクに恋は難しい」The Songs Collection by 鷺巣詩郎

映画「AI崩壊」オリジナル・サウンドトラック

映画「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」オリジナル・サウンドトラック

例えば人気漫画を福田雄一監督が実写映画化したフジテレビ製作の『ヲタクに恋は難しい』も興行収入は12億円程度と、昨年のフジテレビ製作のコメディ映画『翔んで埼玉』と比べて物足りない。日本テレビワーナー・ブラザースのタッグ作品『AI崩壊』も日本では珍しいオリジナル脚本のSF映画として勝負に出たが、興行収入は10億円前後が見込みと、昨年の同タッグ作品『十二人の死にたい子供たち』から劣る。TBSテレビは興行収入19.6億円のヒット作品の続編『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』を封切ったが、やはり前作の新鮮味はなく、新型コロナウイルスの影響も受けて伸び悩んでいる。また山田涼介主演の松竹映画『記憶屋 あなたを忘れない』も惨敗だった。昨年と今年の実写邦画作品のラインナップと興行収入を振り返ると、やはり「昨年のラインナップが異常に強かった」と見るのが適切なのかもしれない。

 

 

  • 洋画不調は昨年と変わらず

パラサイト 半地下の家族 OST (Korea Movie) CD+Folded Poster [パラサイト 半地下の家族:モノクロ版イメージポスター] [韓国盤]

キャッツ - サウンドトラック

ここまでは実写邦画を振り返ってきたが、ここからは洋画にも目を向けたいと思う。1・2月公開作品で興行収入10億円を突破した洋画作品は『パラサイト 半地下の家族』と、『CATS』の2作品のみ。『パラサイト』はアカデミー作品賞を受賞した韓国映画興行収入40億円突破も見込める大ヒット。新型コロナウイルスの影響で3月公開の話題作品の公開延期が次々と決まっているが、本作においては公開延期が決まったことで空いた分、そのおこぼれを頂戴してまだまだ興行収入も伸ばす可能性もある。それにしても1・2月期のヒット作品が『パラサイト』『カイジ』と、日韓の「格差社会」を描いた作品だったというのは面白い。『CATS』は興行収入13億円程度と公開規模に対して「物足りない」という声もあるが、世界中で大コケかつ酷評されている背景を考えれば善戦しているのかもしれない。

フォードvsフェラーリ (オリジナル・スコア)

Bad Boys for Life (Original Motion Picture Score)

チャーリーズ・エンジェル(サウンドトラック)

アカデミー作品賞にノミネートされた『フォードVSフェラーリ』は評判も良く、興行収入10億円突破も期待されたがあと一歩届かない見込み。ソニー・ピクチャーズ配給の『バッドボーイズ フォー・ライフ』と『チャーリーズ・エンジェル』は2作とも大コケ。『チャーリーズ・エンジェル』はキャストを変更したリブート作品で、世界中で大コケかつ酷評をされているため日本での大コケもある意味納得ではあったが、キャスト続投の続編で世界中で大ヒットかつ評価の高い『バッドボーイズ  フォー・ライフ』が大コケしたのはやや驚きだ。前作は17年前とはいえ興行収入20億円のヒットを記録していたし、ウィル・スミス人気も高い日本で興行収入5億円にも満たない可能性の高い大コケは予想外だった。興行収入10.3億円だった去年の『メン・イン・ブラック インターナショナル』程度には入ると予想していた。

ここまで振り返ると洋画作品も興行的に残念な作品が多かったように感じるが、実は昨年も洋画に関しては興行収入10億円超えは『アクアマン』の興行収入16.4億円と『メリー・ポピンズ リターンズ』の興行収入11.8億円の2作品しかなかった。そのため洋画に関しては昨年から大幅ダウンという感じでもない。むしろこの時期に関しては昨年から不調が続いているという感じだ。

 

 

  • 最後に…

ただやはりトータルで見れば昨年を大きく下回る結果となってしまった。昨年の映画興行は2000年以降、最高興行だったので反動があるのは分かっていたし、やむを得ない部分でもある。しかし「新型コロナウイルス」の影響は想定外で、3月以降はその影響も増していくことだろう。冬休み興行で140億円稼いだ『アナ雪2』が昨年度扱いというのもダメージが大きい。東京オリンピック後に景気が急速に悪化した日本を舞台にした『カイジ ファイナルゲーム』を観た時は、東京オリンピック開催自体が危うい状況に陥るとは全く考えていなかった。2020年度は日本という国にとっても、映画興行界にとっても厳しい年になりそうだ。