『アリータ: バトル・エンジェル』は木城ゆきとによる漫画『銃夢』をジェームズ・キャメロン監督製作で実写映画化した作品だ。本作は全9巻ある原作のうち第4巻までをベースとしており、映画本編のラストも「続編を期待させる終わり方」だった。そのため「続編を期待する声」も多いらしく、SNSではファンが「続編製作」を求める運動まで展開したそうだ。
しかし個人的に続編製作は難しいと感じる。本作の製作費は1.75億ドルと高額なバジェットを費やしているが、全米での興行収入は8570万ドルと製作費の半分も回収できていない。また日本での興行収入もオープニング興行こそ最終興行15億円以上が見込めるヒットスタートを切ったが、その後大失策をして最終興行9.71億円に留まった。本作は日本の漫画を原作にしているが作品の知名度が低かった故に、宣伝は「ジェームズ・キャメロン監督最新作」ということを前面に打ち出すものになっていた。IMAX、3D、MX4Dなどのプレミアム・フォーマットが興行全体の6割を占め、オープニング興行に動員が集中していることを考えると、「原作ファン」より「映画ファン」にウケた作品だと考えられる。そのため「日本の漫画がハリウッドで実写映画化!」というアドバンテージは余り生かされなかったようだ。
一方で本作の世界興行は4億ドルを超えている。これは中国での興行収入が1.33億ドルを超える大ヒットを記録したことが大きい。何せ、中国の興行は世界興行の約3割を占めており、全米での国内興行すら上回っている。だから本作は世界興行だけをみると、そこまで大コケしたという感じでもない。
ただそれでも続編が難しいと感じるのは、本作のように「全米興行は大コケしたけど、中国興行は大ヒットしたから続編作りました!」みたいなパターンの映画は、その後大抵目も当てられないくらいコケているからだ。その理由は「全米興行は1作目がコケているだけあって、1作目より更にスルーされる」ことで全米興行が大惨敗になるのに加えて、中国興行も前作から半減することなどがザラに起こるからだ。具体例をあげるなら『パシフィック・リム アップライジング』や正式な続編ではないが『ターミネーター ニュー・フェイト』などだ。
また『アリータ』を製作した20世紀FOXは昨年ディズニーに買収された。ヒットコンテンツを山のように抱えるディズニーが、わざわざ大コケする可能性の高い映画の続編を制作するようなことをするとも思えない。そのため続編は極めて難しいのではないかと感じる。