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メディアミックスされた原作漫画の売り上げを伸ばすための新販売スタイル「最初の3巻を1巻分の値段でパック販売」

空母いぶき 映画公開記念 SPECIALプライスパック (ビッグコミックススペシャル)

人気漫画がテレビアニメ化や実写映画化、テレビドラマ化する最大の理由は「原作漫画の宣伝」だ。作品が映画化等されるときに莫大なお金が入ってくると思っている人も多いようだが、実際はそうではない。数年前に興行収入59.8億円の大ヒット作品となった『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリさんが「映画の原作使用料は100万円だった」と発言したことが話題になっていたことを記憶している人も少なくないだろう。また『銀魂』の空知英秋さんもコミックス51巻のおまけページで「映画というのはドレだけ興収をあげようと作家の懐には何も入ってきません  最初に原作使用量というものが支払われるだけです 全体の興収からいえばハナクソみたいな額です」と言及していた。そのためヒット作品の続編という話になれば、まだ交渉の余地があるのだろうが、1作目となると「ギャラ交渉して企画がダメになったら嫌だな」という気持ちもあるだろうし、中々難しいだろう。ただ原作使用料が安かったとしても、映画化などには旨味がある。それは原作のタイトルが多くの人に知れることと、本屋で映画公開などに合わせて漫画コーナーの近くに大きなポスターを貼ってもらえたり、目立つ場所に平積みにして貰えることで原作の売り上げに繋がる可能性が高いことだ。

 

 

フラッと立ち寄った本屋の漫画コーナーで「映画化決定!」とポスターが貼ってあって、その横に原作漫画が平積みにされていれば「話題作らしいし、試しに読んでみようかな」と購入してくれる人もいるだろう。これが事前に何らかの形でメディアミックスで話題になってる作品だと知っていれば尚更効果があるだろうし、メディアミックスされた作品に触れたばかりだったとしたらその効果は計り知れないほど大きなものになっているだろう。

 

そんな訳で作品のメディアミックスは原作漫画の売り上げに大きく貢献する可能性が高い訳だが、個人的な実体験として映画を観終わった直後に「原作漫画はどんな感じだったのだろう?」と本屋によったはいいが、急に「既にそれなりの巻数が発売されている漫画の1巻を400〜600円かけて買うのか…」とナイーブな気持ちが押し寄せてそのまま本屋を出てしまうというケースも少なくない。おそらく自分みたいな熱しやすくて冷めやすいミーハータイプは日本人に多いだろうから、出版社としては「この手の後一歩でお金を落としてくれそうな冷めやすいミーハーに、どうやって漫画を買ってもらうか?」と試行錯誤したはずだ。

 

 

実際にそんな試行錯誤があったかどうかは定かでないが、新たに登場したのが「最初の3巻をセットにして、コミックス1巻分程度の値段で売る」という販売スタイルだ。これは去年「安倍総理の持病を揶揄したのでは!?」と疑惑をかけられ大炎上した実写映画版『空母いぶき』から始まった販売スタイルだ。確かにこの販売スタイルなら映画やドラマを触れたばかりで熱を帯びているミーハー達が「今ならコミックス1巻分の値段で3巻も買える!?折角だから買ってみよう!」と思い購入するケースも増えるだろう。

 

小学館マーケティング局、井手靖取締役はこの販売スタイルについて以下のように語る。

 

2019年初めには、春の映画公開へ向けて『空母いぶき』の1巻から3巻までの3冊をパックにして1冊分の値段600円で販売するという、SPECIALプライスパックという販売施策を行いました。3冊のパックを初版16万部販売したのですが好評で、2刷計20万部まで行きました。これはもちろん、4巻以降を続けて読んでほしいという狙いでしたが、それが見事に当たって4巻以降もよく売れました

ドラえもん50周年と小学館の取り組み(創) - Yahoo!ニュース

 

一見3巻分を1巻分程度の値段で販売してしまうのは「勿体ない」ような気もしてしまうが、狙い通り4巻目以降の売り上げも伸びて利益に繋がっているようだ。やはり漫画の新規購入は最初の1巻購入のハードルが高くなってしまうため、そのハードルを如何に下げることが出来るかがポイントとなってくるのだろう。

 

 

この販売スタイルは小学館だけでなく、講談社の『アルキメデスの大戦』や『テセウスの船』でも同様のセット売りをして好評だったようだ。そのため、今後この販売スタイルは定着していくものだと考えられる。