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パチンコ玉を掴んだ伊吹と落とした九重、逃げ切った男子高校生・成川岳の「分岐点」と「スイッチ」/『MIU404』

MIU404 ディレクターズカット版 Blu-ray BOX

TBSテレビで金曜22時に放送されている「脚本:野木亜紀子」「プロデュース:新井順子」「演出:塚原あゆ子」の『アンナチュラル』チームが手がけた綾野剛星野源主演オリジナルドラマ『MIU404』が面白い。本作は犯人逮捕にすべてを懸ける初動捜査のプロフェッショナルである機動捜査隊である「第4機動捜査隊」が24時間というタイムリミットの中で事件解決を目指すさまを1話完結で描いていく刑事ドラマ。1話目では日本のテレビドラマのスケールを超えるカーアクションを展開し、2話目では「子供に謝りたい親」と「親に謝って欲しい子供」のヒューマンドラマが描かれた。

 

 

以下第3話のネタバレ

 

そんな本作の第3話「分岐点」では、星野源演じる志摩一未と岡田健史演じる九重世人の以下のようなやり取りがある。

 

志摩「ルーブ・ゴールドバーグ・マシンって知ってる?」

九重「…」

志摩「ピタゴラ装置ともいう」

九重「連鎖的に運動する仕組みのことですか?」

志摩「うん。辿る道は真っ直ぐじゃない。障害物があったり、それを上手く避けたと思ったら、横から押されて違う道に入ったり… そうこうするうちに罪を犯してしまう。何かのスイッチで道を間違える。」

九重「でもそれは自己責任です。」

志摩「出た!自己責任w」

九重「最後は自分の意思だ。」

志摩「その通り。自分の道は自分で決めるべきだ。オレもそう思う。だけど人によって障害物の数は違う。正しい道に戻れる人もいれば、取り返しがつかなくなる人もいる。誰と出会うか、出会わないか。この人の行く先を決めるスイッチは何か。その時が来るまで誰も分からない。」

 

そして、このやり取りが終わると志摩は自らが作ったピタゴラ装置のスタート位置にパチンコ玉を置く。そのパチンコ玉は様々な障害物を通り抜けて机から落ちるが、床に落ちる前に綾野剛演じる伊吹藍によってキャッチされる。

 

 

第3話のストーリーは「通報したプレイヤーが警察から逃げ切ったら勝ち」というネット上のゲームのルールを模倣した愉快犯を逮捕するという内容。愉快犯の正体は元陸上部の男子高校生4人組で1人の人物を装いながらリレー形式で逃げていたが、主人公たちはそのトリックに気付き男子高校生を1人確保する。一方で男子高校生4人に協力して警察に「襲われそう」と虚偽の電話をしていた女子高生が、彼らの追跡中に本当に男に襲われてしまう。主人公たちは男子高校生を1人確保していることなどから、女子高生を襲った犯人確保へと捜査の舵を切り替えることを決定。男子高校生の追跡していた伊吹は女子高生を襲った犯人のもとへ向かう前に「オレは今から襲われた真木カホリを助けに行く。逃げるか来るか今決めろ。」と男子高校生に問う。一方でもう1人の男子高校生を追っていた九重は、男子高校生に女子高生が襲われた事実などを伝えることなく、その場を離れる。その結果伊吹の追っていた男子高校生は罪を償う道を選んだが、九重の追っていた男子高校生はそのまま逃げ切ってしまった。そして逃げ切ってしまった男子高校生は製造国が不明の粗悪なMDMA系の合成麻「ドーナツEP」の売人に出会う。

 

「罪を償う道を選んだ男子高校生」と「警察から逃げ切り、ドーナツEPの売人に出会った男子高校生」は途中まで一緒に逃げていた。しかし途中の「分岐点」で彼らは二手に分かれ、片方を伊吹が、もう片方を九重が追うこととなった。これは偶々そうなっただけの話だ。しかし、もし仮に前者を九重が、後者を伊吹が追っていた場合、結末は同じだったのか?これが志摩のいうところの「正しい道に戻れる人もいれば、取り返しがつかなくなる人もいる。誰と出会うか、出会わないか。この人の行く先を決めるスイッチは何か。」ということなのだろう。つまり「逃げ切った男子高校生」は伊吹ではなく「自己責任論」を唱える九重と出会ったことで、「取り返しのつかない道へ向かうスイッチ」を押されてしまった可能性があるというわけだ。

 

 

第3話のラストで九重は伊吹が掴んだパチンコ玉を落としてしまうシーンが放送される。果たして「九重から逃げ切り、ドーナツEPの売人と出会った男子高校生」の行く先は…

 

これから先の展開も楽しみだ。

 

【追記】以下第9話ネタバレ

第9話で九重はあの追走劇で、自分が追いかけていた男子高校生・成川だけが罪を償わずにやり直しの機会を逃し、尚且つ新たな犯行に手を染めている疑惑に責任を感じて彼を救いたいと思っていた。そして本話のラストで九重は井戸に落とされて溺れ死にかけていた成川に手を差し伸べて救った。自分の行動によって他者の人生のスイッチを悪い方向に押してしまった九重だったが、彼を最悪の事態に陥る直前で救ったのも九重だった。これは第4機動捜査隊のメンバーとして様々な経験をしたことで彼が成長したという証なのだろう。