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「一生に一度は、映画館でジブリを。」/スタジオジブリ再上映4作品の「興行収入」と「テレビでしか観てない世代」

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「一生に一度は、映画館でジブリを。」

新型コロナウイルス感染拡大の影響により2020年度上半期の映画興行は大きなダメージを受けた。そんな中、スタジオジブリは「一生に一度は、映画館でジブリを。」というコンセプトで『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ゲド戦記』の4作品が再上映をした。

 

  • 宮崎駿監督作品、数字的強さ改めて見せつける

再上映の経緯は東宝映画の社長である市川南さんがスタジオジブリ鈴木敏夫プロデューサーに話を持ちかけ、宮崎駿監督の賛同があったことで決定したという。鈴木プロデューサーは「そんなに多くのお客さんに来てもらえるわけじゃないだろうけど、とはいえ、なにか光みたいなものが射すとしたら、その積み重ねが大事だという気がする」などとラジオで話していたようだが、再上映された4作品の初週は全作品が動員ランキングトップ10にランクイン。

特に宮崎駿監督作品である『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』『風の谷のナウシカ』は動員ランキングトップ3を独占して、共にオープニング3日間で1億円を超えた。新型コロナの感染拡大が懸念され始めた3月以降オープニング3日間で興行収入1億円を超えた作品は、ジブリ再上映前週公開の『ドクター・ドリトル』以外存在しなかった当時の状況を踏まえれば、如何に宮崎駿監督作品が数字的に強いかを改めて実感させられる結果となった。最終的な再上映の累計興行は未発表だが、8月18日時点では『千と千尋の神隠し』が累計8.55億円、『もののけ姫』が累計8.52億円、『風の谷のナウシカ』が累計7.09億円となっており、『千と千尋の神隠し』と『もののけ姫』の累計興行が拮抗する形となっている。

 

 

宮崎駿監督作品3作品が動員ランキングトップ3を独占して累計興行でも数字的強さを見せつける中で、その息子である宮崎吾朗監督作品『ゲド戦記』は動員ランキング初登場9位となった。累計興行の正式発表はないが7月28日時点で再上映4作品が累計興行21億円突破していることから、他3作品の累計興行を引いて約0.82億円、最終的に1億円前後辺りだったことが予測される。YouTubeの再上映をお知らせる特報動画も9月1日時点で他3作品が再生回数100万回を突破している中、唯一48万回とハーフミリオンも下回る結果となっている。正直な話、この再上映ラインナップを見たときに「何故ゲド?」と疑問に思った人も少なくないと感じる。ただ『ゲド戦記』は叩かれまくった故に失敗作というイメージが根強いが、興行的には76.9億円の大ヒット作品で、地上波放送も宮崎駿監督作品以外のジブリ作品が視聴率一桁を記録する中で過去4回の放送全てで視聴率二桁以上をキープしているため、「世間的には人気作である」という判断で再上映を決定したのかもしれない。

 

追記

「千と千尋の神隠し」の興収が8・8億円アップし、316・8億円に更新

(中略)

「もののけ」も8・8億円の興収をあげ201・8億円と大台に乗せた。「ゲド」は1・5億円、「ナウシカ」は7・3億円

「鬼滅」1位奪首目前なのに 「千尋」興収9億円アップ:朝日新聞デジタル

最終的に『千と千尋の神隠し』と『もののけ姫』は8.8億円、『風の谷のナウシカ』は7.3億円、『ゲド戦記』は1.5億円となった。

 

追記2

鈴木敏夫P「最初、東宝からあがったのは『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』そして『ハウルの動く城』の4作品だったのですが、僕は「1本だけ違うやつをやりませんか」と。『ゲド戦記』を提案したんです。

(中略)

『ゲド戦記』は、世界の均衡が崩れてしまった……という作品です。それも念頭にありました。糸井重里さんに作っていただいたコピーがマッチしているなぁと。」

ジブリ鈴木敏夫がコロナ禍で考えた“消費”のあり方。「本当に必要なモノしか買わなくなる」【ニューノーマルの時代】 | Business Insider Japan

鈴木敏夫プロデューサーによると、東宝からは『ハウルの動く城』の再上映を提案されたが、コロナ禍という状況から『ゲド戦記』を提案したという。

 

 

www.asahi.com

7月3日の朝日新聞・夕刊に編集委員の石飛徳樹氏による『(シネマ三面鏡)「ナウシカ」じゃないのか…』という記事が掲載されていた。そこには再上映初週の動員ランキングの結果を踏まえた上で「既に2000万人以上が映画館で観ている『千と千尋の神隠し』より、映画館で見た人は極端に少ない『風の谷のナウシカ』がトップに来ると思ったのに…」という趣旨の内容が述べられていた。ただ個人的には本記事にも記述されているように「現在のジブリ好きの多くは、子供の頃に自宅のテレビで出会った世代」であり、『千と千尋の神隠し』はいくらメガヒット作品といえど2001年公開(つまり今年現役で大学入学した世代の生まれ年)であるが故に、『風の谷のナウシカ』と同様に「テレビでは観たけど、映画館では観たことがない」という人は多いのではないかと思う。

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またスタジオジブリ作品は『レッドタートル ある島の物語』を除けば、最後の公開作品は2014年の『思い出のマーニー』まで遡る。つまりこの6年間は事実上スタジオジブリ作品は映画館で上映されていない状況が続いていた。そのため大学生くらいの世代でも「スタジオジブリ作品は好きだけど、映画館では1作品も観たことがない」という人は少なくないのではないか。そして若い世代の中にはこの再上映が「映画館でのジブリ鑑賞初体験」の人もいたのではないか。そういう意味では若い世代にとって「ジブリが映画館で上映されていること、そのものが貴重」であり、「一生に一度は、映画館でジブリを。」というコンセプトもどこまで狙ったかは分からないが、中々良いキャッチコピーだったのではないかと感じた。

 

 

  • 最後に…

自分はこの再上映期間、時間がなかったこともあり残念ながら4作品の中では一番好きな『もののけ姫』しか観に行けなかったが、テレビの音響とは全く違う素晴らしい映画体験ができた。是非再上映第2弾も検討して欲しいところだが、最近は新作映画の興行収入も好調で、公開延期作品も順次公開していかなきゃいけないと思うので、中々難しいのかなとも思う。最後に、スタジオジブリの新作が映画館で上映される日を楽しみにしたいと思う。

 

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