クリストファー・ノーラン監督最新作『TENET テネット』を観た。
今回の作品は予告編からも分かる通り、「時間の逆行」が描かれる。恐らく多くの人が小さい頃に過去に自らが撮影した映像、または映画やドラマ、アニメなどの映像作品を逆再生することで、「高いところから低いところへと飛び降りた人が重力に逆らって低いところから高いところへ移動したように見える映像」「キャラクターが大食いしている様子が、キャラクターが凄い勢いで食べ物を吐き出しているように見える映像」を生み出して、面白がった経験があるのではないかと感じる。本作はそんな、誰もが一度は経験したことがあるではあろう、ちょっとした映像を使った遊びをコンセプトに200億円もの大金をかけて物凄く硬派な感じの作品に仕上げられている。
ノーラン監督の作品はいつもそんな感じだ。『メメント』は「映像の入れ替え」、『インセプション』は「他人の夢の中に入る」、『インターステラー』は「ブラックホール」、『ダンケルク』は「違う長さの時間を同じ時間に見せる」、映像というメディアそのものが持つ特性を活かしたアイデアや中学生の頃に好きだったモノが大金をかけられ大真面目に映像化されていく。だからノーラン作品はコンセプトだけで惹かれるし、仮に映画そのものが多少面白くなくたって、次回作品に期待してしまう。一方でそういう部分が「可愛げがない」「鼻に付く」とアンチノーランを産んでいるのではないかとも思う。自分はノーラン監督作品が好きだが、その気持ちも分からないでもない。
そんなこんなで個人的に『TENET テネット』はストーリーとは関係なく、「時間の逆行」というコンセプトのみで鑑賞前から「好きな映画」となっていたのだが、正直ストーリー自体は「?」な部分も多く、全然消化できていない。
それでもディズニーが『ムーラン』を配信に切り替える中で、劇場公開に拘り続けたノーラン監督の姿勢合わせて、多くの人に劇場で体験して欲しいと思った。