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『STAND BY ME ドラえもん2』の興行収入が前作から大幅ダウンした理由

STAND BY ME ドラえもん2 DVD(特典なし)

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が国内興行収入の歴史を塗り替えるヒットを記録する中に公開された山崎貴監督最新作『STAND BY ME ドラえもん2』の最終興行収入は28億円前後見込みだという。これは興行収入83.8億円の大ヒットとなった前作『STAND BY ME ドラえもん』の3割程度の成績だ。

 

配給する東宝の市川南常務は12月15日の会見で「『鬼滅』が影響を与えたというよりは、コロナの第3波の影響が少しあったかという気はする」とし、「鬼滅」に客を奪われたわけではないとの考えを示した。

 一方で、同作宣伝担当の一人は「『鬼滅』は第3波でも堅調に客が入っているので、コロナだけの影響ではない」と漏らす。

映画館をジャックした「鬼滅の刃」 あおり受けた作品も:朝日新聞デジタル

 

この結果に対して東宝の市川南常務は『鬼滅の刃』の記録的なヒットによって客を奪われたのではなく、コロナの第3波の影響が出たという見解を示した。一方で『朝日新聞デジタル』の記事によると、同作宣伝担当の一人は第3波の中でも『鬼滅の刃』はヒットを続けていることから、市川南常務の見解には否定的だという。現に本作が公開された週末の『鬼滅の刃』の興行収入は6週目にも関わらず10億3200万円を稼いでおり、コロナ第3波の影響を感じさせない。

 

以下は個人的に感じた本作が不発となった理由だ。

 

 

  • 『鬼滅の刃』に客が奪われた

ピアノミニアルバム 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

映画を大ヒットさせるためには「年1・2本」もしくは「シーズン毎に1・2本」映画を鑑賞する程度のライトな観客の動員が不可欠だ。本作の前作は世代を超えて愛される『ドラえもん』の中でも「泣けるエピソード」をベースにシリーズ初の3DCGアニメ映画化するということで、大きな注目を集めた。その結果、毎年春に公開される『映画ドラえもん』シリーズのターゲットであるファミリー層以外の幅広い層から支持を集め、「そのシーズン(2014年夏)最大の注目作品」となることで大ヒットなった。一方で本作は前作の続編ということもあって、「ドラえもんが3DCGアニメ映画化する」という前作最大の注目ポイントの新鮮度が薄れてしまった。その上、同時期には『鬼滅の刃』が記録的なヒットとなっており、前作の大ヒットに貢献したライトな観客層の多くが『鬼滅の刃』の方に流れてしまい、結果的に本作の興行収入は大幅ダウンとなってしまった。

 

  • コロナ禍でファミリー映画が不調

映画ドラえもん のび太の新恐竜 DVD通常版(特典なし)

コロナ禍以後に公開された『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(前作:50.2億円から33.5億円)、『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』(前作:20.8億円から11.8億円)、『劇場版ポケットモンスター ココ』(前作:29.8億円から20.2億円)などファミリー層をメインターゲットとしている作品は軒並み興行収入が前年までと比較して目に見えて低迷している。この結果からはコロナ禍で子供を映画館に連れて行くことに躊躇う親の気持ちが出ているのではないかと感じる。本作は上述した作品と比べればターゲット層は広くとられているが、それでもファミリー層の動員が高い比率を占めていると予想されるため、他のファミリー映画同様にコロナ禍の影響が出た。

 

  • 公開時期が悪かった

「劇場版ポケットモンスター ココ」ミュージックコレクション

前作は2014年8月8日公開と夏休み興行の恩恵を受けやすい時期だった。本作も当初は前作と同時期の8月7日公開予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で公開延期された『映画ドラえもん のび太の新恐竜』に押し出される形で11月20日公開となった。その結果夏休み興行を逃すだけでなく、『新恐竜』との公開スパンが短くなってしまった。子供を持つ親視点で考えれば、前作は「春休み公開のドラえもん」と「夏休み公開のドラえもん」と「違うシーズンに公開されたドラえもん」という感覚だったが、11月公開だと「冬休み映画」としては早すぎる。だからといって冬休みまで待てば、今年は本作同様に夏公開から延期となっていた『劇場版ポケットモンスター ココ』や『えんとつ町のプペル』が公開されてしまい子供たちの選択肢は増える一方で、本作の上映回数は減るという悪循環。その上、同時期には『鬼滅の刃』という強力な選択肢も上映されていたことから、本作は中途半端なポジションとなってしまった。

 

 

そんな感じで、本作は前作から興行収入を大幅に落とした理由は「『鬼滅の刃』に客を奪われた」「コロナ禍でファミリー層が映画館を敬遠した」「公開時期が悪かった」の3つに加えて、本作自体に前作ほどの魅力がなかったという点にあったのではないと思う。同監督の3DCGアニメ映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』(最終興行:14.2億円)や『ルパン三世 THE FIRST』(最終興行:11.6億円)は上回る結果となっているが、毎年春に公開される『映画ドラえもん』シリーズの興行水準を下回る結果となったのは残念だ。今後の日本の3DCGアニメ映画の行方は…

 

参考記事

http://www.eiren.org/toukei/img/eiren_kosyu/data_2020.pdf

http://www.eiren.org/toukei/img/eiren_kosyu/data_2019.pdf

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