ネタバレ注意
『週刊少年ジャンプ』で連載されていた大ヒットコミックスの実写映画版『約束のネバーランド』を観た。
- 原作からの年齢変更で生じた違和感
本作は「原作では11歳の主人公たちの年齢を役者の年齢を考慮して、15歳に設定変更している」という点から、製作発表段階で批判意見が目立っていた。個人的には年齢設定の変更に対してそこまで批判的なスタンスを取っていたわけではないのだが、主演の浜辺美波さんは製作発表当時19歳と、子供たちの中にいると「大きなお友達が混じってる感」が半端なくて中々の違和感を放っていた。ただこれは浜辺美波演じるエマが優秀な脳みそを持っているから、他の子供達と異なり出荷年齢ギリギリまで残っているからだ、と自分を納得させることができる。同い年であるはずのレイを製作発表当時13歳と浜辺美波さんの6歳下の城桧吏さんが演じていることから、画的なバランスの悪さも感じさせるが、これもエマが態々レイ登場シーンで「男の子なのに背が低い!」と観客の多くが違和感を覚えるであろう点に先行して説明ツッコミを入れてくれるお陰で、「まー、この映画ではそういう設定なのだろう」と飲み込むこともできる。
- 学芸会レベルの演技
ただ城桧吏さんの演技は流石に厳しかった。まだ14歳の少年に対して年上がネットの匿名記事でこういうことを書くのもどうなんだろう、とは思うが、全編を通して台詞を読んでいる感が半端ない上に、一つの台詞の区切りのタイミングで間を空けて本を持ち上げたり、木に腰掛けたりするから、何となく「そういう段取りなんだろうな…」と余計な想像をしてしまう。その上、浜辺美波さんもノーマン役の板垣李光人さんも城桧吏さんをカバーできるほど演技が上手くないから、3人のシーンはどうしても学芸会感が出てしまっている。なんというか「頑張ってるのは分かるんだけど、態々時間を作ってチケット料金を払って観ている立場からすると… うん…」みたいな時間が続く。本作の見どころのよう宣伝されていたクローネ役の渡辺直美さんの演技もオーバーアクトでバラエティ番組を見ているようだった。
※城桧吏さんは声変わりによって全編アフレコだったという。個人的に「『万引き家族』の時は演技が下手とか思わなかったのに、なんで…」と思っていたので、そういう背景があったというのは色々と納得。
- 「エマとママの運命の対比」を強調
ストーリー面は「原作のGFハウス脱獄編を上手く映画用のシナリオに落とし込めるなら、結構面白い作品になるかも」と期待していたが、上述した設定変更を除けば基本的に原作のストーリーをそのまま順番にやっているという感じで面白みはない。そんな退屈な展開が続く中で、写真を撮るシーンで「『誰が写真を撮る?』『オレが撮る!』『いや、オレが!』『じゃあ、オレが…』『どうぞ、どうぞ』」というどう考えても世界観と合ってないダチョウ倶楽部のギャグを挟んでくるなど、こちらをイラつかせてくる。
そんなこんなで上映中の大半の時間を自分は本作を結構な駄作の部類に入る作品だと思って観ていたが、クライマックスの展開を観て少し気持ちが変わった。本作のラスト、原作では崖を渡りきり脱出するまでエマ達に追いつけないママが実写映画版では崖を渡っている最中のエマ達に追いつく。そして映画オリジナルのエマとママが対話するシーンに突入する。勿論、このシーンを日本映画特有の御涙頂戴シーンのための原作改変だと批判する人もいるだろう。ただ自分はこのシーンで「かつて農園の秘密を知り、脱走のために同じ場所に立ったにも関わらず、脱走を諦め運命に従ったママ」と「幼少期のママと同じ場所に立ち、仲間と共に脱走を成功させることで運命を変えようとするエマ」というママ候補の優秀な女子かつ擬似親子である2人の運命の対比が強調され、週刊連載の漫画を一本の映画として成立させるための落とし所としては悪くなかったのではないかと思う。
本作はママが生まれたてのエマを抱きしめるシーンから物語が始まることからも、製作陣は「エマとママの物語」を軸とすることに本作の実写映画化の勝算を見出したのではないかと感じた。作品全体としてはかなり退屈な作品なのでオススメはしないが、個人的には原作を読んでいる時には気づけなかった「エマとママの運命の対比」に気づかせてくれた点では良かった。
- 最後に…
最後に本作の興行収入は20億円を超えており、そこそこのヒットとなっている。仮に続編が作られるのだとしたら、役者陣の演技の改善を強く望む。
参考記事