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大河ドラマ『新選組!』の便乗に始まり、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の便乗に終わる『銀魂 THE FINAL』

【映画パンフレット】銀魂 THE FINAL 声の出演:杉田智和、阪口大助、釘宮理恵、石田彰、子安武人、千葉進歩、中井和哉、鈴村健一、山寺宏一

2021年1月8日に公開された『銀魂 THE FINAL』が動員ランキング12週連続1位を記録していた『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を破り、週末動員ランキング初登場1位スタートを切った。最終興行収入は18億円を超えてシリーズ最高記録を更新している。

 

  • 最終回まで追うのが大変な作品

銀魂 モノクロ版 77 (ジャンプコミックスDIGITAL)

『銀魂』ほど最終回までを追うのが大変な作品は珍しいのではないかと思う。これは原作の連載年数、アニメの放送年数が長いからというだけではない。原作漫画は2004年から2018年まで『週刊少年ジャンプ』で連載されていたが、最終回5週前からジャンプ本誌でカウントダウンを開始し、『ZIP!』で舛アナにニュースとして報道されたにも関わらず、物語を完結させることが出来ず、『週刊少年ジャンプ』の「新人発掘の場」である増刊号『ジャンプGIGA』に移籍して「最終回のむこう側」を3号連続で掲載。しかしそれでも完結できず、最終的に『銀魂公式アプリ』に移籍して連載を完結。テレビアニメ版も2006年から2016年まで休止を挟みながらも夕方枠で放送されていたが、2017年から深夜枠へ移動。その際も継続的に放送されているわけではなく、クールごとに休止を挟みながらの放送となり、最終的に劇場版とdTVの独占配信にて完結。しかも作品の時系列的には後の劇場版『THE FINAL』を先行して公開して、時系列的には劇場版の前に当たるdTV独占配信『THE SEMI-FINAL』を劇場版公開後に配信するという不親切ぶり。

こんな感じで『銀魂』という作品はコミックスで追っていない限り、ジャンプ本誌で読んでいた人は度重なる移籍に、テレビアニメを観ていた人は度重なる視聴枠の変遷に挫折する人が多いため最終回までの到達難易度が異常に高い作品となってしまった。

 

 

  • 『THE FINAL』は「一見さんお断り映画」

youtu.be

そんな挫折率の高い作品の完結編。本作は「ちょっと内容忘れちゃったあなたも、途中で見るのをやめちゃったあなたも、これまでのあらすじ付きだから大丈夫!」という趣旨のCMとは裏腹に完全なる「一見さんお断り映画」に仕上がっている。というのも、原作の『銀魂』は56巻から始まる「将軍暗殺篇」から最終巻の77巻までの21巻をかけて最終章を描いている。本作はその21巻に及ぶ最終章のクライマックスにあたる、77巻の後ろ2/3をアニメ化している。そのため本作は冒頭にこそ『ドラゴンボール』風の簡単なあらすじ紹介があるが、開始早々「犬猿の仲だったはずの銀時・桂・高杉が同じ目的を持って共闘」「ターミナルが爆破されている」「定春が封印されている」など、近年の『銀魂』を追ってなかった人が「最近作品には触れてなかったけど、昔は好きだったし、最後だというなら久々に観に行こうかな…」くらいの気持ちで観に行くと「最終章の中でもクライマックス中のクライマックス」だけを観せられて、置いてけぼりを喰らってしまうのではないかと思う。

 

 

  • 「一見さんお断り映画」なのに大ヒット

そんな「一見さんお断り映画」にも関わらず、本作は前述した通り12週連続動員ランキング1位を記録していた『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を破り初登場1位を獲得し、最終興行は18億円を超え、シリーズ歴代最高の大ヒットを記録した。この背景には熱心なファン向けに週替わりの特典配布を展開していたことも挙げられるが、個人的には『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の記録的ヒットに便乗する形で原作者・空知英秋描き下ろし「炭治郎&柱イラストカード」を初週入場者プレゼントとしたことが大きく感じる。

当然、これは「『銀魂』のヒットは『鬼滅の刃』のヒットのおかげだ」という主張ではない。『銀魂』という作品の始まりはコミックス1巻のおまけページによると担当編集者の「来年大河ドラマで新選組やるの知ってるだろ。アレに便乗しろ」という言葉からだったという。そしてその後も『銀魂』という作品、原作・テレビアニメ両方で事あるごとに過去の名作、その時話題の作品、時事ネタに便乗、パロディのオンパレードという作風だった。つまりは今回の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の大ヒットに便乗する入場者プレゼントは、時の流れによって『銀魂』から離れていってしまった人たちの中に眠る「あの好きだった銀魂らしさ」を刺激することで、かつてのファンたちを呼び起こし、劇場に向かわせる効果もあったのではないかと思う。勿論、今回の特典には「これは空知先生らしくない」という批判意見も見受けられたが、個人的には原作の始まり同様、偉い人からの指示によって空知先生が半ば付き合わされる形となっているの含めて「銀魂らしいな」と感じた。

 

※YouTubeの『銀魂チャンネル【公式】』で期間限定で「歴代OP・ED集」が配信されていたのも、個人的にはかなり刺激された。

 

 

  • 最後に…

作品内容そのものは原作完結時に別記事に記した事と基本的に重なるので省くが、個人的には「アニメの制作会社が変わったからなのか、『新訳紅桜篇』と比べて戦闘シーンの作画クオリティが落ちているような…」とか「ギャグのテンポ、こんな感じだったかな…」とか、色々思うところもあったのだが、銀さんと高杉の別れのシーンを夜桜が散る船の上にした原作からの改変ポイントは良かったし、何より義務教育時代に出会い、自分の人生に大きな影響を与えた作品が完結したことは感慨深った。

 

銀魂 モノクロ版 77 (ジャンプコミックスDIGITAL)

銀魂 モノクロ版 77 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:空知英秋
  • 発売日: 2019/08/02
  • メディア: Kindle版
 

 

参考記事

またかよ! 『銀魂』、最終回の続きをジャンプGIGAでも完結できず 残りは「銀魂アプリ」で連載 - ねとらぼ