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最後のコマではなかった「お前は自由だ…」、『進撃の巨人』最終回で再認識した作品全体の印象を決める「最後のコマ」

進撃の巨人(34) (週刊少年マガジンコミックス)

ネタバレ注意

諫山創先生の『進撃の巨人』が完結した。

 

本作の最終回で感じた疑問にセルフアンサーする記事を書いた際に、最後のコマが数年前に『情熱大陸』で放送されていた謎の人物が赤ちゃんを抱えて「お前は自由だ…」と話しかけているコマではなかったことに触れた。実際の最終回では、このコマは途中に挟み込まれており、赤ちゃんを抱えていた人物がエレンの父親で、赤ちゃんは生まれたばかりのエレンであることがわかる。

 

 

ここから書くことは前記事に書いた内容とやや重なるが、もし仮にこのコマが当初の予定通り最後のコマだった場合、エレンという自由を望みながら、自由に生きられなかった青年が生まれて直ぐに聞かされたのが、彼の人生とは真逆の「お前は自由だ…」という言葉だったと明かされて物語の幕が閉じるという皮肉の効いたビターエンドとなっていたことになる。そうなると、読者はその苦い後味から、作品全体もビターな印象になり、尚且つ本作は「自由を得られなかったエレンの物語」ということを強く認識することになったのではないかと思う。

 

一方で実際の最終回の最後のコマはエレンと思わしき鳥がミカサのマフラーを巻いてあげたことで、エレンを失って喪失感を覚えていたミカサが感謝の言葉を口にするシーンとなっている。本作におけるマフラーはエレンとミカサの関係性を象徴するアイテムだ。この切なくもどこか爽やかさを感じる最後のコマは、作品全体の印象にも大きな影響を与え、尚且つ本作が「エレンとミカサの物語だった」ということを強調する。

 

 

つまり、何が言いたいのかというと、作品において「最後のコマ(シーン)」は作品全体の印象を大きく変えるんだな、という当たり前のことを再認識したという話。もしミカサがエレンに感謝の言葉を述べたページの後に、黒塗りのページを挟んで、「お前は自由だ…」のコマがあったら、暫く立ち直れなかったかもしれない。

 

mjwr9620.hatenablog.jp

 

進撃の巨人(33) (週刊少年マガジンコミックス)

進撃の巨人(33) (週刊少年マガジンコミックス)

  • 作者:諫山創
  • 発売日: 2021/01/08
  • メディア: Kindle版