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東大合格請負漫画『ドラゴン桜2』完結、水野の「頑張って」と桜木が早瀬と天野に伝えた「一番大切なこと」

ドラゴン桜2(17) (コルク)

三田紀房先生の『ドラゴン桜2』が完結した。

 

  • 龍山高校に桜木と水野が帰ってきた!

ドラゴン桜(1) (モーニングコミックス)

『ドラゴン桜』は三田紀房先生が2003年から2007年まで講談社の『モーニング』で連載して、テレビドラマ化もされた大ヒット漫画。物語は経営破綻寸前の底辺高校を清算しようとした主人公の弁護士・桜木が「このまま破綻させるより、経営を回復させた方が自分の実績になる!」と考え、毎年東大合格者100人が出る進学校にしようと企む。そして「まずは今年東大合格者を1人出す!」という目標のために特別進学クラスを設置し、そのクラスに入った人生を諦めかけていた水野と矢島が東大という1つの目標に対し努力する事で自分の人生を切り開いていくという物語。『ドラゴン桜2』はその続編にあたる作品になる。

ドラゴン桜2(1) (コルク)

 『ドラゴン桜2』では龍山高校から東大合格者が出てから桜木のお陰で遂に東大合格者10人を突破する事で有名進学校への仲間入りを果たそうとしていた。しかし桜木が学校を離れてから5年、東大合格者数は右肩下がりになりついに全滅。偏差値30の底辺校を東大合格者を送り出す事で学校再生をしたという実績から全国の私立高校から経営指導の依頼を数多く受け「学校法人に強い桜木健二事務所」としてブランドを確立していた桜木にとって龍山高校の進学実績がこれ以上落ちたらマズイと感じ、再び龍山高校へ元教え子の水野と再建を図りに乗り込んでいく…という物語。

また本作製作の背景には「2020年の教育改革」で、大学入試制度が根底からから変わり前作『ドラゴン桜』のアップデート版が必要になったことや時代の移り変わりにより起きた価値観の変化によって古くなった部分を更新していくという意味もある。

 

 

  • 水野の「頑張る」から「頑張って」

ドラゴン桜2(5) (コルク)

10年以上の時を経て復活した作品だけあって作品内での言説も前作から変わってるものと同じものがあるが、連載初期から個人的にイマイチ納得出来ていなかったのは桜木が生徒達に「頑張る」という言葉を使う事を禁止したことだった。前作では敢えて「頑張る」という口に出すことで大学受験へのモチベーションを高めていたこともあり、前作の教え子・水野もこの意見に反対する。

しかし桜木は前作の勉強を全くして来なかった生徒とは違い、進学校である程度勉強して来た生徒は学習習慣があるため無意味に勉強量だけを求めて頑張り過ぎてしまう懸念があると解説し、「目的に対して手段を講じる」という正しい頑張り方を教えるために「頑張る」という言葉を禁止したという。ただそれならそれで「〇〇する為に〇〇して頑張る」みたいに正しい頑張り方を教えて実践させればいいのではと感じずにはいられなかった。

そういうモヤモヤがあったからこそ、最終巻で水野が前作の秋の東大模試前日に桜木が「頑張れ 矢島 水野」という声かけに水野が「頑張る… 全力で頑張る」と宣言するシーンと同じ構図で、東大専科の2人に桜木神社の御守りを渡して「頑張って…」と送り出すシーンは前作との対比もあってジンときた。水野にとって「頑張る」という言葉はやっぱり特別だったのだと認識した嬉しいシーンだった。

 

 

  • 一番大切なことは…

ドラゴン桜2(3) (コルク)

本作の最終回のタイトルは「一番大切なこと」で桜木が東大参加の2人に伝えた東大合格の最大の理由は「東大を受けること」だった。元も子もないような話だが、個人的な解釈はお昼ご飯にマックが食べたいと思った時、マックに行かなければマックは食べれない。しかしマックに行けばマックをお昼ご飯にする未来は比較的簡単に手に入れられる。桜木は「東大と同じ 人生も簡単に変えられる まずは変えようと思うこと 変わることを楽しむことだ」と続ける。『ドラゴン桜2』のメッセージは東大受験を通して受験生にだけでなく、全ての読者に人生の歩み方を提示していたのだろう。

 

 

  • 最後に…

最後に『ドラゴン桜2』で個人的に好きなシーンは桜木が天野に「本当のバカはやらないやつのことだ」と説くシーン。「やる」を選んだ以上「失敗」はつきものだが、「やる」を選び続けなければ「成功」はないのだろう。