新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックにより開催事態の是非が問われた「東京オリンピック2020」もついに終幕を迎える。今回は「東京オリンピック2020」関連の作品をネタバレ全開で紹介したい。
- 東京タラレバ娘
オリンピックの東京開催が決まった2013年に東村アキコ先生のアラサー・アラフォーの独身の友人たちが次々と「一人で(または親と)東京オリンピックを見るなんて嫌だ」と言い出したことを元ネタにした作品。
本作の主人公の倫子は6年後の東京オリンピック開催時には40歳を迎える33歳。「このままタラレバ言い続けて、もし6年後も今のまま1人だったら…」という独白は多くの読者を恐怖に陥れ「ホラーマンガ」とまで評された。アレから長い年月が経ち、1年の延期を経て開催された東京オリンピック。当時からの今を振り返って「タラレバ」思うか、「カラカラ」思うか…
ねぇー🥺🥺
— 吉高由里子 (@ystk_yrk) 2021年7月29日
おめでたいよぉー🥰
大事なお2人
大好きなお2人😘🥳😘🥳
優子遣都
末長くお幸せにね😍
あ、うんっ
2人とも💍だから
1人で
タラレバ言ってるからね☺️
うん、大丈夫🤗
全然大丈夫だから🤗🤗ねっ☺️笑
どんどん
おめでたいニュースが
続きますように❤︎
ちなみにコロナがなけ「レバ」東京オリンピック開会式に出演してたとされるPerfumeの『TOKYO GIRL』が主題歌のドラマ版のメインを演じた3人の内、主演の吉高由里子さん以外の2人は大会終了前に結婚した。
東村アキコ『東京タラレバ娘』インタビュー【前編】 アラサー女子の痛いところを突きまくる! 独身アラサーよ、これが現実だ!!! | このマンガがすごい!WEB
- オリンピア・キュクロス
『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリ先生が古代ギリシャ人が元々何もない原っぱを走ってるようなオリンピックが、現代の大きな経済を動かすイベントに変容してしまった姿を見たら驚くのではないかという発想から作られた比較文化論漫画。
古代ギリシャ人が1964年または2020年の東京にタイムスリップしてカルチャーギャップに驚き古代ギリシャに逆輸入していくという展開は「『テルマエ・ロマエ』と同じじゃないか!」とツッコミを入れたくもなるが、その点は作者も自覚的。この手の歴史物を真正面から漫画化すると、どうしても「学習漫画」のようになってしまうイメージを持つが、本作はタイムスリップ要素があることでエンタメ作品に上手く落とし込めている。2020年開催の東京オリンピックへの商業化批判だけでなく1964年の東京オリンピックで銅メダルを獲得するも国民からの金メダルへの期待のプレッシャーから自ら命を絶った円谷幸吉選手の問題など、オリンピックが抱える様々な光と影が古代ギリシャ人の視点で描かれている。古代ギリシャの壺絵と日本の漫画作品の共通項など、オリンピック以外のエピソードも読みどころ。
ヤマザキマリ、新たなタイムスリップものに「テルマエと同じはダメ」と決意語る(イベントレポート) - コミックナタリー
- いだてん〜東京オリムピック噺〜
2019年に放送された宮藤官九郎脚本のNHK大河ドラマ。日本が初めて夏季オリンピックに参加した1912年のストックホルムオリンピックから1964年の東京オリンピック開催までの52年間の歴史を日本人初のオリンピック選手となった「日本のマラソンの父」金栗四三と、東京オリンピック招致に尽力した田畑政治の2人の主人公をリレーする形式で描いた作品。
自分は総集編しか見ていないが、当初本作を「1964年東京オリンピックの感動をふたたび 東京2020で 」というコピー等から「東京オリンピック2020」のプロパガンダ作品とまではいかなくても、「まー、そういうタイプの作品」くらいの認識でいた。しかし実際に開会式前に再放送されていた総集編を見てみるとラストに1964年の東京オリンピックの開会式で招致の立役者である田畑に戦争で返上した1940年の東京オリンピックを強行開催しようとした亡き嘉納の幽霊が「これが、君が世界に見せたい日本かね?」と問いかけられて「はい」と答えるシーンがある。とても世界に見せれる状況ではない1940年の日本と世界に見せていきたい1964年の日本を対比する演出からは、「果たして今の日本は世界に見せたい日本なのか?」という問いに聞こえる。特に新型コロナウイルスのパンデミックにより大会が1年延期となり、開幕直前まで続いたゴタゴタは世界に見せたい日本なのか…
そんなことを考えさせられるだけでなく、純粋にこれまで日本が関わってきたオリンピックの歴史が『シン・ゴジラ』などの尾上克郎氏らによるVFXで描かれた映像でコミカルに語られる物語は面白かった。50話全部観るのは大変だと思うので、自分みたいに総集編だけでも観てみるのもいいのではないかと思う。
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/2000/266692.html
NHKが開会式前日に放送『いだてん』が突きつける東京五輪への疑問!「いまの日本は世界に見せたい日本か」の台詞が甦る |LITERA/リテラ
『いだてん』は日本屈指の“特撮ドラマ”だった! 最終回の国立競技場にはVFXの総力を結集|Real Sound|リアルサウンド 映画部
- 天気の子
『君の名は。』が歴史的な大ヒットを記録した新海誠監督が、天候の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄されながらも自らの生き方を選択しようとする少年少女の姿を描いた長編アニメーション。
新海誠監督は2020年に東京オリンピックを迎え、東京という街が良くも悪くも変わってしまう前に自分が作る作品の中で「今の東京」と「違う姿になった東京」を見せたいという気持ちもあり本作を製作したという。現実世界の東京はオリンピック開幕前に新型コロナによりその姿を変えたが、果たして大会終了後の東京はどのような姿になっているのだろうか… どんなに世界が変わってしまっても「大丈夫だ」と開き直って生きていくのが、例え正しくなかったとしても必要なのかもしれない。
『天気の子』新海誠監督単独インタビュー 「僕たちの心は空につながっている」 - ウェザーニュース
- アルキメデスの大戦
『ドラゴン桜』シリーズなどで知られる三田紀房先生が東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設を巡るゴタゴタから発想を得た、天才数学者が超巨大戦艦「大和」の建造計画を阻止するために奔走する作品。
東京オリンピックと戦艦大和建造計画を重ねながら、過去と現在の日本の問題点が炙り出されていくのが面白い。また本作の実写映画版は当時東京オリンピック・パラリンピック開閉会式統括だった山崎貴監督が手掛けているが、これまで日本の美点にスポットライトを当て続けてきた監督が魅力溢れる大和のVFXを使い煽り煽られ熱狂し、負け方も知らずに突き進んでいく「日本人の愚かさ」を原作にないオリジナルの結末で描いている。今の日本にとっての負けると分かっていても止められない「戦艦大和建造計画」とは何なのか…
今回の問題を考える良いガイド
— 山崎貴 (@nostoro) 2021年7月29日
発売中止となった開会式公式プログラムが拡散?東京オリンピック《ピクトグラム誕生秘話》と《予算5分の1削減の真相》|のやまやの #note #最近の学び https://t.co/Q3Csabci73
余談だが山崎貴監督は東京オリンピック・パラリンピックの演出家を解任された小林賢太郎氏について言及されたnoteを自身のTwitterでシェアしている。
※山崎貴監督は当初演出チームの中心とされていたが様々な事情により責任者は野村萬斎氏→MIKIKO氏へと交代劇を繰り返し、最終的には新型コロナウイルス感染拡大により解散となった。
「アルキメデスの大戦」は新国立競技場の騒動から着想得た…原作の三田紀房さん実写化への思い語る : スポーツ報知
アルキメデスの大戦 インタビュー: 菅田将暉、山崎貴監督流の負荷で“燃える”!「リズムの気持ち良い現場が好き」 - 映画.com
五輪開閉会式演出チーム、これまでも不協和音で迷走… - 産経ニュース
- カイジ ファイナルゲーム
福本伸行先生原作の人気漫画を藤原竜也主演で実写映画化したシリーズ最終回。2020年に国を挙げて盛大に開かれた東京オリンピックを機に恐ろしい速さで景気が失速していった日本を舞台にした作品。
現実世界では日本はおろか世界中が東京オリンピック開催前に新型コロナウイルによるパンデミックで景気が失速する「事実は小説より奇なり」状態となったが、日本を救うために「弱者切り捨て政策」を実行しようとした官僚に対してカイジが放った「日本はオレたち、圧倒的過ぎるオレたち」「日本がダメになりそうになっても、逃げずに、泥水をすすってがんばればいいじゃないか」というセリフをどう受け取るかを考えながら観るのも悪くないのではないかと思う。
ちなみに『金曜ロードショー』で地上波初放送された際には放送時間の関係もあったのか、オープニングの「東京オリンピックを機に景気が失速した」という説明はカットされていた。
今で言うと“シブコ”みたいな――福本伸行が語る映画「カイジ ファイナルゲーム」とカイジの悪魔的魅力 - ねとらぼ
- Fukushima50
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故で、未曾有の事態を防ごうと現場に留まり奮闘し続けた人々の知られざる姿を描いたヒューマンドラマ。
この内容だと「別に東京オリンピック関係なくね?」と思う人もいるかもしれないが、実は本作はラストで「2020年7月より開催される東京オリンピック・パラリンピックは復興五輪と位置づけられ 聖火は福島からスタートする」という字幕が流れる。個人的には「皮肉」として受け取ったが、この字幕には「福島の問題を終わったことにして美談化している」「東京オリンピックのプロパガンダ映画」という批判意見も目立った。プロデューサーは字幕の意図を「映画を観る人がどう捉えるか、任せたかった」と説明している。そのためパンデミックによる1年延期決定後に安倍前総理と菅総理によって新たに掲げられるも叶うことのなかった「コロナに打ち勝った証」という位置づけにより、影が薄くなってしまった「復興五輪」に対する字幕をどう捉え、その捉え方に対してどういう感情を抱くのかを自身で体験するのが大切なのだと思った。
二極化し、変容もみせる『Fukushima 50』への反応。ニュートラルに観ることは不可能なのか(斉藤博昭) - 個人 - Yahoo!ニュース
- MIU404
2020年6月29日から9月4日までTBSテレビの金曜ドラマ枠で放送された「脚本:野木亜紀子」「プロデュース:新井順子」「演出:塚原あゆ子」の『アンナチュラル』チームが手がけた綾野剛・星野源主演オリジナルドラマ。物語は犯人逮捕にすべてを懸ける初動捜査のプロフェッショナルである機動捜査隊である「第4機動捜査隊」が24時間というタイムリミットの中で事件解決を目指すさまを1話完結で描いていくという内容。
本作の最終回は2019年を舞台に東京オリンピックに対しての賛成派と反対派の声が描かれるシーンがあるが、ラストはウイルスによるパンデミックが起き大会が延期となった2020年夏まで時間が飛び、主人公は「賛成も反対も全部ウイルスが飲み込んだな…」とセリフを吐く。本作は劇中で「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」、俗に言う「ピタゴラ装置」を使って、人生は様々な「スイッチ」によって行き先を変えるということが繰り返し提示されていたが、奇しくも本作も「新型コロナ」が「スイッチ」となり当初の放送時期から話数、内容の行き先を変えざるを得なくなった。当時の空気感が思い出せるという意味でも貴重な作品である。
五輪前に緊急事態宣言はまずいと、まん防を設定し、結局また元に戻す。毎度三日前の週末に発令。飲食店さんは、翌週の予約も仕入れも無駄になるし、どうしていつも、せめて一週間前に言ってくれと嘆いている。ようやくまた営業はじめたところも多かった。ずっと五輪中心で、五輪に振り回されている。
— 野木亜紀子:||+1.01 (@nog_ak) 2021年7月9日
もともと「五輪までにワクチン接種が済むから大丈夫」という話が、いつの間にか消えてしまった。「五輪史上最もお金のかからないエコ五輪」という話も消えた(延期でかかったお金とは別に、予算が何倍にも膨れ上がっていた)。アンダーコントロール?復興五輪?どれも有耶無耶……
— 野木亜紀子:||+1.01 (@nog_ak) 2021年7月9日
やるならやるで、感染対策含め「五輪だけは何でもOKフリーパス」なんてことはせず一貫性をもってあたってほしい。そして後々検証できるようにしてほしい。海苔弁出して済ませようってのは勘弁。日本は民主主義の国なので。
— 野木亜紀子:||+1.01 (@nog_ak) 2021年7月9日
ちなみに野木亜紀子さんの東京オリンピック開催に関する見解は上記の通り。
最終回直前!野木亜紀子が「MIU404」で描きたかったもの、そしてラストは?<「MIU404」インタビュー後編> | WEBザテレビジョン
- 名探偵コナン 緋色の弾丸
青山剛昌の人気コミックをアニメ化した大ヒットシリーズの劇場版24作目。4年に1度開かれる世界最大のスポーツの祭典「WSG -ワールド・スポーツ・ゲームス-」の東京開催と、世界初の「真空超伝導リニア」の開発という2つのキーワードを軸に、前代未聞の事件に挑む江戸川コナンの活躍を描いた作品。
本作に登場する「WSG -ワールド・スポーツ・ゲームス-」の東京開催は「東京オリンピック2020」をモデルにしていることは言うまでもないが、劇中では当然新型コロナによるパンデミックは起きていない。また劇中に登場する競技場は森元会長に「生牡蠣がドロッと垂れたみたい」と酷評され、後に安倍前総理により建設費の高さを理由に白紙撤回を発表されたザハ・ハディド案を連想させるデザインとなっており、東京オリンピック開催前の開業前倒しを求める声が上がるも物理的に困難という認識が示された中央リニア新幹線を連想させる「真空超伝導リニア」が登場。更に主題歌『永遠の不在証明』は当初東京オリンピック・パラリンピック開閉会式の演出チームのメンバーだった椎名林檎を中心とするロックバンド『東京事変』が担当と、ある種の人にとっては「理想」を詰め込んだとも言えるパラレルワールドの東京オリンピック開幕前のワクワク感を楽しめるいう意味でも大変面白い作品になっていたのではないかと思う。
【新国立競技場】森喜朗氏「生牡蠣がドロッと垂れたみたい」(発言詳報) | ハフポスト NEWS
中央リニア新幹線、東京五輪に間に合わない…太田国交相 | レスポンス(Response.jp)
「入場行進だけの式典は…」 幻の椎名林檎さん開会式案 - 東京オリンピック:朝日新聞デジタル
- もしも東京
『もしも東京』展、今回展示されるのは新たに描き下ろした未発表のものですが、去年延期になった都合で泣く泣くお蔵入りになるところをスピリッツに掲載してもらった際の読み切り漫画、まだ読めるのでリンク貼っておきます。↓https://t.co/EzY9jLC0fA
— 浅野いにお/Inio Asano (@asano_inio) 2021年7月15日
東京オリンピック・パラリンピックが開催される東京を文化面から盛り上げるTokyo Tokyo FESTIVALスペシャル13のひとつとして、東京都現代美術館にて2020年夏に開催予定だった「漫画『もしも東京』展」に展示される予定だった作品の一つ。
本作はコロナ禍が世間に浸透する前の2020年2月に完成した作品故に、パンデミックの起きていない2020年に予定通り東京オリンピックが開催された世界線での開催半年前と開催中の様子が描かれている。もしもパンデミックが起きない2020年で東京オリンピックを迎えていたら、自分はどういう過ごし方をして、何を思っていたのだろうかと考えながら読むのが個人的にはオススメ。
- こちら葛飾区亀有公園前派出所
秋元治先生の国民的漫画。2016年に『週刊少年ジャンプ』の連載は終了したが、その後も不定期で作品が掲載されており、東京オリンピック開幕直前の今年7月にも4年に一度、オリンピック開催年に目覚めるお馴染みのキャラクターである超能力警官・日暮熟睡男(ひぐらし・ねるお)の登場回が掲載された。
昨年7月にも目を覚ました日暮を両さんがコロナによる大会延期の説明を面倒くさがって「まだ2019年だから…」と誤魔化すエピソードが掲載されていたため、今年はその続きが読めるのかと思いきや、今回は新たにタイムワープ能力を身につけて1964年の東京にテレポートしてしまった日暮を両さんが捜すという内容。そこでは1964年の東京オリンピックも今回同様に反対派が多かったが、開会式でのブルーインパルスによる「五輪マーク」の成功を機に国民は「オリンピックを開催して良かったかも…」と心に思い始めたという説明が展開される。ここまで紹介してきた作品の中では唯一東京オリンピックを前向きに応援するタイプの作品だったが、個人的なお気持ち等は一旦置いといて、あのタイミングでこういうアプローチの仕方の話を持ってくるということ自体は面白いと思ったし、開幕直前のリアルタイムで読めたこと自体も幸せに思えた。今回の『こち亀』の内容の評価は今後の歴史が決めていくのだろう。
- 最後に…
東京オリンピック終了前に『ヒノマルソウル』と『未練の幽霊と怪物』に触れられなかったのが悔やまれる…
- 追記
Netflix配信の『日本沈没2020』も東京オリンピック関連作品として良かった。