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『アナと雪の女王』メガヒットの軌跡、『タイタニック』超え叶わなかったディズニーの合理的判断

アナと雪の女王 (吹替版)

2021年11月12日(金)、日本テレビ系列『金曜ロードショー』で興行収入254.7億円のメガヒット作品『アナと雪の女王』が放送される。今回は『アナ雪』のヒットの軌跡を振り返る。

 

  • 前週比超え連発のメガヒット作品

youtu.be

本作が公開されたのは2014年3月14日(金)と、当時大ヒットしていた『永遠の0』のブームがひと段落した頃だった。オープニング興行収入は3日間で約9.86億円と前年に公開されて興行収入89.6億円を記録した『モンスターズ・ユニバーシティ』とほぼ同等のスタートで、興行収入50億円超えは確実の大ヒットスタートとなった。この頃のディズニーの長編アニメ映画の日本での興行収入は『塔の上のラプンツェル』が25.6億円(東日本大震災の影響あり)、『シュガー・ラッシュ』が30.0億円とピクサー作品の50〜100億円のヒット連発と比べると、ヒットしても25〜30億円くらいといった感じだった。また『モンスターズ・ユニバーシティ』が夏休み公開だったのに対して、『アナ雪』は春休み公開であり、また『モンスターズ・ユニバーシティ』の3D上映の動員がイマイチだったのか、日本での3D上映の縮小時期とも重なっていた。そのため、この段階では興行収入100億円超えの可能性を見透していた人は少なかってのではないかと思う。

一方で本作は『塔の上のラプンツェル』の地上波初放送で約7分に及ぶ『アナ雪』の特別映像が放送された効果もあってか、2週目の週末興行で初週興行を上回る結果を出し、洋画アニメ最速の興行収入30億円突破を果たす。更に3週目も2週目の週末興行を上回り、50億円を突破。4週目、5週目もほぼ前週の記録をキープして、1日約3億円を稼ぐ勢いで推移し、6週目で興行収入100億円を突破。一方で6週目は『劇場版名探偵コナン 異次元の狙撃手』が封切られ、週末動員ランキングでは2位に甘んじた。ただし当時のコナン映画は現在と違って興行収入30〜35億円程度の作品で、この年の作品は原作に先行して赤井秀一の謎が明かされる力を入れた作品だったので、公開前は「コナンは『アナ雪』のメガヒットで運がないね」とやや同情ムードもあった。しかしコナン映画は連年を大きく上回るオープニング興行を記録して『アナ雪』の独走を阻止する結果となり、当時はかなり盛り上がった記憶がある。

 

 

  • 春休み映画なのにゴールデンウィークに最高潮

コナンの予想以上のパフォーマンスに一度ランクダウンした『アナ雪』だったが、翌週・7週目から「3D日本語吹き替え上映」と「みんなで歌おう♪ver.」が公開され首位に返り咲き。話題が話題を呼び国民の認知度が最大限に高まった時期に運良くゴールデンウィークが重なり、劇場に観客が訪れたことで8週目では春休み映画にも関わらずゴールデンウィークに最高潮を迎えて、興行収入159億円を突破した。またこの年のゴールデンウィーク興行は『名探偵コナン 異次元の狙撃手』『テルマエ・ロマエⅡ』『アメイジング・スパイダーマン2』『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』『相棒 劇場版III 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ』と話題作品が集中していたことから、劇場の雰囲気も週末動員ランキングも大盛り上がりだった。

 

 

  • 『タイタニック』を抜けなかった理由

タイタニック (吹替版)

ゴールデンウィーク興行が終わった時点で興行収入160億円近くに達していた『アナ雪』は200億円超えへの期待の声が高まっていた。実際、本作はゴールデンウィーク興行が終了し、上映スクリーンが30近く減った10週目でも週末興行で8億円を稼ぐ衰え知らずで、興行収入210億円を突破した12週目も週末興行約7.59億円と当時日本興行収入歴代2位だった『タイタニック』の興行収入262.0億円も十分射程範囲のペースを維持していた。一方で『アナ雪』は13週目から大きくペースを落とし、14週目には前週から34%落とす週末興行約3.92億円となり、『タイタニック』超えが怪しくなってきた。この背景にはBlu-ray/DVD/配信のリリース発表があった。つまりは「ソフトが発売されるなら、別に映画館まで観に行かなくてよくね」と思われてしまったという訳だ。

マレフィセント (吹替版)

そして7月に入った17週目には同じくディズニーの『マレフィセント』が公開されて、首位陥落。そしてその2週間後にはソフト発売の影響もあってか、動員ランキングトップ10から呆気なく姿を消して、二度と浮上することはなく、上映は終了した。もし『アナ雪』が日本映画ならソフトの発売を遅らせて記録更新を狙った可能性もあったのだろうが、そこはアメリカの大企業・ディズニー。日本という島国での興行記録更新などには眼中にないと言わんばかりに、新作『マレフィセント』にスクリーンを明け渡し、予定通りの日程でソフトを発売。実際、ウダウダと上映を続けて記録を伸ばすより、サッサっと新作に切り替えて、過去作は盛り上がっているタイミングでソフトを発売して売り飛ばした方がビジネス的にも正解なのだろう。個人的にここで日本とは違う、アメリカ及びディズニーの圧倒的な合理的判断による価値基準を見せつけられた気がした。

 

 

  • 最後に…

『アナ雪』メガヒットの理由は「レリゴー」のヒットだが、「レリゴー」ヒットの背景にはスマホの普及により一般人のYouTubeのアクセスが日常になり、そこを利用した宣伝戦略が上手くいった点にあるのだろう。『アナ雪』のメガヒット以降、ディズニーの長編アニメ映画は『ベイマックス』が91.8億円、『ズートピア』が76.8億円、『モアナと伝説の海』が51.6億円、『シュガー・ラッシュ:オンライン』が38.6億円とピクサーと遜色ないヒットを記録するようになり、2019年には待望の続編『アナと雪の女王2』も興行収入133.6億円のメガヒットとなった。そのため、これからもディズニー映画が映画館を盛り上がってくれると期待がかかる中、2020年世界は新型コロナによるパンデミックが起き、ディズニーは映画館ではなく自社の動画サイトでの配信を選んだ。一方で最近は再び映画館での上映も再開しているようで、今後の動きにも注目だ。

 

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