スポンサーリンク

『リーガルハイ』『コンフィデンスマンJP』に通じる「自殺したアイドルの死の真相探る」古沢良太脚本『キサラギ』の真実とオチ

キサラギ [DVD]

古沢良太脚本作品『リーガルハイ』『コンフィデンスマンJP』の原点的作品『キサラギ』の真実もオチは…

 

  • 古沢良太脚本作品とは…

ALWAYS 三丁目の夕日

相棒 season4 DVD-BOX I

古沢良太とは2002年に『アシ!』で第2回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞を受賞しデビューした脚本家。その後、2005年公開の山崎貴監督作品『ALWAYS 三丁目の夕日』で日本アカデミー賞で第29回最優秀脚本賞を受賞。同年からはテレビ朝日の人気ドラマ『相棒』シリーズの脚本も手がけ、その後も2011年放送の長谷川博己主演『鈴木先生』や同年から公開の大泉洋主演『探偵はBARにいる』シリーズなどで高い評価を得る。

リーガル・ハイ DVD-BOX

エイプリルフールズ

古沢良太脚本作品の魅力が世間一般に大きく浸透するキッカケとなったのが、2012年放送開始の堺雅人主演『リーガルハイ』シリーズ。本作以降は2015年公開の戸田恵梨香主演『エイプリルフールズ』や同年放送の杏主演『デート〜恋とはどんなものかしら〜』、2017年公開の新垣結衣主演『ミックス。』など「あの『リーガルハイ』の脚本家が送る」というフレーズが宣伝文句としてほぼ必ず表示されることになる。

コンフィデンスマンJP Blu-ray BOX

「GREAT PRETENDER」CASE 1 ロサンゼルス・コネクション [Blu-ray]

そして古沢良太脚本作品の人気が決定的になったのが2018年放送開始の長澤まさみ主演『コンフィデンスマンJP』シリーズでテレビドラマ放送当時の視聴率こそ全話一桁と振るわなかったが、翌年以降放送また公開されたスペシャルドラマや映画版は視聴率・興行収入共に大ヒット。また2020年にはテレビアニメ『GREAT PRETENDER』、2023年は松本潤主演のNHK大河ドラマ『どうする家康』の脚本を担当するなど幅広い分野での活躍を見せ、今や日本を代表する脚本家の1人と言える存在となった。

 

 

  • アイドルの自殺、死の真相を探る

f:id:MJWR9620:20220105125441p:image

そんな古沢良太脚本の原点的な立ち位置となるのが、2007年公開の小栗旬主演映画『キサラギ』で、小規模公開ながらネットで口コミを集めて興行収入4.1億円を記録した作品。ストーリーは自殺したマイナーアイドル・如月ミキの一周忌にファンサイトを通じて集まった5人が、死の真相を探る物語。

公開当時は張り巡らされた伏線が、物語が進むにつれて次々と回収されていき、集まった5人の素性とアイドルの死の真相を描いた脚本に絶賛評が集まったという。一方で個人的に古沢良太脚本作品は「散りばめられた伏線の回収は割と強引」かつ「物語の大前提となる設定すら終盤で盛大にちゃぶ台返しする大胆さ」が特徴の作品(そこを自分のように魅力と捉えるか、バカバカしいと捉えるかで評価が割れる)であり、本作も前者の傾向がかなり強い。そのため本作の脚本を「別に上手くない」と評されるのも理解できる。

以下ネタバレ

また「アイドルの死を美談として描いているのが受け入れ難い」というのも分かる。ただ個人的に本作は「アイドルの死の真相を探る上手い脚本」というよりは「自身が好きなアイドルの自殺を受け入れきれない5人がそれまで提示された要素を元に多少強引にでも、そうでない可能性を探ることで救いを求めるという気持ち悪くも人間らしい話」だったのではないかと思う。そのため劇中でも「なんか無理矢理な気がする」「あまりに都合のいい仮説だ」という反論に対して「都合のいい仮説で何が悪いんですか?みんなが一番納得できる仮説です」「実際何が起きたかなんて今となっては誰にも分からない」というやり取りがある。

 

 

  • オチから考える「真実なんて分からない」

f:id:MJWR9620:20220105150913j:image

また本作はオチで新たな証拠を提示した上で「他殺説」を浮上させる。これは「特に意味のないオマケ」という話もあり、実際そうなのかもしれないが、個人的にはやっぱり「彼らが導き出したアイドルの死の真相は絶対的な真実ではなく、自殺を受け入れきれない人たちが自身を納得させるために作り上げた仮説の域を出ない(だからと言って真実でないと明示する訳でもない)」ことを示すことで、「伏線回収の強引さは意図的」かつ「そうやって自分たちに都合のいい話を作り上げて納得させることで生きていくのが人間の愚かさであり魅力」ということを描きたかったのではないかと思う。

リーガルハイ・スペシャル2 Blu-ray

コンフィデンスマンJP ロマンス編

そして、こうした「張られた伏線を強引に回収して物語を作っていくスタイル」と「絶対的な真実は分からない」という古沢良太脚本の根底にある要素が、真実とは関係なく依頼人を徹底的に庇う『リーガルハイ』では弁護士ドラマの「皮肉」として上手く機能し、『コンフィデンスマンJP』ではフィクションラインが高く主人公らが詐欺師故に「物語の設定の大前提のちゃぶ台返し」も含めて魅力として最大限発揮されたことから、古沢良太脚本を代表する作品になったのではないかと感じた。

 

 

  • 最後に…

『キサラギ』は『踊る大捜査線』で公開当時は青島の部下であるユースケ・サンタマリアがオダ・ユージというハンドルネームで同ドラマの名セリフを吐くなど、『リーガルハイ』の堺雅人に『半沢直樹』ネタや『コンフィデンスマンJP』の長澤まさみに『ドラゴン桜』ネタをやらせた俳優ネタも存在する。最後に古沢良太脚本作品の「張った伏線から強引に真実を導き出すことで、自身を納得させ生きていく人間を描くスタイル」はデヴィッド・フィンチャー監督の『ゾディアック』等にも通じるものがあると思った。

 

  • 関連記事

後日追加