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『魔術列車殺人事件』に始まり『露西亜人形殺人事件』で終わり『決死行』をやらなかった松本潤版ドラマ『金田一少年の事件簿』

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ドラマ版『金田一少年の事件簿』の再放送が決まったので、堂本剛版から山田涼介版を振り返りたいと思う。今回は2代目・松本潤版の話。

 

  • 神秘的でスタイリッシュなミステリーも…

堂本剛版が堤幸彦監督の独特なカメラワークや過剰なカット割などを駆使した映像表現が多くの人の心を掴み大ヒット作品になった一方で、松潤版の影は薄い。そもそも2代目というのは初代が絶対的な評価を得たからこそ継がれるものであるが、その期間が短ければ短いほど、その絶対的な評価を得ている初代との比較が避けられない。そのためどんなにフラットな目で見ても「悪くないけど、初代のが好きかな」という結論に陥りやすい。

第34話 魔術列車殺人事件 ファイル2

一方で松潤版は堂本剛版とは異なる世界観を提供しようという心意気が出来上がったドラマ作品からは伝わってきた。堂本剛版の演出は大仰な音楽や演出によってドンドコ盛り上がっていくタイプのドラマで、事件の舞台となる学校や村、館なども現実世界とは地続きではない浮世離れした感じがあった。そのため堂本剛版のイメージカラーが「黄色」なら松潤版は「銀色」と言った感じの地に足ついた、それでいて何処か神秘的な雰囲気も感じさせるスタイリッシュなミステリードラマ、というか「2サス(2時間サスペンス)」味を感じた。これはドラマ化した事件のタイプや剣持役が内藤剛志であることも影響しているのだろう。それ故に「上品なミステリーを楽しんでいる心地よさを味わい」とか「1人でお酒を飲みながら心の隙間を埋めたい寂しい夜に見るドラマ」としては全シリーズの中で1番オススメ出来る作品かもしれない。ただ、そうした「地に足がついた感じ」「神秘的な雰囲気」「上品さ」は「地味さ」と表裏の関係になっており、堤幸彦監督の過剰演出が施された堂本剛版と同じものを求めてしまうと、物足りない感じがしてしまう。

 

 

  • 原作と異なる金田一と美雪のキャラクター設定

第140話 露西亜人形殺人事件 ファイル2

また松潤版は堂本剛版では基本原作準拠だった女好きなお茶らけたキャラクターが、クールキャラクターに変更。その上、連ドラ版では「お寿司をお腹いっぱい食べて満腹になる」などの妄想をエピソード毎にするという謎の設定が追加されている。勿論、原作の金田一も妄想はよくするが、それは基本的に美雪を筆頭とした女の子絡みのエッチな妄想なので、それとはまた違う謎の妄想設定には「?」という感じは否めなかった。また美雪も原作での優等生設定はなくなり、何処かキョトンとした幼い感じのちょっとウザったいキャラクターに変更。更に当時松潤が17歳だったのに対して鈴木杏は14歳と、ルック的にも「同年齢の対等な幼馴染」というよりは「兄妹」という感じ。尚且つ前述したように金田一がクール設定になったことと、美雪の優等生設定が消えたことで「金田一がバカなことをやって、美雪が『はじめちゃん!』と叱る」みたいな原作のワチャワチャ感もなくなり、謎解き以外の場面でも両者のパワーバランスが基本的に「金田一>美雪」のため、なんとも言えない「コレジャナイ感」が半端ないことになっていた。ただ原作の美雪のことを考えなければ、鈴木杏の演じる美雪のキャラクターを可愛く感じる人も少なくないと思えるくらいには魅力的。

 

 

  • 高遠遙一と『金田一少年の決死行』

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また松潤版は堂本剛版には登場しなかった「芸術的な殺人」をプロデュースする「地獄の傀儡師」こと高遠遙一の初登場回『魔術列車殺人事件』を連ドラ放送前のスペシャルドラマで実写化している。そのため1〜2話完結の単発事件を繰り返すだけの堂本剛版と異なる、「地獄の傀儡師」の縦軸とした連ドラが出来たはずだ。しかし「地獄の傀儡師」は連ドラ版では原作登場事件である『速水玲香誘拐誘拐殺人事件』には未登場で最終エピソード『露西亜人形殺人事件』でいきなり再登場する謎構成。しかも原作にある高遠が犯人を殺さなかった理由も語られず、金田一との決着も中途半端な形となった。

金田一少年の事件簿 File(26) 金田一少年の事件簿 File (週刊少年マガジンコミックス)

ここからは推測だが、松潤版の製作陣は堂本剛版同様に映画で完結編を公開することを考えていたのではないかと思う。実際、原作では『露西亜人形殺人事件』後に1事件挟んで『金田一少年の決死行』という第I期完結編が描かれている。この事件では『露西亜人形殺人事件』で金田一が宣言した通り、「じっちゃんの名」だけではなく「オレ自身の誇り」にかけて、高遠と最終対決をする物語であり、尚且つ露西亜館のマジックミラー越しの金田一による美雪へのキスのその先が描かれる完結編に相応しいエピソードである。また事件の舞台が香港なので、堂本剛版の映画『上海魚人伝説』同様に海外ロケを敢行できる設定なので、松潤版の製作陣としても堂本剛版をなぞる形で映画版で完結編の公開を考えていたのに色々な事情で実現できなかったのではないかと思う。そう考えると、連ドラ版の「消化不良感」というか「途中で終わってる感」にも納得がいく。

 

 

  • 最後に…

色々書いたが、ドラマ自体の単体の出来としては原作の事件が面白いこともあって、原作や堂本剛版に引っ張られ過ぎなければ、ミステリードラマとして純粋に楽しめるクオリティ。一方で『金田一〜』シリーズと切り分けて考えた時に積極的にオススメしたいかと問われると「うーん…」みたいなところもあり、総合的に「面白くはあるけど…」くらいの微妙な評価に個人的にも世間的にも落ち着いている感じはする。

 

次回は3代目・亀梨和也版のドラマの話。

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