『ザ・バットマン』が公開されるので、歴代『バットマン』シリーズを興行収入を軸に個人的な雑感を交えながら振り返る。今回は「DCEU」の2作品。
- バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生
ノーラン監督が「贅沢な時間」「最後の時代」と述べたように『ダークナイト ライジング』の次の作品は「DCエクステンデッド・ユニバース」の第2弾として公開された『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』だった。本作はタイトル通り、DCコミックスを代表する2大ヒーローのバットマンとスーパーマンが夢の対決をする話、ではあるのだが、MCUのように1作ずつヒーロー単体映画を作った上での対決ではなくスーパーマンの単独映画『マン・オブ・スティール』の後いきなりバットマンの単独映画の公開なしで新規お披露目のバットマンとスーパーマンが闘う話となっている。そのため夢の対決であるはずなのに、同じ画面に二人が揃った時の感動や驚き等が薄く、何処か既定路線のものを見せられている感が否めなかった作品。
というのも、この手の作品の垣根を越える系映画、端的に書けばコラボ映画というのは「自分たちがよく知るキャラクターが、自分たちのよく知る別の街に登場したり、自分たちとよく知る別のキャラクターと共演する」のが醍醐味であり、そこに喜びを覚えるものだ。しかし本作はバットマンの単独映画をやっていないので、バットマンの初登場時は記号に等しい存在で「あのバットマンがスーパーマンの世界に!?」感は薄い。
映画をさらに面白くするネタ⑤
— バットマン vs スーパーマン (@BvsSjp) 2016年4月5日
バットマンが活躍するゴッサムシティとスーパーマンの拠点メトロポリスの位置関係について。https://t.co/mzew5iuT4I pic.twitter.com/HQGI1fCMww
またアメコミの知識が希薄な自分としてはスーパーマン及びメトロポリスは「明るい」、バットマン及びゴッサムシティは「暗い」というイメージがあったが、本シリーズではスーパーマンも『ダークナイト』以降の暗い方向でのリアル化がなされているため、ネガティブな意味でバットマンが初登場時からスーパーマンの世界に馴染み過ぎていてコラボ映画特有の初期のフレッシュさに欠ける作品となってしまっていた。そのため個人的には暗い方向でリアル化志向でスーパーマンをやるなら、バットマンの単独映画を、そうでないならスーパーマンはもう少し明るい方向でやってバットマンと差別化を図った方が良かったのではないかと思う。勿論、シリーズを通して画面が統一されていると捉えることもできるが…
そんな本作の全米での興行は製作費2.50億ドルに対して3.30億ドル、世界興行8.73億ドルの大ヒットを記録。日本でも興行収入18.6億円と一定の記録を残した。
一方で同年は本作公開の約1ヶ月後にキャプテン・アメリカとアイアンマンが対立するMCU作品『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』というコンセプトが似た映画が公開。こちらは作品を積み上げた上での対決かつ『シビル・ウォー』の着地点的に対して『バットマンvsスーパーマン』の「ヒーロー対決の後により大きな共通した敵が登場することで両者が共闘する」というヒーロー対決モノの典型的な着地点だったことも安っぽいものに見えてしまった感はあった。
更に『シビル・ウォー』は大目玉として初登場したスパイダーマンの活躍はセーブが効いていたが、『バットマンvsスーパーマン』の3人目のヒーロー・ワンダーウーマンの登場はそれまでの二人の対決を全て持っていってしまうほどの魅力で、両者の名前をタイトルにした映画としては「…」な感じ。一部ソフトのパッケージは二人を差し置いてワンダーウーマンがセンターのものも登場する始末だった。
Batman v Superman: Dawn of Justice - Box Office Mojo
- ジャスティス・リーグ
ここでは『スーサイド・スクワッド』の話は飛ばして単独ヒーロー映画2人各1本のみの公開でヒーロー6人が集結する集大成映画『ジャスティス・リーグ』を公開。土台をシッカリと作らずに突貫工事的に作られた集大成映画は製作費約3億ドルと多額の予算を注ぎ込んだという報道もある中で全米興行は2.29億ドルと製作費を大きく下回り、世界興行も6.57億ドルと惨敗。日本でも「この映画、超人だらけ。」「オンリーワンが集まれば、世界も救える。」とのキャッチコピーで公開されたが、ヒーロー6人中半分が「誰?」状態だったからなのか興行収入11.0億円と他の同ユニバース作品と比べても低い水準。ヒーローと製作費を増やした結果、興行収入が下がるという地獄みたいな状況となった。
ただ世界的にはともかく日本ではMCUの集結映画『アベンジャーズ』の方が、公開当時アイアンマン以外は興行収入10億円以下の「誰?」状態かつアイアンマンも当時の日本でスーパーマンとバットマンと同等の知名度があったかと問われればそうでもなかったような気もする。そう考えると改めて「日本よ、これが映画だ。」で超大作感を煽って興行収入36.1億円のヒットに導いたのは凄かったな、と感じる。
Justice League - Box Office Mojo
追加撮影の影響?「ジャスティス・リーグ」の制作費は約3億ドルと報道
- 最後に…
今回の記事、特に後半は「DCエクステンデッド・ユニバース」の話ばかりであんま『バットマン』と関係なかったな、と書きながら思った。
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