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【上映時間の大半が戦闘シーン】「羌瘣」と「夢」を軸にして「蛇甘平原編」を実写映画化、『キングダム2 遙かなる大地へ』感想

映画チラシ『キングダム 遥かなる大地へ』5枚セット+おまけ最新映画チラシ3枚

山崎賢人主演・佐藤信介監督作品『キングダム2 遙かなる大地へ』を観た。

 

  • 推定製作費14億円以上、実写邦画の限界突破

原泰久先生による同名漫画は古代中国の春秋戦国時代を舞台にした戦争マンガ故に、その壮大なスケールから長年「日本での実写化は不可能」という認識が一般的だった。しかし2019年に公開された『キングダム』1作目では興行収入40億円を最低ラインとして、今世紀最高額ともいえる製作費を注ぎ込むことで実写映画化に成功。興行収入も57.3億円と2010年代に公開された人気漫画の実写映画化作品で4番目の記録的大ヒットとなり、日本アカデミー優秀作品賞等にノミネートされるなど、興行的にも批評的にも大きな結果を残した。本作はそんな大ヒット映画の続編であり、プロデューサー曰く「普通の邦画5本分の製作費」だった前作に対して本作は「普通の邦画7本分の製作費」を注ぎ込んだ、文字通りパワーアップした続編となっている。勿論、お金をかければ良い映画が出来る訳ではないが、大作なら150〜300億円、小規模作品でも50億円前後が注ぎ込まれるハリウッドのアクション映画に対して、最高でも10億円ちょっとの予算が限界の実写邦画だと、「VFXや現場の美術のクオリティ」「エキストラの数」などにどうしても差は生まれるし、その差を同じ予算で埋めようとすれば現場がブラックになるという悪循環。そうなるとお金をかけた前作が大ヒットして、更にその続編ではよりお金をかけてもっと良い映画を作ろうとして、それを実現したという事実がまず素晴らしい。シリーズを重ねるごとに製作費を増やしていった実写映画版『るろうに剣心』シリーズの正統な進化作品といえるだろう。

 

※1作目の『キングダム』の製作費が「二桁億円」と最低10億円であることは確定しているので、続編である本作は最低でも14億円の製作費がかかっていると推測される。

 

 

  • 上映時間の大半が戦闘、乗馬アクションも披露

前作は原作の1〜5巻にあたる『王都奪還編』をロードムービー形式でまとめていたが、続編である本作は原作の5〜7巻にあたる『蛇甘平原編』が実写映画化されている。これは主人公・信の初陣を描いた章であり、殆どが戦場のシーンを占めているが、実写映画版でも同様に上映時間の大半が戦闘シーンで埋め尽くされているとんでもない作品になっている。そのため、本作は常に画面いっぱいの迫力ある戦闘シーンが映し出されると共に、怒声と戦闘音が鳴り響く、良い意味で「観ていて物凄く疲れるマイケル・ベイ監督型のアクション映画」に仕上がっている。また前作では王都という閉じられた空間でのアクションが見せ場となっていたが、本作では殆どの場面が敵も味方も大量に混じり合う屋外での戦争シーンであり、更に前作ではショボいCGで処理されていた乗馬状態でのアクションシーンを主演の山崎賢人がノースタントで披露しているのも見応えがあり、画面からは常に「お金をかけて、大スクリーンに見合う大迫力の映像を作るんだ!」という製作陣の気合いが伝わってくるような作品になっていた。

 

※本作は原作3巻分を一本の長編映画にまとめた作品だったが、今年公開された『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』は大量の原作を一本の長編映画にまとめた結果『ハガレンRTA』と揶揄された

 

 

  • 「羌瘣」と「夢」を軸に実写映画化

一方で原作の『蛇甘平原編』をそのまま実写映画化しようとすると、戦闘シーンばかりのメリハリのない作品に陥ってしまう危険性があった。しかし本作では原作では『蛇甘平原編』完結後に語られる羌瘣の過去を物語の中盤に明かし、原泰久先生発案の実写映画版オリジナルのテーマである「夢」を軸に作品全体が傷ついた羌瘣の心の再生を描く物語となっていたのは、上手いまとめ方だったのではないか、と感じた。予告編で擦られまくったことで一部ではネタにされていた「無理じゃない、だってお前はまだ生きてるじゃないか!」も羌瘣の過去も相まって中々良いシーンだったように思う。

 

※羌瘣役の清野菜名さん、『キングダム2』が公開されたことでようやく予告編の「無理じゃない、だってお前はまだ生きてるじゃないか!」から解放されたと思ったら、今度は『耳をすませば』の「分かってるけど分からないんだよ、自分がどうすればいいか」が始まったのは笑った

 

 

  • 最後に…

2023年に『キングダム3』の公開が控えているということなので、今から楽しみにしたい。

 

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