スポンサーリンク

原作とは異なるスタジオジブリ『耳をすませば』の『カントリーロード』と「月島雫が小説を書き始める理由と書き終えた後」

耳をすませば [DVD]

スタジオジブリ作品『耳をすませば』の原作漫画を読んだ。

 

 

  • 原作にはない『カントリーロード』

f:id:MJWR9620:20220818230231j:image

『耳をすませば』はスタジオジブリオリジナル作品の印象も強いが、実際は少女漫画をアニメ化した作品。原作漫画を読んでみると、アニメ版と大筋の物語ラインは同一ではある。一方で主人公の月島雫が恋をする天沢聖司の将来の夢はアニメ版の「バイオリン職人」ではなく「画家」という設定。そのため原作ではバイオリンの描写はなく、『カントリーロード』も登場しない。アニメ版ではジブリ作品として珍しい夜景から始まる印象的なオープニングから『コンクリートロード』、それに本作の1番の見せ場と言っても過言ではない中盤のセッションシーンにエンディング曲と大活躍の『カントリーロード』だが、これはあくまでもアニメ版が追加した原作にない要素だった。これは既存のテーマ曲を使って作品をブランド化するジブリの戦略に見事にハマった結果なのかもしれない。

 

 

  • 雫が小説を書き始める理由

f:id:MJWR9620:20220818230316j:image

原作の天沢聖司に海外留学の話は出てこないが、アニメ版では高校卒業にイタリア留学をするために中学3年の後半の2ヶ月間西老人の知り合いの工房で見習いをする、という設定が追加されている。そのため原作では雫が小説を書くキッカケは天沢聖司の助言による受動的なものだったが、アニメ版では「決めた! 私物語を書く。書きたいものがあるの。あいつがやるなら、私もやってみる。」と 「天沢聖司が見習いをしている間に自分も小説を書いて、彼に並びたい」という想いから小説を書き始めるという能動的な展開になっている。また原作から主人公たちの学年が中学1年生から3年生に変更されており、尚且つ上述した通り「天沢聖司が見習いから帰ってくるまでに小説を一本書き上げて対等な関係になりたい」という条件設定により「小説執筆期間」と「高校受験に使う内申点に強い影響を与える中間試験」が被り、小説を優先した雫の成績が下がり家族会議になるという展開も追加。雫の「今後の将来にダイレクトに影響するテストを差し置いても、今やらなきゃいけないことがある」という覚悟と青さが描かれた。更に父親による「人と違う生き方はそれなりにしんどいぞ。何が起きても誰のせいにもできないからね。」という名言も生まれ、恋愛メインの原作とは違って「何者でもない若者が他人の影響を受けて何者かになろうとする青春物語」となった。

 

 

  • 最後に…

f:id:MJWR9620:20220818230354j:image

最後に本作では原作にない要素として雫が小説を地球屋の主人に見せるという展開も追加されている。鍋焼きうどんを2人で啜る描写もアニメオリジナルだ。雫は地球家の主人の前で「私、書いてみて分かったんです。書きたいだけじゃ、ダメなんだってこと。もっと勉強しなきゃダメだって…」と自身の想いを口にする。原作では小説を書き終えて自己完結していた雫だったが、アニメ版ではその先を感じさせる描写となっている。これも本作に奥行きを与えている部分なのだろう。

 

  • 関連記事

mjwr9620.hatenablog.jp

mjwr9620.hatenablog.jp

mjwr9620.hatenablog.jp