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尾田栄一郎総合プロデューサー『ONE PIECE FILM RED』の「ウタ」と細田守監督『竜とそばかすの姫』の「すず(ベル)」の決定的な違い

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ネタバレ注意

大ヒット公開中の『ONE PIECE FILM RED』は昨年夏に公開された細田守監督『竜とそばかすの姫』に似ている。

 

  • ウタとすずの共通点

竜とそばかすの姫

まず『ONE PIECE FILM RED』のウタも『竜とそばかすの姫』のすずも自分が親に捨てられたと思って心に深い傷を負っている。ウタはどうして自分がシャンクスにエレジアに置いてけぼりにされたのかが分からないし、すずもどうして母親が自分を置いて見ず知らずの子供のために氾濫する川に入っていったのかが理解できない。そんな辛い心理状況で長年過ごしてきた2人を救ったのは共に自身が大好きな「歌」だった。ウタは「不特定多数に念波を発信する電伝虫」、すずは「全世界で50億人以上が集う超巨大インターネット空間の仮想世界〈U〉」で自身の歌を世界中に発信して、注目を集め、共にどこの誰かも知らぬ人の救いになっていった。

 

 

  • ウタにだけ生じた苦しみ

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こうして徐々に傷を癒していく2人だったが、ウタとすずの顛末は真逆のものとなる。これはウタが世界中が歌姫と認識されるようになった後に自分のアンデンティかつ大好き「歌」によってエレジアを滅ぼしてしまっていたこと、そしてそれをシャンクスが泥をかぶる形で自身を庇ってくれていたことに気づく。しかし既にウタは「海賊嫌いの歌姫」として崇められていたことから、今更ファンの期待を裏切ることもできず、「歌姫としてのウタ」と「シャンクスに会いたい本心」の乖離に苦しむようになる。

 

 

  • ウタとすずの決定的な違い

第1030話 新時代の誓い!ルフィとウタ

ただ個人的にウタとすずの運命を決定的に分けたのは「ウタが過去に歌でエレジアを滅ぼしていた事実」ではなく、信頼できる人が近くにいたかどうかだったような気がする。シャンクスにエレジアに置いていかれたウタはゴードンとの二人暮らしで、尚且つゴードンはウタに真実を話せていないなど、両者の間には溝があった。一方ですずは孤独感を覚えてはいるものの、学校に通って同世代と集団行動を取っている。更に決定的な違いはウタは単独プレイだったのに対して、すずには「ベル」の正体を知り、プロデュース業を引き受けてくれる親友のヒロちゃんがいた。つまりすずには自身を客観視してアドバイスをくれる、悩みを相談できる相手がいたのだ。しかしウタにはそのような相手はいなかった。その結果、彼女の「歪み」はどんどん大きくなり取り返しのつかないところまで行ってしまった。

 

 

  • 最後に…

すずも「見ず知らずの子供のために自身がベルであることを証明するためにネット上で顔を晒す」「子供を虐待する父親のもとへ単独で向かう」など危うい場面も多かった。そしてこれらのすずの行動は全て自分の「歌」を聴いてくれた見ず知らずの人のための信念に沿った行動だった。その意味ではやはりウタとすずは似てる。そのため、ウタにも誰か信用できる人がいたら、もっと早くウタがルフィと再開していたら…、逆にすずにヒロちゃんがいなかったら…、などとちょっと残酷かつやり切れない気持ちになるようなことを考えてみたりもしてみる。それを言い始めたら終わりだよ、という話である。

 

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