テレビ朝日で放送中の『六本木クラス』は長屋会長を演じる香川照之の「性加害報道」後も放送継続を選択した地上波コンテンツだ。
香川照之は『週刊新潮』による「性加害報道」直後こそ「今まで通り」仕事を続ける、としており、実際関連各企業様子見状態で「このまま継続か」との空気も漂っていた。しかしいくら被害者側に許しを得ていると言っても事務所側が事実と認めた報道内容のことをしていたのなら、場合によっては刑事事件にもなりかねない行為。不倫報道で干された芸能人と比較しても「ペナルティなし」はおかしいとの声やその翌週には更なる追加報道もなされたことなどからトヨタ自動車を皮切りに次々と出演CMや番組の事実上の打ち切りが決定。その一方でテレビ朝日で放送中の『六本木クラス』のみが継続を決めた。この判断には「テレ朝は性加害を容認するのか」との批判もあるが、香川照之の降板ラッシュが起きた日の放送は既に全13話中9話目であったことなどを踏まえるとテレ朝及び関係者への同情の声も少なくないのではないか、と思う。
今回の件に限らず役者に関して不祥事が報じられた場合、大なり小なりリアルタイムで演じている役の見方にバイアスがかかってしまうのが世の常。被害者がいる問題故にあまりネタとして消費するのも良くないと思いつつ、翌朝『THE TIME,』で生謝罪をすることが発表されていた第8話で香川照之演じる長屋会長が自身の立場を守るために会見で心にもない謝罪パーフォマンスを見せるクライマックスには苦笑いさせられた。『半沢直樹』での大和田常務役以降、謝罪演技が鉄板となっていた香川照之にとって謝罪というのはそれだけで演技がかって見えてしまいがちなのに、よりにもよってのタイミングであった。
そして降板ラッシュとなった日に放送された第9話では主人公・宮部新から「まだあなたがのうのうとそこに居座ってる」「会長はまだ罪を償ってませんよね?」と迫られ、出演予定だった秋クール放送のTBSテレビ『日曜劇場』からの降板が発表された日に放送された第10話では長屋会長が「こうして一度信頼を失えば宮部が投資を受けるのは難しい。もがけばもがく程ダメージは大きくなっていく…」と説いていた。流石にゴシップ脳過ぎる、と思いつつもついついそういう目で見てしまう。そもそも本作は長屋会長が新田の料理店をどんな手段を使っても潰そうとする物語。それなのに今回の報道が1番のピンチになってしまったのはあまりにも笑えない話だ。
【追記】第11話目以降は長谷会長が病に倒れ余命宣告される中、最後の大勝負として新に立ち向かう姿も現在の香川照之と重なる切なさ
【追記2】最終回で追い詰められ、尚且つ土下座にすら価値がないと断言される役所、哀愁漂う名演技だけど、やはりメタ的に見てしまう
番組の公式Twitterを確認すると第10話以降の次回予告からは長屋会長の姿は消え、第9話までは毎回投稿されていた「#香川照之」の文字も消えた。これが番組側の最大限の配慮なのだろう。本来最終回は『半沢直樹』よろしく香川照之演じる長屋会長を前面に打ち出したプロモーションを目論んでいたと推測されるが、果たしてどのような形になるか… ストーリー以外の部分でも最終回まで目が離せないドラマとなった。
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