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MCU『ブラックパンサー ワカンダフォーエバー』と同日公開、新海誠監督最新作『すずめの戸締まり』の「上映回数」と秋興行の惨敗

すずめの戸締まり

新海誠監督最新作『すずめの戸締まり』の初週上映回数の多さが話題となっている。

 

  • コロナ禍以降急増、時刻表並みの上映回数

「まるで時刻表」、そう評されたのは2020年公開の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の上映回数。公開初日のTOHOシネマズ新宿の上映回数は42回に及び、劇場の大半のスクリーンをジャックした。この背景には公開当時の「洋画などの話題作品が次々と公開延期となり、ヒットを見込める作品がなかった」という状況に加え、「感染症対策として密を避けるために、動員数が見込める作品は複数のスクリーンで上映することで観客を分散させた方がいい」という免罪符があった。この傾向はコロナ禍以降初の夏興行『今日から俺は!!劇場版』『コンフィデンスマンJP プリンセス編』から始まり、秋公開の『鬼滅の刃』で極に達し、その後『劇場版名探偵コナン』シリーズ、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『劇場版 呪術廻戦0』『ONE PIECE FILM RED』など爆発的なオープニング興行が見込める作品では劇場側が時刻表並みの上映回数を用意することが定番となった。

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一方で特定の作品がスクリーンをジャックすることで、同時期上映の他作品が割りを食う、という問題点も指摘されている。またスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは『千と千尋の神隠し』公開当時のことを以下のように振り返っている。

『千と千尋』がスクリーンを独占してしまったことで、普通ならヒットが見込めたはずの他の映画が軒並み割を食ってしまったのです。

「『千と千尋』のような事態は二度と起こしてはならない」

興行界ではそんな話が出ているという噂が伝わってきました。もっと各社で協調して、いろんな映画に機会を与えるべきだというのです。日本の映画市場に訪れた本当の「自由競争」は一瞬で終わることになりました。

<出典:『ジブリの仲間たち』/鈴木敏夫/新潮新書/155・156P>

ここからは興行界の「メガヒット作品の一人勝ちを望んでいない、そうならないように自制していかなくてはならない」という考え方が読み取れる。しかしコロナ禍においてはこれまでかけられていたブレーキがなくなり、「自由競争」の時代に逆戻りした形だ。

 

 

  • 惨敗続きの2022年度秋興行

ただ劇場側が今回『すずめの戸締まり』に全振りしたくなった気持ちは分かる。というのも先週末の興行収入ランキングを確認するとトップは14週目の『ONE PIECE FILM RED』で、週末興行は1.23億円。また今年度の秋興行業を振り返ると大ヒットを記録したと言ってもいいのは9月中旬の『ガリレオ』シリーズ最新作『沈黙のパレード』の30億円前後くらいで、後は『カラダ探し』と『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ』が10億円突破するかも程度。『ヘルドッグス』『“それ”がいる森』『耳をすませば』『貞子DX』など他の作品は惨敗近い。こうなると劇場側が久々にヒットが見込める超大作に上映回数を多く振り分けた気持ちは理解できる。

 

※全国のシネコンが一律で上映回数が異常に多いことを踏まえると劇場側の判断というより配給側の意向の側面が強いのかもしれない

 

 

  • 『ブラックパンサー ワカンダフォーエバー』の不運

一方でそんな超大作と同日公開となったのがMCU最新作『ブラックパンサー ワカンダフォーエバー』、この秋の話題作が興行的に尽く惨敗続きだったことを踏まえると「態々『すずめの戸締まり』と同じ日に公開しなくても…」と思わなくもないが、こればかりは本国との公開日の関係で中々ズラせない事情があるのだろう。ただ『すずめの戸締まり』と同日上映となってしまったことで、IMAXはすずめと半々(これはすずめにとっても不運だが…)、通常上映の座席数の多い大きなスクリーンは基本すずめが優先と座先数を確保するためか上映回数そのもの自体は通常より多く用意されている印象も受けるが、中々残念な感じに… 日本でのMCUの動員は初動に偏るので、せめて1週間前に公開できなかったものか、とも思わなくもないが、そう簡単な話でもないのだろう。

 

※『ブラックパンサー ワカンダフォーエバー』も予告編込みで3時間近くある作品にも関わらず、TOHOシネマズ新宿の初日は複数のスクリーンで合計20回以上の上映が予定されているので、かなり多い

 

 

  • 最後に…

話題作の公開日が重なった場合、対抗作品に必要以上のヘイト向ける層が一定数存在する事実が残念だ。

 

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