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「クリスマスまで有料試写会のお正月映画」、興行収入100億円確実の新海誠監督『すずめの戸締まり』は『ハウルの動く城』モデルか

映画チラシ『すずめの戸締まり』別バージョン+おまけ最新映画チラシ1枚

2022年11月11日(金)、新海誠監督最新作『すずめの戸締まり』が公開された。

 

  • 新海誠監督史上No.1スタート!

『君の名は。』『天気の子』に続き3度目の興行収入100億円突破を狙う本作は前作に続き、公開前に最新作の新規映像付きで過去作品を地上波放送、企業とのタイアップCM、コラボ商品発売など大量宣伝を展開。また本作では9月末から『秒速5センチメートル』『君の名は。』『天気の子』の3本を「新海誠IMAX祭」と称して、IMAXで再上映をし、更には全国300万部限定の入場プレゼント『新海誠本』を配布。共通しているのは「新海誠」という名前押しで、ここからは「『君の名は。』の監督」ではなく「新海誠監督」と、名前をシッカリと覚えて貰おうという戦略が伺える。その上、コロナ禍以降一般的になった「時刻表並」の上映回数も用意した。

その甲斐もあってか本作の公開オープニング3日間の興行収入は18.8億円超と100億円突破の前2作品を超えて新海誠監督No. 1ヒットスタートを記録。不安にもMCU最新作『ブラックパンサー ワカンダフォーエバー』と公開日が被ったことで、IMAX上映を分け合う形となったが、それがなければ更なる上乗せもあり得たのだろう。

 

 

  • 11月公開、『ハウルの動く城』の戦略

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前作『天気の子』を超える体制で公開されたように見える最新作『すずめの戸締まり』だが、前作は7月中旬と映画興行が最も盛り上がる夏休み興行だったのに対して、本作は閑散期の11月中旬公開。今や新海誠監督最新作となれば熱心なファンでなくても、エンタメにアンテナを張っているタイプなら無条件で観に行く作家ではある一方で、国民的なヒットを狙うならやはりライト層が集まりやすい長期休みを狙うのが定石。「なぜ、こんな時期に?」という感じもするが、それは宮崎駿監督『ハウルの動く城』公開時の鈴木敏夫プロデューサーの戦略にヒントがありそう。

11月というお客さんが最も来ない公開時期を不安する声もありました。それに対して僕が言ったのが、「これはお正月映画なんだ」ということです。

「11月20日に公開するけれども、クリスマスまでの1ヵ月は有料試写会のようなもの。本当の勝負は12月から始まるんだ。」

<出典:『ジブリの仲間たち』/鈴木敏夫/新潮新書>

この戦略は、夏公開に間に合わなかった鈴木敏夫プロデューサーの苦し紛れの釈明とも捉えることができるが、実際『ハウルの動く城』は196.0億円(公開当時)の大ヒット。更に近年も『ファンタスティック・ビースト』シリーズや『アナと雪の女王2』、『STAND BY ME ドラえもん2』など息の長い興行を期待できる作品は11月中旬に公開しているケースが多い。これは公開1ヵ月も経てば殆ど息切れ状態になる普通の映画にはできない、限られた映画にのみ取れる戦略だ。そのため今回の『すずめの戸締まり』の公開時期も同様の狙いがあると推定される。特に現在はSNSの普及により、口コミの効果はより大きなものとなっており、本作の年末年始の興行推移はこの1ヵ月の盛り上がりにかかっているのかもしれない。

 

 

  • 11月公開で「国民作家」を証明

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閑散期である11月公開だった理由については「国内歴代最高興行収入を記録した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』同様に映画館のスクリーンをジャックして話題にしたかった、歴代トップクラスのオープニング興行を叩き出したかったから」という指摘もある。実際、「『鬼滅の刃』公開初日のあの空気を再び!」みたいのもあったのだろう。一方で『ハウルの動く城』の11月公開について、鈴木敏夫プロデューサーは以下のような振り返りもしている。

それ(11月という閑散期)にもかかわらず、公開直後の数字は『千と千尋』を超える勢いでした。そして、最終的には百九十六億円という『もののけ姫』を超える興行収入をあげます。それだけ世間の宮崎駿に対する期待が高まっていたということでしょう。『千と千尋』の大ヒットを経て、宮崎駿はある意味〝国民作家〟になっていた。そのことに、あらためて気づかされる結果でした。

<出典:『天才の思考 宮崎駿と高畑勲』/鈴木敏夫/文春新書>

そして『君の名は。』から新海誠監督をプロデュースする川村元気さんは『天気の子』公開当時に以下のようなことを語っている。

宮崎駿監督作品で言えば、(『君の名は。』で)『もののけ姫』(1997年) のようなことが起きてしまったわけだから、次に(『天気の子』で)狙うのは『千と千尋の神隠し』(2001年)。

『君の名は。』から3年 新海誠の新たなセカイとは? │ 【公式】「キネマ旬報」ホームページ / キネマ旬報WEB

この流れに沿うなら『すずめの戸締まり』で狙うのは宮崎駿監督にとっての『ハウルの動く城』、と書くと流石にやや飛躍も感じるが、それでも11月公開で夏休み公開の前2作品を超えるスタートとなったのは、やはり新海誠監督が「国民作家」として世間から認識されていることを裏付ける結果になった、といえるだろう。

 

 

  • 最後に…

『君の名は。』『天気の子』に続いて興行収入100億円突破が確実視される『すずめの戸締まり』、果たして次の作品は…

 

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