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【大盛り牛丼とカレーとケーキ】「信頼できる人との食事」と「エンディングの意味」、『エルピス』最終回ネタバレ感想

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『エルピス』の最終回が放送された。

 

 

  • 信頼できる人との食事

本作は長澤まさみ演じる落ち目の女子アナ・恵那が死刑判決が確定した冤罪疑惑のある事件の真相を追うことで自信を取り戻していく物語。ドラマ序盤の恵那はこの社会にある様々なことを飲み込み過ぎていたことで定期的に吐き気を催して、ロクに食事もできない精神状態。口にする飲み物も紅茶やコーヒーといった「色」のついたものではなく無色透明で綺麗な水のみだった。そして共に冤罪疑惑を追った眞栄田郷敦演じる新人ディレクター・岸本も物語が進むにつれて食欲が低下して最後は冷やし中華一杯を完食できないまでに追い込まれる。ただ本作のラストでは2人は笑顔で大盛りの牛丼をかきこむ。これはこれまで追ってきた冤罪疑惑を裏付ける証拠を突き止め、尚且つそれを報道できたことからであるが、そこに辿り着くことができたのは両者の信頼関係があったおかげ。劇中でも岸本が会社を解雇された際に「浅川さんがいてくれたから」、恵那も最終回で岸本の部屋で「岸本くんがいてくれたから」と両者はそれぞれがいてくれたからこそここまで辿り着けたんだ、と互いを信頼しあっている。今自分の目の前にいる人が信じられるというのは「希望」だ。逆に「信頼」がなければ人は生きていけないし、信頼できない人との食事は何処かぎこちなくなる。だから恵那は鈴木亮平演じる斎藤との食事では笑顔はなく、信頼し合っている岸本との食事は笑顔だったのだ。あの場に村井さんが呼ばれたのも2人にとって村井さんは本件を通して信頼できる人となったからだ。これはおじさんが逮捕された日に本来2人で食べるはずだったカレーとケーキを笑顔で食べるチェリーとおじさんにも当てはまる。

 

※大根仁監督は『モテキ』でも牛丼をかきこんでスッキリするシーンがある

 

 

  • エンディングの意味

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最終回までのエンディングは基本「恵那が笑顔でクッキング→しかしオーブンで温めると完成したのはダークマター→慌てふためく恵那をケーキを食べながら死んだ目で見つめるチェリー」という流れだった。まず「恵那が笑顔でクッキング」という描写は世間が持つステレオタイプな女子アナのキラキライメージを表現したものだろう。世間の多くは女性のアナウンサーにジャーナリズムではなく可愛さや爽やかさ、癒しを求めている。次に恵那の作った料理がダークマターとなったのは、「編集した映像により生み出された闇」、本作に当てはめるなら女児殺害事件の冤罪を指しているのだろう。テレビは常に作り物でその結果とんでもない闇が生まれてしまうことがあるのを表していた。そしてあの日おじさんと食べるはずだったケーキを食べながら死んだ目でテレビに映るその闇と慌てふためく恵那を見つめるチェリーは最早説明不要だろう。こうしたテレビへの不信感を高めた上で、テレビの作り手がテレビの批判をしながらも最後はテレビの僅かながらの希望を描く。最終回はこれまでのエンディングと異なり映像の編集画面だったが、これは「『エルピス』はテレビの作り手が作った作り物」ということの再確認だったのではないか、と思った。

 

※大根仁監督作品は『モテキ』『バクマン。』でも作品のテーマに沿ったエンディングが流れた

 

 

  • 最後に…

本作のラスト、恵那は岸本に「『正しいこと』をするのは諦めて、代わりに夢を持とう」と発する。実際いくら「正しいことをしたい」と言っても何が「正しい」のかを判断するのが難しい上に、その「正しさ」によって歪んだ果てに暴走した末路も何度も見てきた自分にとって、納得度の高い着地点だった。

 

 

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