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奈緒主演ドラマ『あなたがしてくれなくても』の「陽一がみちへプレゼントした花」と「冷えた料理を温め直そうすると誠」の意味

#1 【解説放送版】セックスレスがテーマ・・・大人の恋愛ドラマ

フジテレビの木曜22時枠で放送中のドラマ『あなたがしてくれなくても』が面白い。

 

  • 「セックスレス」がテーマ、メイン演出は西谷弘

本作は「セックスレス」がテーマのためか世代視聴率は一桁と低迷しているものの、配信での再生回数は木曜22時枠ドラマとしては『silent』に次ぐ勢いで伸びている作品。メイン演出は『ガリレオ』『昼顔』『シャーロック』などの西谷弘監督が担当しており、安定のクオリティを誇っている。

 

 

  • みちへのプレゼントの花は陽一のメタファー

例えば2話目の終わりから3話目、さとうほなみ演じる喫茶店のバイトの三島とキスをしてしまった瑛太演じる陽一は後ろめたさから妻である奈緒演じるみちに花を買って帰る。みちはその花に喜び、貰って直ぐに花瓶に水を入れて飾り、更に翌朝も水を入れる。するとそれを見た陽一は「水入れすぎると腐るよ」と何気なく発言する。おそらくこの花は陽一自身のメタファーなのだろう。つまり「水を入れすぎると腐るよ」は「『セックスがしたい』とプレッシャーをかけ過ぎると陽一はそれを負担に感じて不倫に走るよ」ということを暗示していたのだ。だから陽一は三島と一線を超えて家に帰った後に、その花を見て自身のセリフを思い出して「自分に反吐が出る」と更に水を投入することで溢れさせ、自身の自暴自棄な態度と重ね合わせていたのだ。またみちが花の棘で怪我をした理由もその花は陽一の後ろめたさ故のプレゼントなため、嬉しいものではなく彼女を傷つけるものだ、ということを表していたのだ。ちなみに三島が陽一が妻の風邪を理由に早退したのを知った後に、自身の足の血が滲んだ絆創膏を見ているのは、罪の意識とか後悔とか、もしくは奥さんへの嫉妬などのモヤモヤした感情がジワジワと浮き上がってきていることを演出していたのだろう。

 

 

  • 冷えた料理を温め直そうとする誠の演出意図

また岩ちゃん演じる誠と田中みな実演じる楓の夫婦関係を料理で演出しているのも面白い。本作初回のラストで岩ちゃんは揚げ餃子をタッパーに入れて冷蔵庫に保存して、楓に「ちゃんとお皿使って食べてね」とメッセージを送っていた。しかし楓は帰宅後そのメッセージを確認したにも関わらず、冷蔵庫で冷えた揚げ餃子をお皿に乗せることなくタッパーから直接手で取って食べていた。この料理描写から夫婦の「冷えた関係性」とそれをちゃんとしたい誠とそのメッセージに答えるつもりがない楓の心情が描かれている。つまり誠が結婚記念日の件の後に「温めて食べてね」とメッセージも虚しく冷蔵庫に保存されたままの料理を温め直すことなく冷たいまま食べたのは、彼の中で最早妻との関係を温め直す気が失せてしまったことを表していた。そのため誠はその後、みちと水族館デートとキスまでする一方で楓のための夕食は作らない。そしてこれまでは楓がいくら拒否しても「温め直す」と引き下がらなかった誠は、この日はアッサリと「じゃあ、寝るよ」と引き下がる。ここからも誠が楓との冷え切った仲を温め直す気がなくなっているのがビンビンと伝わってくる演出になっていた。それでいて風邪を引いたみちの家にお粥を「温め」に行こうとしているのだから恐れ入る。ただ陽一も自宅に向かっているので「一旦クールダウンして〜」という意味なのか「冷え熱シート」が大写しになるのも面白い。

 

 

  • 最後に…

そんなこんなで「流石、西谷弘監督がメイン演出」なドラマ(第3話の演出は髙野舞さん)だが、ストーリー自体も物凄く面白いので次回以降も楽しみだ。

 

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