7月25日より独占配信🏙
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) 2024年6月13日
Netflixシリーズ『#地面師たち』
不動産売買をエサに巨額の金を騙し取る詐欺師集団<地面師>による前代未聞の事件を描く。
◆監督 #大根仁
<地面師>
◆W主演 #綾野剛 #豊川悦司
◆#北村一輝
◆#小池栄子
◆#ピエール瀧@PierreTaki @hitoshione pic.twitter.com/MlZsUEZS9u
大根仁監督・脚本のNetflixオリジナルドラマ『地面師たち』を観た。
- 現実の事件を下敷きにした原作のドラマ化
本作は2017年に発生した積水ハウスが地面師グループに土地の購入代金として55億5千万円を騙し取られた事件を下敷きに新庄耕氏が執筆した同名小説を原作とした作品。実際の積水ハウスの事件は犯人グループ側の用意した偽の所有者が本人確認で干支どころか誕生日を忘れる爪の甘さを露呈していたり、積水ハウス側も残代金支払日に通報を受けた警察が担当者に任意聴取を要請したにも関わらず「妨害行為だ」と決めつけて、そのまま支払い手続きを完了してしまうなど、第三者視点からすれば両サイド「アホか」とツッコミたくなるような間抜けなヘマをしている訳だが、ドラマ版では犯人グループも騙される側もそれらを追う警察側も「切れ者」という設定で緊張感のある展開が披露される作品となっている。そのため本事件の詳細を知らずに「ドラマでは大企業が地面師に騙されてしまった経緯をあんな風に描いていたけど、実際の事件はどんな感じで、どこまで本当なんだろう…」と思って調べてみると「まー、現実ってこんなもんだよね…」みたいな気持ちにもなる。
- 犯罪、企業、警察モノを大根仁監督琉にミックス
『地面師たち』大根仁監督「犯罪もの・企業もの・警察ものって実はこれまで手を出してこなかったんですけど、この題材だったら自分なりのミックスができるかも/犯罪ものだからといってダークで重い映像ルックではなく、全体的にリッチでラグジュアリーかつPOPなもの(を意識)」https://t.co/CQhetMhKye
— ゴミ雑草 (@mjwr9620) 2024年7月26日
大根仁監督はインタビューで本作について「犯罪もの・企業もの・警察ものを地面師を題材にミックスした作品」と説明していたが、実際「地面師ら犯罪グループによるお仕事モノ」の要素もあれば、積水ハウスをモデルにした大企業内の社内政治を描く『半沢直樹』的『日曜劇場』の池井戸潤原作ドラマの要素もあり、更にリリー・フランキー演じる退職間近の老刑事・辰と池田エライザ演じる若手女性刑事・倉持のバディモノの要素もあったりして、とにかく「好きなモノ」が詰まっている感が半端ない贅沢な作品。それでいて地面師に騙される山本耕史演じる青柳のエリート会社員特有の嫌な感じ描写は「とても日曜劇場では放送できないよね」という演出。特に詐欺の契約を結んだ直後にホテルの窓から立ちバックをしながら「アレがオレの買った土地だ」と自らの力を誇示するシーンは最高だった。また濡れ場シーンという意味では2話目ラストで夫の裏切りから引き篭もっていると思われていた尼さんが実はホス狂いで、複数プレイをしながらカツラがズレ落ちていきながらエンドクレジットに入る流れも堪らなかった。それでいて『エルピス』に続いてインシマティ・コーディネーターを某作品と異なりちゃんと使用して撮影されてるので、映像の外側に対して余計な心配をしなくてもいいのも良い。映像も『エルピス』の上品さに加えて映画『SCOOP!』を思い起こすネオンの光から虚無を感じさせる乾いた雰囲気も醸し出されていて良かった。特に綾野剛演じる主人公・辻本が豊川悦司演じるハリソンと最終決着に向かう際の豪雨からの横断歩道奥の信号が赤から緑に変わるシーンは痺れた。他にも「喫茶店から長居を注意された張り込み中の辰が警察手帳を見せて納得させるシーン」「ハリソンが北村一輝演じる竹下の頭をクラッシュした際の血の海から泡がプクプク出る音」「辻本の差し入れの叙々苑弁当を食べる染谷将太演じるハッカー」「駒として利用する気だった病気の子供を亡くした借金持ちの母親にお金を置いて颯爽と去る小池栄子演じる手配師に忍び寄る始末屋たち」「青柳へのマウント同時に本気で心配して気にかけている様子も滲ませる松尾諭演じる同僚の塩梅」など「あそこ良かったよね」と語りたくなるような印象的なシーンが多かった。倉持が辰のパートナーである専業主婦を持ち上げるセリフ回しは大根仁監督の描く重要女性キャラらしさ全開で懐かしい気持ちにもなった。
- 現実から逃れるために嘘の世界へ
大根仁監督の作品は「追い求めていた理想の自分になれなかった人間の哀愁」みたいのが描かれる傾向にあるように思うが、今回の主人公・辻本も自分キッカケで父親と共に詐欺の被害にあい、そのせいで家庭崩壊にまで至ってしまった存在。辻本がラストで語る「現実から逃げて、嘘の世界を生きたかったのかもしれません」という地面師にのめり込んでしまったことへの釈明も大根仁監督作品の主人公らしさがあった。それでいて今回の一連の事件を追い続けたことによって殺された辰の意志を継いだ倉持に「犯罪です」と現実を突きつけられることで、これまでのことを過度にウェットな方向で美化せずに、ゆっくりと静かに現実を受け入れていこうとする辻本、という甘やかしも、突き放しもし過ぎない距離感の着地点も良かった。
- 最後に…
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そんなこんなで個人的には今年トップレベルに面白い作品だと思ったし、日本では既に結構評判でNetflixのコンテンツの中でもドラマ部門で1位を獲得しているというが、大根仁監督は今回の作品が本気で世界で大ヒットすることを狙っているみたいなので、日本だけでなく世界で多くの人に観て欲しい作品だな、と感じた。
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