『#室井慎次 生き続ける者』
— 『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』公式 (@odoru_movief) 2024年10月14日
🚨最新ポスター解禁🚨
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そして、君たちを、信じる。
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最新予告、ポスター、チラシは10/11(金)~
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🎬 #室井慎次
敗れざる者 上映中 生き続ける者 11.15… pic.twitter.com/8iVKAAB1Sj
ネタバレ注意かつ酷評寄り
フジテレビ製作、亀山千広プロデュース、君塚良一脚本、本広克行監督、柳葉敏郎主演『室井慎次 生き続ける者』を観た。
- 一本の映画としての満足度が低かった前編
【踊る大捜査線】事件は後編にほぼ丸投げ、警察を辞めて被害者・加害者家族と暮らす『室井慎次 敗れざる者』ネタバレ感想
— ゴミ雑草 (@mjwr9620) 2024年10月11日
→一本の映画としての満足度は低い、福本莉子演じる日向杏は魅惑的
- Junk-weed’s blog#室井慎次 #odoru #踊るプロジェクトhttps://t.co/4azOi3zH2S
本作は『踊る大捜査線』シリーズが12年ぶりに復活したスピンオフ作品の後編。先月公開された前編『室井慎次 敗れざる者』は熱心なファンの間では「『踊る』の時間が再び動き出した!」「懐かし過ぎて泣ける」など結構評判も良かったようだが、個人的には事件の導入部だけ描いて諸々のエピソードは基本的に後編に丸投げの構成だったことから一本の映画としての満足度はかなり低かった。また室井さんが里親をやっている被害者家族・タカの成長物語も「ハリボテの悪役にレッテル貼りして勝利」みたいな感じで「なんだかなあ」感は半端なかった。どうやら当初は映画ではなく亀山千広プロデューサーが社長のBSフジでのドラマ企画だったというので、そう思えば本作の複数のエピソードが細切れに語られる構成やある種のヌルさにも納得感はある。そんなこんなで前半については「かなり微妙」という評価をしていたが、そうは言っても何だかんだで日向真奈美やレインボーブリッジの事件が警察を辞めた室井さんにどういう風に絡んでくるのか、そしてサプライズで青島は登場するのか、など気になることも多かった。
- 亀山千広プロデューサーと本広克行監督の想い
「室井慎次」亀山P立ち上げた27年前、ここまで「想像せず」
— ゴミ雑草 (@mjwr9620) 2024年10月31日
→ 「若いプロデューサーには、荷が重いプロジェクトになってしまった/映画は過去のことだった/当たったことで、管理職になって映画を作れなくなった/(社長を)4年でクビになりBSフジへ…/室井の人生が分かる」 https://t.co/xYkzsSkRHO
また作品の評価とは別に映画を作ることを夢見た青年が日本映画界に革命を起こすも、そのことによって出世して映画制作の現場から離れざるを得なくなり、組織のトップにまで祭り上げられるも、今は同じグループの関連会社でサラリーマン人生の終着点を迎えようとしている亀山千広プロデューサーが自身と室井さんを重ねる姿や亀山千広プロデューサーに恩返しをしたいという本広克行監督の想いなどに触れると、やはり胸が熱くなるものがあり、「もしかしたら最後かもしれない『踊る』シリーズ最新作を劇場で見届けたい」という気持ちも強かった。SNSに投稿されたメイキングでの本広克行監督の涙や柳葉敏郎の演説も熱かった。
- 家族のドラマが雑過ぎる…
そんな『踊る』熱をある程度再燃させて鑑賞しに行ったが、前編に引き続き後編も中々残念な作品に思えた。世間的には「室井さんの家族ドラマとして良い」的な評価のされ方をしているが、個人的には「それならもっと丁寧にやって…」みたいなところはかなり多かった。例えばタカは母親が亡くなったことで「経済的な問題で進学は諦めなくちゃいけない」と前編では悩んでおり、室井さんには「高校卒業後もこの家に居ていい?」などと発言するなど大学進学は諦めて秋田で働くような進路を示していたが、後編では特に室井さんに相談することもなくSF小説を売って参考書を購入して大学進学に向けた受験勉強を始めたりしている。しかも赤本的に東大志望で上京する気も満々。勿論、室井さんの家を出て都会の大学に進学して自立すること自体は良いのだが、前編で悩んでいた学費などの目処についての説明シーンは(結果的には貯金があるが…)一切ない。普通の家族ドラマなら経済事情で進学を諦めようとしているタカの気持ちを察して室井さんサイドの方から「私は長年警察官僚を勤めていたから、お金には余裕があるんだ。だからタカが高校を卒業して直ぐに働きたいならそれも止めないが、お金のことを心配しているのなら大学でも専門学校でも好きなところに行っていいぞ」と寄り添う優しさを見せるとか、室井さんの家を出て都心の大学への進学を希望するタカに対して嬉しさと寂しさを感じる室井さん、とかいくらでも感動シーンを作れそうだが、そこら辺はタカの失恋描写など含めて本当に雑な感じになっている。
- リクの心情と行動がチグハグで飲み込みにくい
この雑な演出はリクの方がより顕著で、「子供は気まぐれ」では飲み込みきれない程、彼の心情の動きは理解不能だった。そもそもリクは前編を観た時点で「杏の家族崩壊作戦のせいで、リクは夕食の席につけないほど室井さんに不信感を抱いていたはずなのに、いつの間にか室井さんに再びスキンシップを取るようになったりしていて謎だ…」と思っていた。そのよく分からなさは後編にも引き継がれていて、父親からの暴力に怯えている設定のはずなのに、父親が室井さんの家に訪れると「パパー!」とハイテンションの笑顔で抱きつきに走っていて「えぇっ…」という感じだったし、その後杏による「室井さんにブタれた」という嘘をリクはずっと信じており、万引きやオネショで室井さんから怒られることを恐れていたことが発覚して更に「リクの心情と行動がチグハグ過ぎないか…」との想いが強くなった。そのため児童相談所で室井さんが「あの子は父親からの暴力によって、どこか怯える性格になってしまったんです」みたいな説明をしているシーンの説得力も薄かった。
- 「被害者・加害者家族」の物語へ着地してるが…
踊る大捜査線:本広克行監督、「THE FINAL」秘話
— ゴミ雑草 (@mjwr9620) 2022年6月1日
→プロデューサーの亀山さんにも脚本家の君塚さんにも言わなかった。言ったのは深津さんだけです
本広監督の中ですみれさんはラストのバスの突っ込みで死んでいて、それを知ってたのは深津絵里だけ 織田裕二も知らなかったhttps://t.co/C4E8ObVEvL
本作は「家族」がテーマだからなのだろうが、レインボーブリッジ事件の犯人が殺された事件の犯人(こちらもレインボーブリッジ事件の犯人)が室井さんの「被害者家族はずっと苦しむことになる、あんたにも家族がいるだろう」的な話で心を改めて容疑を認め始める、みたいな展開もケチをつけすぎなのかもしれないが「相手の家庭状況を把握してない段階での家族の話って割と地雷だし、お前もこのくらいの話で反省するならさ…」とついつい思ってしまった。勿論『踊る』の青島と室井の出会であり初対立は父親を殺された被害者家族・柏木を巡ってであり、『THE FINAL』で警察の腐敗を告発するために事件を起こした犯人の動機も「被害者家族故」と、シリーズの着地点として「被害者・加害者家族」にフォーカスするのは筋は通ってはいるのだが… また『THE FINAL』ですみれさんの死はグレー扱いで、本広克行監督は過去のインタビューで「自分と深津絵里さんの中ではあそこで死んでた、だからこそ言えたすみれからの青島への言葉なんだ」みたいな話にグッと来てたので、すみれさんが生きてることを明かされたのは嬉しい反面、「深津絵里さんの気持ちは…」的な想いも頭をよぎった。すみれさんの家族が「親」なのか、「結婚しての家族」なのか、後者ならそれは青島なのか、も気になるところだ。また犯人確保のシーンはお台場が舞台で本広克行監督は田舎より都心のシチュエーションのが得意な監督なのだな、とも改めて思ったし、映像的にも『踊る』らしさがあった。本広克行監督は山田洋次監督みたいな人情コメディをやりたいと言ってて、本作はその路線でやったんだろうけど、「それだと本広克行監督の魅力が存分に発揮できないのでは」感は強かった。
- 日向真奈美に洗脳されてた杏
唯一良かったのは母親の日向真奈美に「里親を困らせろ」と洗脳されていた娘の杏の一連の描写。前編に引き続き日向真奈美の不気味さをコピーしていて魅惑的だったし、母親の写真をスマホで見ている彼女を中心とした壮大な雪景色をカメラが引いていくシーンは、ダイナミックかつリッチに彼女の孤独な心情を表していて良かったと思う。また室井さんが杏に法律違反の猟銃を発砲させることで「人を傷つけてはいけない」と教えるのも、教育的には正しくないのかもしれないが、不器用な室井さんらしい躾の仕方で緊張感もあった。杏の手の震えている演技も良かった。ただ「人を傷つけるのではなく守るために使え」みたいなセリフとナイフを室井さんに預ける行動は若干ミスマッチ感はあった。また「ぶっちゃけ日向真奈美は室井さんより青島の方に執着しそうなイメージだけど…」という企画的な都合も感じたりした。
- 室井さん役からの開放が「死」の悲しみ…
亀山千広P「(脚本の君塚良一が室井慎次を再び書きたい一番の理由は)『柳葉敏郎さんを、室井役から解放してあげたい』/柳葉さんが、実は27年間、スーツを着た役・スリーピースを着た役・反社の役・強烈な犯人役の、出演をお断りしていたということは、僕も聞いておりました。」 https://t.co/w9MsORszgi
— ゴミ雑草 (@mjwr9620) 2024年11月8日
そのため家族描写は杏を除けば「…」だった訳だが、本作で一番複雑な気持ちになったのは室井さんの最期。正直、製作陣が「柳葉敏郎は室井の役のためにスーツを着た役・スリーピースを着た役・反社の役・強烈な犯人役を断っていたので解放してあげたい」的な発言や「最後の室井慎次」「あなたは、室井慎次の最後を目撃する。」というコピーから嫌な予感はしていたが、行方不明の飼い犬のシンペイを探しに行くために吹雪の雪山の中に消えていくシーンは「あぁっ…やっぱり…」と何とも言えない気持ちになった。「あそこまで室井さんの家に懐いていたシンペイが首輪を外されたくらいで、あの短時間でそんな遠くに行くか?」みたいなことは置いといても、あまり物語的にも「室井さんがこれまで背負ってきたモノを守るためとか償うための死」みたいのも薄いので「なんだかなぁ…」という気持ちが強い。胸の病気と死の因果関係も中途半端な感じ。大袈裟な「秋田犬が!離れません!」みたいな無線も「泣き笑い」を狙ってるのかもしれないが、滑ってる感はあった。「態々12年ぶりに復活させて、こんな死に方させなくても…」みたいなメタ的な視点での悲しみも大きかった。室井さんの理想が秋田県警から全国の警察でモデル化されていき、青島の元にも届き「みんなの心の中で室井さんは生き続ける」というラスト自体は熱くはあるし、「青島との約束に囚われた警察組織の一因ではなく家族を想う不器用な一人の男として最期を迎えさせたい」という意図だったのかもしれないが、やっぱり普通に「なんでこんなことに…」感が強い。柳葉敏郎さんを室井さん役から解放してあげたいにしても「もう少し何とかならなかったのか…」感は否めなかった。
- 最後に…
そんなこんなで何とも言えない後味の作品だったが、エンディング中のドローン撮影で虫の主観映像を見せるギャグは思わず笑ってしまった。ラストの青島はテンション上がったし、「やっぱりこっちのが華があるな」とも思ってしまった。もし青島が復活して続編があるとしても今度は「室井さんがいないからな…」みたいな気持ちになってしまうので複雑。ところで青島が室井さんの家に来たのは時系列的にいつなのだろうか。もし死ぬ前ならあそこまで行って会わなかったことをメチャクチャ後悔しそう(追記:スマホの電波が通ってるから死後との考察)だし、死んだ後なら「どうせ秋田から東京になんて簡単に帰れないのだから、手ぐらい合わせて帰れよ」感はあった。これも『踊る』らしい「サラリーマン刑事」としての外しギャグなのだろうが、そのまま何もせずに帰る外しギャグと見せかけて一度立ち止まって敬礼をする、みたいなグッとさせ方もあったのではないか。最後に普通に歳を取った警察組織内の青島と室井の『踊る大捜査線』の最新作が見たかった。青島やあの刑事とのきりたんぽの約束もどうなったんだよ… せめてあの刑事が室井さんの家で子供たちと室井さんの思い出に花を咲かせながらきりたんぽ鍋をつっついてる所に同じく約束した青島が…、的な展開ならしんみりしたかもしれない。SNSで「次は青島だな」と期待する投稿を見たが、君塚良一さんが「織田裕二を青島から解放してあげたい」とか言い出さないことを祈る。
- 追記
「エンディング後の車の運転をしてるのは室井さんで実は生きてるのでは」的な考察は一瞬自分も思ったけど、あのエンディング前の描写的に流石にないと思う。ただ仮に今後「実は生きてました」展開が来ても「まー、そういうこともやりそうだったよね」くらいに本シリーズへの信頼感は落ちている。多分、亀山千広プロデューサーも君塚良一さんも本広克行監督も心の底から真摯に室井さんの最期を描いたつもりなのだろう。
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前編で青島は警視庁捜査支援分析センターに所属しているというので、青島が秋田に設置された防犯カメの映像を解析して捜査が進展する、みたいな展開で登場するのかと期待したが、全然そんなことはなかった。