ドラマ『【推しの子】』を観た。
『【推しの子】』は原作:赤坂アカ、作画:横槍メンゴによる人気漫画。人気漫画の実写映画化となれば、それは実質炎上とセットみたいな所はあり、今回もコスプレ感溢れるビジュアルが初公開された時は批判意見の方が目立った。特に本作は劇中で「人気漫画の実写化」に対する批評的なエピソードがある(人気漫画の実写化自体を否定するものではない)ことも、そうした批判的な意見を補強する材料となった。その一方で「かつては人気子役だった女子高生・有馬かな役に本当に人気子役だった原菜乃華」、「現役女子高生と年齢を偽っているMEMちょ役に年齢不詳の元アイドル・あのちゃん」など視聴者を深読みさせる「メタ的キャスティング」がされていることから、「実は結構ちゃんと考えられていて、案外イケるのではないか」という肯定的な意見もあった。
そんな本作だが、配信前に原作が大炎上しながら完結したことで、配信発表段階より大分期待値が下がっていたこともあってか、比較的好意的に受け取られた印象を受けた。特にカミキヒカル役が二宮和也が演じることが発表されてからは、完全に好意的な意見の方が優っている印象を受ける。自分も結構楽しく全話視聴した。一方でメインキャストに関してはかなり有馬かな役の原菜乃華無双、ドラマのセリフを借りれば正に「この作品は原菜乃華さんの演技に支えられていたと思います」という感じのドラマに仕上がっていた。
勿論、原菜乃華以外のメインキャストの演技が特別下手という訳ではない。あのちゃんなんかはかなり好演していたとも思う。ただ原菜乃華の有馬かなの原作再現度は半端ない。本当に漫画の中から出てきたようなコミカルさだ。その上シリアスな演技力もズバ抜けていた。本作は役者の話でもあるため「劇中の役者の演技力の凄さ」を実際の役者が演じなくてはならない問題があり、例えばアクアがストーカー役を演じている際に有馬は「流石アクア!」と脳内で絶賛するが、ぶっちゃけ凄く作っている演技にしか見えず「あぁ…」という感じがした。またあかねがアイを完全再現するシーンも齋藤飛鳥演じるアイのカットを挟むことで「これはあかねがアイの完全再現をして、正にそう見える天才的な演技力を発揮しているシーンですよ」と映像的に説明し過ぎていて、実写の限界を感じざるを得なかった。一方で有馬が台本の「恋に落ちた乙女の顔」を演じるシーンで、実際にアクアに恋に落ちた顔になる二重構造の演技を見事な表情で演じていて、素直に「おおっ…」と感情を揺さぶられた。その後も有馬とあかねが対等な演者、寧ろ現段階ではあかねの方が上回っていることを有馬が自覚して悔しがるシーンがあるが、それを観ながら「上手い役者が周りの役者の演技レベルに合わせて、演技を落とすことって本当にあるのかな…」なんてことを思ったりもしてしまった。それくらい原菜乃華はレベルが違った。
原菜乃華以外のメインキャストの演技に若干の甘さがあるのに対して、ベテランが脇を固めて安心感を生んでいるのはドラマ自体が「大人が(実際の年齢的なのは置いといて)子供を支えている」みたいになっていて良かった。ストーリーに関しては「実写化の話が2.5次元舞台編からテレビドラマに変更するのは良しとして、原作にない視聴率云々の話の解像度が業界モノとして低くなってしまったのは残念」、演出に関しては前述したあかねのアイの完全再現シーンに加えて、あかねがアイのことを調べてるシーンが「あかねがアイのライブ映像を研究しているアップから、カメラが引いていくと部屋中に…」という演出ではなく逆なのが「なんか上手くないな」というのと、二宮和也のサプライズキャスティングが本編登場前のオープニングクレジットで普通に紹介されていて「普通に盛り上げ下手かよ」感があった。一方で有馬の枕営業の件が権力者側である監督による18歳の不安定さにつけ込む「性加害」というニュアンスが強い演出になっており、尚且つ有馬に視聴者のヘイトが向かないような流れになっていたのは良かった。
そんなこんなで多少の不満はあるものの、普通に楽しく観た(1話目は「目の焦点の合ってない赤ちゃんがCGと吹替で喋らされている映像が超実写版『ライオン・キング』を超える不気味さ」もあり、若干辛かったが、それも劇中で「子供時代は殆どカット」「ハイテンポな掛け合いが出来る子役なんてまずいない」「乳児が急に踊り出すなんてもっての外」とメタ的に釈明していた)ので、映画の完結編も楽しみである。
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