ネタバレ感想
『【推しの子】-The Final Act-』を観た。
- 映画版ならではの「前日譚→復讐譚」の構成
実写化の企画コンペの段階で、赤坂アカ先生&横槍メンゴ先生&集英社さんサイドには「映画+配信ドラマの構成でいきたい」とはお伝えしていました。
映画1本分でダイジェストのように描くのではなく、1巻で提示された謎を、ドラマと映画でしっかり回収できるところまで描きたい、という想いは最初からご理解いただけたかと思っています。
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本作は原作:赤坂アカ、作画:横槍メンゴによる人気漫画『【推しの子】』を実写化した作品のラストを描く劇場版。企画として「漫画の最終章が映画製作による復讐だから、メタ的に作品媒体も映画にしたいが、一本の映画だとダイジェストになるし、分作になるとそれはそれで…」と色々と悩ましかっただろうが、今回は原作の最終章手前までをアマプラの配信ドラマで丁寧に描き、完結編は映画作品として公開する、という手段を選択。それでいて映画の構成は前半は原作の順番を入れ替えて「さりなちゃんとせんせーの関係及びアイの出産パート」を描き、後半で「推しの子」に転生したアクアとルビーによる復讐譚を描く「復讐の動機となる前日譚→復讐劇」という構成にしたことで、一本の映画としての見応えも担保されてる作品に仕上がっていた。
※B小町の音楽がバックにかかりながら死んでいくさりなちゃんのシーンは危篤の病室感がよく出ていて泣けた
- メタ的キャスティングとカミキヒカル役のニノ
それぞれのキャラクターが、それぞれの役者さんのバックボーンに対応したキャスティングだなとは思っていました。それが今回の場合は、当事者意識として活きたのかなとも思っています。それが芸能界というものの空気だったり、リアルな表現に繋がったと思います
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本作は各メインキャラクターとキャスティングされた役者のバックボーンがメタ的に重なっていることが発表当初から注目を集めていたが、その視点においてはカミキヒカル役に二宮和也をキャスティングしたのは中々エグい。カミキヒカルは子役時代に芸能界の女性先輩から性被害に遭って心が壊れてしまった人物。この設定のキャラクターにニノがキャスティングされると、どうしても昨年問題が表面化したジャニーズ事務所創業者・ジャニー喜多川氏の性加害問題を連想せざるを得ない。ニノもオファーがあって、原作を読んだ段階である程度自分に何が求められているかは理解した上で出演を決めたと思うが、他のキャラクターのメタ的キャスティング含めて製作陣はどこまで説明していたのか、ニノはどこまで理解した上で受けたのか、など色々と余計なことが気になってしまう。ただそこら辺のことは置いておくと、ネット配信のドラマに大物旧ジャニタレ役者が出演しているという異物感含めて、ニノのキャスティングはナイスだったのではないかとも思う。
- ルビーによるアイの演技
ドラマ版を視聴した際に個人的には「それぞれの役者は別に演技が下手だとかそういう訳ではないけど、『演技の上手い役者の演技の演技』になるとどうしても原菜乃華以外は中々厳しいな…」というのが正直な感想として思ったし、「あかねの恋愛リアリティショーでのアイ再現シーン」の「齋藤飛鳥演じるアイのカットを入れる」という映像的逃げの演出を見て「ルビーが母親であるアイを演じるシーンは大丈夫なのか…」とかなり不安になった。ただその点はルビー役の齊藤なぎさはアイの特徴を掴んだ一定の説得力のある演技をしていて、余計なノイズになることなく安心して見ることが出来た。ルビーが演じるアイから本物のアイの回想に入る流れも自然だったように思う。逆に「あかねのアイの演技はもうちょっとどうにかなっただろう…」とドラマ版への不満はより増した。
- 原作からの変更点への不満
ネットでは原作のラストに関して「駆け足で雑過ぎる」と炎上していたが、実写版はより駆け足の傾向。アクアとルビーがそれぞれの前世に気づくシーンもやや急な印象を受けた。またラストのアクアとカミキヒカルの対決も原作では「アクアがカミキヒカルを復讐のために殺したら、ルビーが『殺人犯の妹』のレッテルを貼られてアイドル人生含めて一生が台無しになる」という状況の中でアクアが自らの腹にナイフを刺すことで「自伝映画で告発されて逆上したカミキヒカルが脚本家であるアクアを刺して、その顛末として両者が崖から落ちて死亡」というストーリーを世間に信じさせる、という「嘘」をテーマにした『【推しの子】』らしい決着の仕方でカタルシスもあった。しかし実写版の方はアクアがカミキヒカルによる殺傷を装うのではなく、原作にはない映画の舞台挨拶で謎の女(掘り下げが全然ないが、原作に当てはめると役者名と被って紛らわしいが、B小町でアイと共に活動していた元アイドルのニノ?)にアクアが刺される展開に変更。その結果、アクアが自分で自分の腹をナイフで刺すという衝撃の展開は消え、カミキヒカルの脅しに対して、ただ単に「相打ち」に持っていた感しかない。その上、アクアは本当にカミキヒカルサイドに舞台上で刺されており、死体も上がってこないので「アクアが『嘘』で世間を騙すことで、ルビーを守りながら復讐を果たした」感も薄い。正直「普通に原作通りやればいいのに…」としか思えなかった。
- 最後に…
本作は原作のラストの展開が気に食わない人たちから「アニメや実写では原作とは異なるオリジナルのハッピーエンドを描いて欲しい」との要望も強いが、それだと原作者が本作で伝えたかった「この世界は理不尽で不条理だけど、それでも人は嘘を纏って強く生き続ける」というメッセージからブレることになるし、「本編で描かれた『漫画の実写化問題』への共感はどこ行った?」感も半端ない。最後に本作のエンドロールに相応しかったのは、過去のB小町を振り返る映像よりも色々と辛いことがあっても何もなかったかのような顔をして今を生き続ける彼女たちの姿かルビーの歌声をバックに真っ暗なエンドロールの方が適切だったのではないか、とも思った。
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