
春休み映画興行収入レポート2025。
- 映画ドラえもん、45年目も絶好調!
「春はドラえもん!」、『映画ドラえもん』シリーズ45周年記念作品『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』が興行収入40億円超え確実、50億円も視野の大ヒットを記録。近年のドラえもん映画は古沢良太さんが脚本を執筆した一昨年の『空の理想郷』(最終43.4億円)、昨年の『地球交響楽』(最終43.1億円)と興行的に40億円前半で安定し、作品内容の評判も良かったが、今年はその中でも特に群を抜いて良く「最高傑作」との声も多い。しかも最近良くある「ターゲットを大人にした作品」ではなく、あくまでも「子ども向けの作品」として公開されて、リアルタイムのドラえもんの友達たちだけではなく、かつてのドラえもんの友達たちの心を掴んでいるのだから素晴らしい。
12年ぶりの登板となった寺本幸代監督はこれまで『新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜』『新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』『ひみつ道具博物館』の3本を監督。今年開催されたみんなの投票で再上映作品を決める「シリーズ45周年記念!映画ドラえもんまつり」では選出された水田わさびドラ映画3本の内、 『新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』『ひみつ道具博物館』の2本がランクインする圧倒的な強さを見せており、4本目で新たな傑作を世に送り出す形となった。興行面でも『新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』は東日本大震災の時期と重なったこともあり、最終24.6億円と伸び悩んだが、『新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜』は大山のぶ代ドラ映画最終作の前々作『ワンニャン時空伝』(最終30.5億円)と水田わさびドラ映画初作品の前作『のび太の恐竜2006』(最終32.8億円)を超える35.4億円、『ひみつ道具博物館』では最終39.8億円とシリーズで初めて興行収入40億円に肉薄する強さを見せていた。その意味では今回もコロナ禍以降初の興行収入50億円を超えて欲しいところだが、今年は公開日となる3月1週目が7日と春休みをピークに動員が激減する傾向にあるドラ映画としてはカレンダー的に不利な面もあったので、ちょっと厳しいかもしれない。
自分で映画館に足を運ぶ日が、
— あいみょん 🦭 (@aimyonGtter) 2025年3月10日
本当に夢が叶った日になると思って
その日を楽しみにしてた。
案の定泣きすぎてしまった。
10年前に水田わさびさんから頂いたネックレスを着けて観に行ったよ!
未来、変えられた。おめでとう私!
今年の映画ドラえもん、史上最強に面白いです。是非観て欲しい!大好き。 pic.twitter.com/SMbmbm0E37
子どもをターゲットにしながら、主題歌にあいみょんのような「ドラえもん愛」溢れるアーティストをキャスティングして、かつてのドラえもんの友達たちを再び劇場に向かわせようとする戦略も良かったと思う。
- 『ウィキッド』、日本でもヒット
「オズの魔法使い」の裏話として構成され、西の悪い魔女・エルファバと南の良い魔女・グリンダの知られざる友情を描いたミュージカルを映画化した『ウィキッド ふたりの魔女』が興行収入30億円超えも狙えるヒット。アメリカでは既に昨年11月に公開され、全米興行4.32億ドルと昨年の年間興行収入3位の大ヒットを記録していたことから、一部では「なんで日本の公開は来年の3月なんだ!」と不満が噴出していた。一方で本作の元となる『オズの魔法使い』はアメリカでは日本の『桃太郎』レベルの認知度らしいが、日本では「名前は知ってるけど、よくよく考えるとどんな話かは知らない、もしくは覚えてない」みたいな人も多いので「果たしてアメリカのようにヒットするのかな?」との疑念もあったが、圧倒的なミュージカル力によって評判も良く、口コミも広がり大ヒットとなった。本作は実は2部作の前編なので、後編はアメリカでは今年11月に公開予定だが、日本ではまた来年の3月まで引っ張るのか、それとも冬休み映画として公開するのかも気になるところである。
Domestic Box Office For 2024 - Box Office Mojo
- 作品の力で捩じ伏せれなかった『白雪姫』
ディズニーの名作プリンセスアニメを実写映画化した『白雪姫』が興行収入10億円割れの可能性もある大コケ。アメリカでも推定製作費2.5〜2.7億ドルの莫大な予算に対して、1億ドルにも届かない可能性のある情勢の大惨敗。本作は公開前から「なんで白雪姫なのに褐色系の肌を持つコロンビア系のレイチェル・ゼグラーが主演なんだ!」とか「主演女優がディズニーアニメ版を貶す発言をしている!」とか「パレスチナ支持の白雪姫役とイスラエル支持の女王役が険悪」とかネガティブな話題に溢れていた作品。同じような状況でも黒人アリエルが大バッシングされた『リトル・マーメイド』は批判派含めて「いや、主演女優の歌は素晴らしかったと思うけど…」と作品の力で捩じ伏せたが、『白雪姫』は作品の評判もサッパリで日本のSNSでは酷評大喜利状態。

※『白雪姫』のフライヤーの写真
また日本のプロモーションでは「『バービー』のグレタ・ガーウィグが脚本」と紹介されていたので、「今の時代、不同意性交と批判されかねないラストをどうアレンジするのか」と期待していった層からすれば、クレジットに彼女の名前がなく肩透かし、どころか最早詐欺状態。兎にも角にも評判の悪い本作だが、『リトル・マーメイド』に続いて原作を改変したディズニーアニメを「原作」として実写映画版を批判する人の多さに「ルパンは後ろから敵を刺さない問題」を感じざるを得ない。
実写版『白雪姫』北米No.1も期待に及ばず 空前の物議は興行成績に影響したか?|Real Sound|リアルサウンド 映画部
- ポン・ジュノ監督のハリウッドSFが苦戦
非英語作品として初のアカデミー作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督がハリウッドメジャー製作したSF映画『ミッキー17』が苦戦。母国・韓国ではそれなりの興行成績を収めている一方で、アメリカではオープニング興行1910万ドルと製作費1.18億ドルを黒字化させるのは難しい興行となった。日本でもオープニング興行1.21億円と振るってない。アメリカの映画祭で評価されたアジア人監督がハリウッドデビュー、といえば日本では山崎貴監督の作品が控えているが、こちらもSF映画。「近年のアメリカでは単発SF映画はヒットしない傾向」と指定される中で、どの程度のパフォーマンスを見せれるのか、今から楽しみ半分、怖さ半分である。
ポン・ジュノ監督『ミッキー17』北米ボックスオフィス1位…「収益は期待に及ばず」 | Joongang Ilbo | 中央日報
- アカデミー関連作品振り返り
日本アカデミー賞は最優秀作品賞に『侍タイムスリッパー』が選ばれ、受賞効果もあってか最終10億円を突破。『侍タイムスリッパー』に『ANORA アノーラ』と今年の日米アカデミー作品賞の共通項はインディーズ映画か。アカデミー賞関連作品を振り返ると、脚色賞の『教皇選挙』は「初日4日間で128回満席」というあまり見たことのない発表の仕方でのヒット。今年は作品賞が高齢者向けではなかったので、こっちに支持が集まったのだろうか。3年連続非ディズニー、2年連続非英語作品が受賞となった長編アニメーション賞の『Flow』は1億円ちょっと。受賞を逃した2月末公開の『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』は4億円に届くか届かないかくらいで、定期的にティモシー・シャラメが来日して「キャーキャー」言われても今の時代に若きハリウッドスター俳優が生まれるのは難しいのか、とか思わされる。
視覚効果賞にノミネートされた『BETTER MAN ベター・マン』は公開日に『金曜ロードショー』で同じ監督の『グレイテスト・ショーマン』がかなり遅めの地上波初放送タイアップもあったが、オープニング興行は4107万円程度。最多13ノミネート、トラスジェンダー女性として初の主演女優候補と当初は今年の主役級の扱いも、主演女優の過去のSNSでの差別発言発覚で一気に盛り下がった『エミリア・ペレス』はオープニング1960万円でサッパリ。「差別発言をするマジョリティ」と違って、「差別発言をするマイノリティ」はリベラルハリウッドからも反DEIのトランプ陣営からも受け入れられない居場所のなさ。勿論『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』で描かれていたように、ロイ・コーンのようなタイプもいるのだろうが…
映画『教皇選挙』好調、初日4日間で128回満席のヒットスタート | THE RIVER
米アカデミー賞、欧州受賞組が席巻 カンヌ最高賞「アノーラ」が5部門制す:朝日新聞
- 最後に…
『もののけ姫』米国IMAX再上映で400万ドル突破!週末興行収入ランキング6位
— ゴミ雑草 (@mjwr9620) 2025年3月31日
→ 「スタジオジブリ風」のAI画像生成が物議/GKIDS配給部門副社長「技術が人間性を模倣しようとする時代にあっても、観客が手描きの芸術性を尊重し、映画館での体験を大切にしていることは嬉しい」 https://t.co/SR10I0rFAd
この春は『ウィキッド ふたりの魔女』『白雪姫』『BETTER MAN ベター・マン』『エミリア・ペレス』と4本もミュージカル映画が公開されているが、結果的には『ウィキッド』の一人勝ち。最後にアメリカでは宮﨑駿監督『もののけ姫』の4K・IMAX版が公開されて、オープニング400万ドルのヒットで週末全米ランキング初登場6位。「スタジオジブリ風のAI画像生成」が流行った時期の公開となり、GKIDS配給部門副社長は「技術が人間性を模倣しようとする時代にあっても、観客が手描きの芸術性を尊重し、映画館での体験を大切にしていることは嬉しい」とコメントした。
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