ネタバレ注意
『名探偵コナン 隻眼の残像』に登場する長野県警の幼馴染刑事である大和敢助と上原由衣に関するネタバレ感想及び考察。
- 上原の大和への愛の大きさ表現
公開初日の感想記事にも書いたけど、大和が左眼を失った雪崩事故の件は正直アニオリの枠を出ないような内容に思えたが、改めて大和が自分の入院中に上原が事件の捜査のためとはいえ地元の名家に嫁いでいた件に対して複雑な気持ちも抱いていたことや、上原側の大切な人を失ったと誤解した当時の自分の押さえられない気持ちを確認出来たのは良かった。また一昨年の『黒鉄の魚影』や昨年の『100万ドルの五稜星』に対してサプライズ感が薄いのは否めないも、青山原画で描かれる上原の大和への告白チックなセリフと表情も可愛かったので「これが観れれば全部良し」感はあった。余程ピュアな観客以外は騙されないであろう「大和が死んだミスリード」の際の上原の絶叫と涙は「どうせ映画で原作のメインキャラは死なせないんだから、こうやって分かりきったことを大袈裟にやられると萎えるな…」と思っていたので、「実は上原は大和が生きていることを知った上で、『もしも本当に死んでたら…』を想定した愛の大きさを表した演技だった」というオチは「クゥ〜、やられた、こう来たか」という満足感もあった。
- 上原の大和への問い
一方で今回の犯人が上原に投げかけた「愛する人を失った人間はどうすればいい!?」的な問いに対しての着地点が「警察の職務倫理を忘れたお前が悪い」みたいな説教で終わったのは「なんだかなぁ…」と思えた。そこは愛する人を失ったと思ってアクロバティックな行動に出た過去のある上原なりの犯人への言葉が欲しかったし、中盤の大和と上原の「オレなら結婚まではしない」「じゃあ、敢ちゃんが私の立場ならどうした?」みたいなやり取りの明確なアンサー描写もなくて、そこら辺も消化不良に思えてしまった。
- 本当は犯人だった上原
ただ3年前に青山剛昌先生が『ヒルナンデス』に出演した際にコミックス59巻の『風林火山』(初登場回)で「上原は本当は犯人だった」と発言していたことを踏まえると、クライマックスの展開の見え方も少し変わってくる。要は今回の愛する人を失ってしまった悲しみで殺人を犯した犯人は上原が「もしかしたら、自分がなっていたかもしれない姿」だったのだ。だから犯人の問いかけに上原は共鳴して涙した。つまり犯人が運転する車と犯人を追いかける大和たち警察の車の間に立っていた上原は、刑事と犯人のどちらになっていてもおかしくないボーダーな存在であることを表していたのだ。
- 最後に…
断定調の文章で書いてしまったが、そう捉えると大和らの犯人への「誇りと使命感を持って国家と国民に奉仕し、恐れや憎しみにとらわれずに、いかなる場合も人権を尊重して公正に警察庶務を執行しろ」という警察の職務倫理を説くシーンは、上原の「敢ちゃんが私の立場ならどうした?」へのアンサーとの見方が出来ることになる。要は大和なら上原と違って「警察の職務内で捜査した」という訳だ。ただ大和は本作のクライマックス同様に間違った方に行きそうな危うさもある上原を受け止めるだけの愛があるのも事実だ。そしてその愛故に上原は今も刑事の職務に就けているのだ。ここら辺が今回のコナン映画の年の差幼馴染ラブコメの胸キュンポイントなのだろう。
- オマケ
ただ犯人が訴えていた「司法取引」の問いを「警察の職務倫理」でねじ伏せる感じは、やはり釈然としない。
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