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【ネタバレ感想】要素の詰め込み過ぎ?『瞳の中の暗殺者』『水平線上の陰謀』と比べても… 『名探偵コナン 隻眼の残像』の不満点

劇場版 『名探偵コナン 隻眼の残像』オリジナル・サウンドトラック (劇場版『隻眼の残像』オリジナルミニ色紙2枚封入)

ネタバレ注意

『名探偵コナン 隻眼の残像』の不満点。

 

  • 記憶の取り戻し方

劇場版 名探偵コナン 瞳の中の暗殺者

『劇場版名探偵コナン』シリーズは第25作『ハロウィンの花嫁』以降、第1作『時計じかけの摩天楼』から順に新作のモチーフにしている法則があり、今年は「重要キャラクターの瞳の中に犯人の記憶があるが、思い出せない」という共通項から第4作『瞳の中の暗殺者』をモチーフにしていることは明らかである。一方で『瞳の中の暗殺者』では犯人を見て記憶を失っしまった蘭姉ちゃんの記憶の取り戻した方が「新一とのデートの記憶」と「犯行トリック」が重なる鮮やかさがあり、蘭姉ちゃんが記憶を取り戻したからこそのクライマックスの見せ場があったが、『隻眼の残像』では大和警部の記憶の取り戻した方にあまり芸がない。観客の中には観賞後に「それで結局どういう風に記憶を取り戻したんだっけ?」と記憶がボヤッとしている人も少なくないのではないか。

 

 

  • 小五郎の真相解明

劇場版 名探偵コナン 水平線上の陰謀(ストラテジー)

また本作は「眠らない小五郎」と称して、オッチャンこと毛利小五郎の活躍を期待させる宣伝をしており、実際に劇中で小五郎は活躍を見せる。ただ推理面においては、結局小五郎独自でどこまで真相に辿り着いていたのかがハッキリしないので、『水平線上の陰謀』のような「小五郎の執念によって事件の真相を解き明かした」というカタルシスは薄い。ネットでは「ワニの呼び方から小五郎個人で犯人には辿り着いていた」との考察が有力視されているが、だとしたら「小五郎が犯人候補におちゃらけた感じでその地域特有のブラフをかけて、確信を得る」みたいなシーンがないとミステリーの犯人当てとしても弱い。また「コナンの推理力」と「小五郎の執念」と「大和の記憶」が上手く重なり合うことで、真相に辿り着いた感がないのも残念だった。

 

 

  • 大切な人を失った3人の物語

名探偵コナン 107 劇場版ティザーアクリルスタンド付き特装版 (少年サンデーコミックス)

加えて本作は犯人、上原、小五郎の3人に「大切な人を失ってしまった」という共通項(上原のは過去の思い込みだが…)を持たせているにも関わらず、この要素も上手く扱いきれていない感じがあった。一応、犯人は上原に「大切な人を失ったらどうすればいい!?」という趣旨の問いを投げかけられて、上原もその犯人の問いに共鳴する様子を見せたりもするのだが、その後に上原独自の見解が示される訳でもない。また犯人の大切な人を失ってしまった故に起こした事件は、小五郎の大切な人を奪ってしまっていることから、「復讐による悲劇の連鎖」みたいのが起きてしまっている訳だが、犯人と小五郎の「大切な人を失ってしまった文脈」での対比もないに等しい。今回の設定なら「大切な人を失ったと思い込んだことで、事件解決のために倫理的にグレーな行動に出た過去がある上原(しかも青山剛昌先生曰く原作の初期設定では犯人)」と「大切な人を失ってしまったが故に復讐に走った犯人」と「大切な人を失ったことで何が何でも自らの手で事件解決をしようとする小五郎」の物語を上手く絡めて着地させて欲しいところなのだが、上原は大和とのラブコメ、犯人は警察組織、に着地して小五郎のワニへの想いで締めなので、なんだか3要素が上手く化学反応を起こさないまま、それぞれバラバラな所に着地してしまっている感も否めなかった。

 

 

  • 最後に…

そんなこんなで推理面でも人間ドラマ面でも要素の詰め込みすぎで上手く捌けてない感があったが、製作陣曰く数年前から第30作目までのロードマップは完成していて、「映画のスケジュール的にも、興行的にも今更長野県警や毛利小五郎単独で一本やれる余裕はないんだろうな…」と巨大ビジネスになった故の弊害も感じたりした。

 

 

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