
2025年ゴールデンウィークの映画興行収入レポート。
- コナン映画、「次は下がる」を覆し続ける歴史
4月は毎年恒例の『劇場版名探偵コナン』シリーズ最新作『隻眼の残像』が今年も最終150億円超えが狙える歴代最高クラスのヒットを記録。コナン映画は2018年公開『ゼロの執行人』が最終91.8億円、2019年公開『紺青の拳』が最終93.7億円、コロナ禍を挟み2022年公開『ハロウィンの花嫁』が最終97.8億円と興行収入100億円に迫りながらも、その壁を中々超えることが出来なかった。
しかし2023年公開『黒鉄の魚影』で「黒の組織」と「灰原哀」という作中最強カードを掛け合わせることで、「熱心にコナンを追っている層」だけでなく「最近コナンから離れていた層」の呼び戻しにも成功して、最終138.8億円と前作から大幅に興行収入を伸ばす形でシリーズ初の大台を突破。
その上、2024年公開『100万ドルの五稜星』では最終158.0億円と前の作品から大幅に伸ばす形で記録を更新した前作『黒鉄の魚影』から更に大きく上乗せる形でシリーズ歴代最高を更新。公開前は「キッドと平次の組み合わせは黒の組織と灰原哀の組み合わせに比べるとネームダウン感は否めないので、本作は前作から下がるのでは…」との見方が強い印象だったが、覆した。コナン映画は過去にも前作から大きく伸ばす形で歴代最高を更新した際には「沖矢昴の正体を原作より先行して明かした前作より今回は下がるだろう(『異次元の狙撃手』→『豪火の向日葵』)」「20周年記念の黒の組織映画の次が下がるのは仕方ないだろう(『純黒の悪夢』→『から紅の恋歌』)」「安室透人気でこれまでとは違う伸び方をしたが、次は安室さんが出ないので再現性はないだろう(『ゼロの執行人』→『紺青の拳』)」と「今回のヒットの理由が明確だからこそ、次が反動で下がるのはやむなし」という空気の中でキッドもしくは平次がゲストの次回作で歴代最高を記録していく流れを繰り返してきたので、「キッド」と「平次」の合わせ技が歴代最高を大きく更新したのはある意味必然だったのかもしれない。
- 3年連続最速100億円、小五郎声優は安堵
𖢳𖢳 眠らない街 𖢳𖢳 新宿に#眠らない小五郎 出現❄️
— 劇場版名探偵コナン【公式】 (@conan_movie) 2025年4月14日
新宿東宝ビル壁面と
新宿歌舞伎町ロードを#隻眼の残像 がジャック⚡️
コナンと小五郎による
「客引きの啓蒙放送」もスタート📣
ぜひお近くにお越しの際は
チェックしてみてくださいね👓! pic.twitter.com/x23g5AUvNK
一方で今年の『隻眼の残像』のゲストは「長野県警」の3人。「長野県警」は原作ファンの間では「コナンからの信頼も厚い優秀な地方警察組織」として人気が高い反面、毎年の映画くらいしか観ないライトなコナンファン程度だと「誰?」とまではいかなくても、「あー、なんかいたかもな… よく覚えてないけど」となりかねない存在。製作陣も「長野県警だけでは興行的に弱い」と思ったのか、今回はコナンを少しでも触れたことのある人なら誰でも知ってるといっても過言ではない、原作初期からのレギュラーキャラにして圧倒的認知度の高い・毛利小五郎にもフォーカスを当てた作品となっている。メインビジュアルも長野県警のメンツよりも扱いが良いし、宣伝でも「今回わたくし眠りません!」「#眠らない小五郎」と完全にオッチャン推し。『ハロウィンの花嫁』でも「警察学校」+「佐藤・高木両刑事」だったので、製作陣としては「比較的最近or認知度の低いキャラ」と「初期からのお馴染みのキャラ」の合わせ技で、最近コナンの原作に触れてない人たちに「映画を機に再び戻ってきて貰いたい」的な目論見もあるのだろう。
꧁ 3作連続 ! 興行収入100億円突破 ꧂
— 劇場版名探偵コナン【公式】 (@conan_movie) 2025年5月7日
『#隻眼の残像』が
5/6(火)までの公開19日間で
観客動員数726万人を超え
興行収入 104億円 を突破❄️
『黒鉄の魚影』『100万ドルの五稜星』に続いての
快挙となりました✨
原作者・青山剛昌先生から
お祝いイラストも到着🎁
皆さまの多大なる応援と… pic.twitter.com/dhQq3n0Wij
ただそれでも「長野県警」と「小五郎」の組み合わせは一昨年の「黒の組織」と「灰原哀」、昨年の「キッド」と「平次」よりも弱いのは否めない。しかしそんな渋めの組み合わせでも初日の興行収入は10.5億円、オープニング3日間の興行収入は34.38億円と共に前作を超えてシリーズ歴代最高を更新。更に公開19日目にはシリーズ最速で興行収入100億円を突破。邦画初のシリーズ3作連続100億円突破となった。毛利小五郎役の小山力也は舞台挨拶で初日の興行収入に関して「よかった。がたっとなったらどうしようかと…」と発言していたようだが、作り手側からすると物凄いプレッシャーなのだろう。最終興行でもシリーズ歴代最高を記録出来るかは現段階では判断出来ないが、ゲストが前作より弱い本作でも前作と同等のヒットを記録していることから、コナン映画が毎年恒例のお祭り映画として定着していることを実感させられる。来年は今年より更に知名度の低いキャラがゲストだと告知されていたが果たして…
- 名探偵に挑んだゴールデンウィーク映画たち
今日で公開から3週間❤️❤️
— 平ロボコ【僕とロボコ公式】🦵 (@roboco_hizanapa) 2025年5月8日
上映減ってきてるから
まだ観てない人は
早めに映画館にGO😎🤞💖
劇場版『#僕とロボコ』
膝ヒット上映中🦵🦵#名探偵やマイクラはしばらくやってるけど#ロボコは今だけ#2回目3回目も観られるうちに#早くしろ間に合わなくなってもしらんぞ#明日から新入プレ… pic.twitter.com/GMKkPg1n9P
ゴールデンウィーク興行を振り返ると『名探偵コナン 隻眼の残像』に被せる形で「あの名探偵の映画と公開日が同じらしいです」で笑いを誘った『劇場版「僕とロボコ」』は「ロボコ→名探偵→ロボコ」の「サンドイッチ作戦」による「#ロボコ200億の膝」の目標に対して最終興行は2億円程度見込み。公式SNSが『劇場版名探偵コナン』の投稿をリポストしたり、「#名探偵やマイクラはしばらくやってるけど」「#ロボコは今だけ」「#2回目3回目も観られるうちに」「#早くしろ間に合わなくなってもしらんぞ」と独特な自虐ハッシュタッグで笑いを誘う。
多分、意図的に被せたのではなく偶々「孔明」被りしてしまった人気漫画を向井理主演で実写化したフジテレビドラマの劇場版『パリピ孔明 THE MOVIE』はオープニング興行7900万円と1億円割れ、最終興行も3億円程度見込みの大コケ。ドラマ放送時も初回辺りは話題を集めていた反面、どんどん失速していった印象を受けていたが、映画も興行的に盛り上がりきらなかった。例によってスポンサー離れのフジテレビでCMを流しまくっていたが、『アンダーニンジャ』の興行が回復したのは福田雄一監督の作家性とテレビとショート動画的な笑いが上手く噛み合った故の奇跡だったのか。実は『金曜ロードショー』のオープニングを歌っている上白石萌歌の歌唱シーンの評判は良い。
北米で『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を超えてゲーム映画史上最高のオープニング記録を叩き出した『マインクラフト/ザ・ムービー』が日本でも最終興行30億円超えが確実のヒット。流石に日本では『マリオ』と『マイクラ』では愛され度に大きな差があったが、ゲーム実況者の配信を通じて認知度を高めていったゲーム原作の映画だけあって、HIKAKINや狩野英孝を使ったプロモーションも上手かった。昨年は受け皿がなかった夏に公開時期の移った『映画クレヨンしんちゃん』がターゲットにしているファミリー層も上手く吸収した。また昨年度は実写洋画の30億円超えが1作品も出ないほどの興行的不作だったが、今年は『ウィキッド』に続き『マイクラ』も30億円超えが期待でき、更にトム・クルーズ主演『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』や『ジュラシック・ワールド/復活の大地』が控えているなど、回復傾向。
若者の間で絶大な支持を集めるも昨年は「コロンブスのMV」「おちんこの候補くらいに自分を思ってたのに」「た・す・け・て」と世間を良くも悪くも騒がせたMrs. GREEN APPLEの大森元貴が菊池風磨とダブル主演を務めた人気小説の実写映画化『#真相をお話しします』が最終20億円超えが狙えるヒットを記録。予想を裏切るラストが話題。
当初は『アベンジャーズ/ザ・カーン・ダイナスティ』の公開が予定されていた日に差し込まれたMCU最新作『サンダーボルツ*』はオープニング5日間で6.65億円のヒットスタート。一方で2週目末の公開10日間の興行収入は8.86億円と最終興行は10億円前半見込みと相変わらずの初動型。フェーズ5は『アントマン&ワスプ:クアントマニア』が最終10億円割れ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: VOLUME 3』が最終13.2億円、『マーベルズ』が最終10億円割れ、『デッドプール&ウルヴァリン』が最終21.1億円、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』が最終11〜12億円程度見込みと1作品を除いて基本10億円前後の興行なので、「MCU離れ」「MCU疲れ」が指摘される中で、他作品より認知度が低いキャラクターたちの映画でも遜色ない興行収入を記録しているのは、コナン同様に登場キャラクターに関係なく良くも悪くも安定していて「MCUなら観る」という固定客が付いていることにはなる。ただ爆発的なオープニングに対して、その後の興行が伸びるのか、それとも失速するのかにコナン映画の「熱心なファン」と「ライトなファン」の両方を取り込んでいる客層の幅広さとMCUの「熱心なファン」を集めるも「ライトなファン」を取り込めきれてない違いが見えてくる。今後公開される『アベンジャーズ』の新作でどの程度「ライトなファン」が帰ってくるのか注目だ。ちなみに『サンダーボルツ*』の「*」は日本語では「(仮)」的な意味らしい。
フランシスコ教皇が逝去されました。「『#教皇選挙』興収ランキング𝟓週連続𝐓𝐎𝐏𝟏𝟎入り」と投稿準備をしていた矢先でした。
— 映画『教皇選挙』3.20 (@CCLV_movie) 2025年4月21日
本作の原作の構想が生まれたのは、フランシスコ教皇が選ばれた2013年のコンクラーベに関するTV報道を原作者ロバート・ハリスが見たときだったそうです。…
3月公開の『教皇選挙』が4月21日に第266代ローマ教皇・フランシスコ教皇が亡くなり、コンクラーベが行われることが決まったことで、「作品の評判の良さを耳にしていた層が映画と現実がリンクしたことで背中を押される形」と「報道などで作品を初めて知って興味を持った層」を動員してゴールデンウィーク中に満席が続出。 新教皇に選出されたレオ14世もコンクラーベ直前に本作を鑑賞したとの報道もある。日本での興行収入は8億円を超えて、上手くいけば10億円超えの可能性も見えるヒット。今年のダークホースとなった。日本でやるなら「総裁選」か「首班指名」か。
- 最後に…
昨年のGW興行は『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』が最終158.0億円を稼ぐ一方で他の作品は10億円台が限界だったが、今年は『マイクラ』が30億円超えそうで多少華はある。ただ一昨年のコナンとマリオでダブル100億円突破とか2019年の『名探偵コナン 紺青の拳』が最終93.7億円で『アベンジャーズ/エンドゲーム』が最終61.3億円のヒット、とかと比べると盛り上がりに欠ける。一方でコナン一本で数年前のコナン映画の最高とMCUの最高を足した数字が出せるようになっていることから、コナン映画の驚異的成長率を再確認させられる。コナン映画は『映画ドラえもん』や『映画クレヨンしんちゃん』と異なり、ある時期から「卒業しないコンテンツ」になっていったと指摘されてるが、それ故に「成人後の兄弟姉妹や自立した子供とその親」「学校を卒業した後の友人同士」などの年1イベントとして、疎遠や希薄になりがちな家族の絆や学生時代の友情を繋ぎ止めてくれる役割も果たしているらしい。コナン終了後のゴールデンウィークの景色はどうなるのだろうか…
- オマケ
日本で1位、グローバルで非英語映画2位の草彅剛主演、樋口真嗣監督Netflix映画『新幹線大爆破』が劇場公開作品で今年のGWに公開されていたら、どのくらいの興行収入になったのだろうか…
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