
2025年9月の映画興行収入レポート。
- 『鬼滅の刃』、日本だけでなく世界でも大ヒット
国内興行収入350億円を突破した『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が、日本だけでなく世界でも大ヒットを記録。アメリカではオープニング興行7000万ドル超えで初登場1位を記録して、累計興行は日本映画初の1億ドルを突破。韓国では今年公開された映画の中で3本目の観客動員数500万人を突破して、韓国で公開された日本映画史上最大の動員数を誇る新海誠監督『すずめの戸締まり』の558万人を超えるのが確実視される推移。米国ドル換算で4000万ドルに迫るヒットとなっている。世界累計興行は現段階で6億ドルを超えて、今年公開されたMCU『サンダーボルツ*』の3.82億ドル、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の4.15億ドル、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』の5.20億ドルを超えて、DCU『スーパーマン』の6.15億ドル超えも時間の問題。今年の全世界興行収入ランキングでもトム・クルーズ『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の5.98億ドルを超えて8位にランクインしている。世界的ヒットの背景には全世界的なサブスクの普及などが指摘されている。これで中国での公開も決まれば、更なる高みも目指せるが、前作に引き続き公開未定なのが残念である。
Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba- The Movie - Infinity Castle - Box Office Mojo
Chosun Online | 朝鮮日報-興行成績:『鬼滅の刃』、韓国で観客500万人超、今年3作目
- 『チェンソーマン』、原作リスペクトで信頼回復
『劇場版「チェンソーマン レゼ篇」』がオープニング興行12.51億円超えで最終興行50億円超えが確実視される大ヒットを記録。本作は2022年に放送された藤本タツキ原作の人気漫画のテレビアニメ化作品の続編だが、テレビアニメシリーズは中山竜監督による「解釈違い」の演出によって、原作ファンからの評判が悪く、ビジネス的にも事前の期待値を下回った。その反省から劇場版ではテレビアニメ版の中山竜監督を降板させ、テレビアニメ版でアクションディレクターを務めていた𠮷原達矢監督によって徹底的な原作リスペクトを追求。事前に配信されたテレビアニメ放送時に評判の悪かった要素を原作に沿った形で修正した「総集篇」も話題を呼び、見事に信頼を回復させた。
劇場版「チェンソーマン レゼ篇」:原作に寄り添い魅力を増幅 吉原達矢監督&中園真登副監督インタビュー(1) - MANTANWEB(まんたんウェブ)
- 福山雅治、フジ事案真摯対応で映画無事公開
『ガリレオ』シリーズの東野圭吾が、ドラマ版で湯川学を演じた福山雅治からの「ダークヒーローを演じてみたい」という要望から生まれた『ブラック・ショーマン』が最終25億円程度が見込めるヒットを記録。公開前に本作を製作したフジテレビが中居問題を発端に設置した第三者委員会の調査報告書で指摘された一事案の当事者が福山雅治であることが明らかになり、注目を集めたが、事案自体が他の「犯罪に片足突っ込んでいるレベル」と比べて「嫌な想いをしている人もいるから、ちゃんと反省して今度から気をつけてねレベル」だったことと、福山雅治本人が雑誌の取材に真摯に対応したことで逆に好感度がアップ。フジテレビでの『ガリレオ』過去作タイアップ放送にも映画公開にも全く影響を出さなかった。この福山雅治の真摯対応は地味に映画のテーマとも重なるものであった。ただ作品自体の評価はボチボチで、シリーズ化するならミステリー要素を強化して欲しい。
福山雅治が東野圭吾とのやり取り回想、「ガリレオ」湯川学がダークサイドの人間だとしたら(「ブラック・ショーマン」完成報告会レポート / 写真14枚) - 映画ナタリー
- 総製作費25億円『宝島』、批判に監督が冷笑
真藤順丈氏の戦後の米軍統治下の沖縄を舞台にした同名小説を『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督が総製作費25億円をかけて、妻夫木聡主演で実写映画化した上映時間191分に及ぶ超大作『宝島』が最終10億円割れ濃厚の大コケ。 公開前は「小説の映画化、日本の歴史を題材にした社会派、長尺」の共通項から「第二の『国宝』」への期待の声もあったが、厳しい結果となった。本作はNHK時代の大友啓史監督も演出に参加した朝ドラ『ちゅらさん』の「沖縄=癒しの島」とは異なる「沖縄の『なんくるないさー』では済まない側面」を描いた作品で、公開前には監督と妻夫木聡が「全国キャラバン」と称して全国を回って舞台挨拶をする力の入れようだった。作品自体は賛否両論もエキストラ2000人を動員したクライマックスの「コザ暴動シーン」への評価は高く、「この規模で沖縄の戦後を描いた意義」を支持する声も多い。それだけに公開初日にSNSで監督が批判的な投稿に対して「ふーーん」と冷笑的な返信を行ったのは、気持ちは理解出来なくもないが、非常に残念。映画垢の中ではプチ炎上して、ネットニュースとなり、拡散されて、口コミでヒットした『国宝』とは逆の状態となってしまった。1口10万円で販売された映画デジタル証券を購入した人たちの気持ちも聞いてみたいところだ。
大友啓史監督『宝島』の挑戦 コザ暴動シーンにはエキストラ2000人動員 | ORICON NEWS
妻夫木聡「宣伝も映画作りの一部」――『宝島』全国キャラバンで得た確かな手応え | ORICON NEWS
大作映画「宝島」を応援する映画デジタル証券を1口10万円で販売中! | フィリップ証券からのニュースとお客様へのお知らせ
- 現実のがフィクションっぽい『沈黙の艦隊』
かわぐちかいじ原作の人気漫画を大沢たかお主演で実写化したシリーズの映画第2弾『沈黙の艦隊 北極海大海戦』がオープニング興行2.82億円と最終13.7億円の前作のオープニング(3.70億円)対比76.2%で、最終10億円程度が見込めるスタートとなった。本作は日米共謀で極秘開発された原子力潜水艦をジャックした艦長・海江田が独立国「やまと」の建国を宣言し、日本の竹上総理が「やまと」と友好条約を結んだことへの信を国民に問うために、解散総選挙を行う物語で、「やまと」と米軍による実質的な日米海戦が描かれるなど、「荒唐無稽ではあるけど、現実の問題をベースにしているので、リアリティを感じられ、議論も誘発しやすい見事な塩梅」の設定。実際、連載当時の1990年代には国会質疑で本作の名前が上がったこともあり、テレビで「やまと選挙」の特番が放送されたこともあったという。そんな本作だが、2025年現在の視点で観るとMCU『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』同様に現実の米国大統領の振る舞いと比較して「フィクションの世界の米国大統領の方が落ち着いていて現実味もあるな…」的な感想になってしまって不運ではある。大沢たかおも政府関係者から「海江田みたいな人が登場すればいい」と言われて、「こんな人、出てこない方がいい。いちゃ、ダメでしょ」と返答し、内心「飛躍してそんなことを思う人がいるんだな」と驚いたという。興行的に前作ほど振るってない背景には、前作が映画公開後にAmazonプライムビデオでドラマ作品として配信されたことで「前作がドラマのダイジェスト版で『配信に続く』だったから、今回もそうなるんじゃ…」みたいに思われてしまった可能性もあるのかもしれない。ただそれを言い出すと劇場版を分割して放送した『鬼滅の刃』も同じなので、そこは純粋に作品のポテンシャルの差なのかもしれない。一方で「この手の作品の続編映画の興行は前作の7割程度に落ち着く」という通説もあり、本作もその範疇との見方も出来る。ただ潜水艦の海中戦は映画館の大スクリーンと音響で観て損はない。
【追記】実写映画版では原作の「やまと選挙」の「革新連合」や「首班指名と連立協議」が大幅オミットされていたが、映画公開中のタイミングで公明党が自民党との連立離脱を発表して、野党が統一首班候補を探るなど、政局面でも映画より現実のが遥かに面白い展開になっている
現実のTVでガチ討論も『沈黙の艦隊 北極海大作戦』壮大な思考実験「やまと選挙」とは(1/2 ページ) | マグミクス
大沢たかお「俺のセリフをプーチン氏が…」揺れる現代政治とリンクする映画「沈黙の艦隊」で主演 - 社会 : 日刊スポーツ
- 公式ホームページが簡素な阿部寛がSNSで炎上
公式ホームページが簡素過ぎることを理由にSNSに疎い主人公役としてキャスティングされた阿部寛が全く身に覚えのない女子大生殺しの犯人としてSNSで特定されて炎上してしまう『俺ではない炎上』がオープニング興行1億円割れの厳しいスタート。本作はSNSで殺人犯にされてしまった阿部寛演じる主人公の逃亡劇をブラックコメディテイストで描いたサスペンス作品。「表面的な情報だけで物事を判断してはいけない」という作品のメッセージと「物語の語られ方」が見事に一致しており、作品自体は好評だが、テーマ設定的に「あー、またよくあるSNS啓蒙映画ね…」的な見られ方をしてしまったのが敗因か… 公開前の炎上を疑似体験出来るプロモーションは注目を集めた。
阿部寛、簡素すぎるホームページがキャスティング理由に 山田篤宏監督が力説「完全にハマると思っていた」 | ORICON NEWS
映画「俺ではない炎上」公式が炎上を疑似体験できるサイトを公開→手作り寒天載せてみたら想像以上にボロクソ言われて泣いた - Togetter
- 日本で不遇の『ヒックとドラゴン』、実写も…
2010年「3D元年」に3D映画として公開された1作目が最終9.0億円とそこそこの成績を出していたにも関わらず、2014年公開の2作目は署名運動も虚しく劇場公開スルー(映画祭などで無料上映はされたらしい)され、2019年公開の3作目は今度は謎に強気の全国300館の公開に踏み切り、最終2.63億円の大惨敗となった日本では不遇の『ヒックとドラゴン』シリーズ。そんな『ヒックとドラゴン』の実写映画版はアメリカ本国で2.62億ドル、全世界で6.35億ドルのヒットとなっているが、日本では最終5億円程度見込みと相変わらずの残念な結果に… アニメの実写映画化は元の作品からアレンジが加わり過ぎると批判の対象となるが、本作は逆に「元のアニメと同じ過ぎて何だかなぁ…」みたいな不満意見が出てるので、全ての人間を満足させるのは難しい。
『ヒックとドラゴン3』12・20日本公開決定 ギャガが配給パートナーに | ORICON NEWS
How to Train Your Dragon - Box Office Mojo
- 橋本環奈『カラダ探し』続編が前作から半減
携帯小説原作で、漫画アプリ「少年ジャンプ+」で連載された漫画版も大ヒットした人気作品を橋本環奈主演で実写映画化したループ系ホラー映画第2弾『カラダ探し THE LAST NIGHT』が前作(最終11.8億円)から半減の大コケ。所属事務所社長が「今回は取材の対象者が私のそれらの発言を橋本環奈が発したものとしてすり替え、取材に答えたもの」と擁護をしたパワハラ報道に朝ドラ『おむすび』の低視聴率などから、橋本環奈に敗因を求めるゴシップ記事も目にするが、元々この手のホラー映画は一発屋で続編は興行的に弱い傾向にあるし、同時期にジャンルが若干被って若者層も動員しているホラーテイストのループ映画『8番出口』が大ヒットしているので、橋本環奈だけに敗因を押し付けるのもお門違いだろう。また前作が2022年と当時の高校生は基本的に既に卒業済みで、学園モノとしては期間が空き過ぎてしまっているのも良くなかったのかもしれない。学園モノなら1〜2年で続編を公開するスピード感を持って欲しいところだが、もし3年も空いた理由が橋本環奈の多忙なスケジュールが理由なら、やっぱり敗因に橋本環奈は深く関わってるのかもしれない。
橋本環奈「カラダ探し」続編映画が大誤算だった「いまだイメージ回復せず」の深刻度 | アサ芸プラス
- バカリズム脚本映画、ドラマはヒットも…
19世紀ウィーンで起きた音楽史上最大のスキャンダルの真相に迫ったノンフィクション書籍をバカリズムが脚本家して映画化した『ベートーヴェン捏造』が最終3〜5億円程度見通しの大コケ。バカリズム脚本作品は以前から一部で人気を得ていたが、日テレのプライムタイムで放送されたドラマ『ブラッシュアップライフ』と『ホットスポット』の配信を含めた連続ヒットにより、より広い層からの支持を獲得。そのため映画興行でも化けることを期待したが、興行的にも話題性的にも特に跳ねることはなかった。
- 最後に…
『チェンソーマン』初登場1位でついに『鬼滅』首位陥落!
— ゴミ雑草 (@mjwr9620) 2025年9月22日
→10週目にして首位の座を明け渡した『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、ひとつ順位を下げて2位
前作『無限列車編』は12週連続1位で、連続首位を止めたのは『銀魂 THE FINAL』 2作連続ジャンプ https://t.co/m9sJ7gTAU4
前作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の13週連続観客動員数首位を食い止めたのは『銀魂 THE FINAL』だったが、今回の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の10週連続観客動員数首位を食い止めたのは『劇場版「チェンソーマン レゼ篇」』と2作品連続ジャンプアニメの首位独走をジャンプアニメが食い止めた。
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