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キムタク、子供部屋おじさんを護る/『BG〜身辺警護人〜』

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木村拓哉主演『BG〜身辺警護人〜』のシーズン2は初回視聴率17.0%を記録し、その後も視聴率14%以上を記録している人気ドラマだ。本作は2018年1月クールに放送されたシーズン1の続編だが、シーズン1が大きな案件をこなしていくチームモノの側面が強かったのに対して、シーズン2はキムタクと斎藤工のバディモノの側面が強くなっており、依頼の内容もスケールダウンしている傾向にある。一概にこの路線変更が悪いというわけではないのだが、結構ビックリしたのも事実だ。また一部報道によれば、ストーリーの後半に至っては新型コロナウイルス感染拡大の影響で脚本を変更した部分もあるという。本作は当初の予定を変更して放送回数も短縮することが発表されていることもあって、新型コロナの影響に残念さを感じずにいられない。ただ一方で『BG』のシーズン2自体が残念なのかと問われれば、そういう訳でもない。

 

 

以下シーズン2、第4話ネタバレ

 

例えば第4話目の依頼人は「20年もの間、ニート生活を続けるアラフォーの大輔」で、依頼内容は「出身小学校のクラス会で将来の夢を書いたタイムカプセルを掘るイベントが開催されるが、それをクラスの人に見られると恥ずかしいから自分の紙だけを回収したい」「でも自分は常日頃より誰かに狙われているから、外に出るのは不安」というモノ。斎藤工依頼人のことを「子供部屋おじさん」とバカにしたような態度を取り、「あんなお金も持ってなそうな引きこもりの依頼を受ける必要はない」というような発言をする。しかしキムタクは依頼人を信じて警護を決意。20年ぶりに外に出た大輔は、近所のお喋りおばさんや同窓会のために地元に戻ってきた友人などに話しかけられるが、ボディガード・キムタクは政治家を守るかのごとく壮大な音楽と共に大輔の前に立ち、彼らが依頼人に危害を加える人物ではないかと警戒する。

 

 

このシーンを見て「たかが引きこもりがちょっと外に出るエピソードをここまで大仰にやるなんてバカバカしくて笑っちゃうな」と思った人も多いだろうが、きっと長年引きこもりを経験した人からすると、殺害予告が送られてきた政治家並みに外に出ることは緊張感があったのだと思う。そういう意味では「引きこもりが外に出るエピソード」を「ボディガード・ドラマ」に落とし込んだというのは、「キムタクのボディガードとしての仕事の向き合い方」と「依頼内容のショボさ」のギャップにシュールな笑いを生みつつ、引きこもってた側の「外に出る緊張感」を上手く表現する面白いアイデアだったのではないかと思う。そしてこのシーンの捉え方こそが、「引きこもりの気持ちが分かる人」と「分からない人」の認識の差を生んでいるのではないかとも思う。

 

本作では最後、実は父親に憧れていた大輔がその気持ちを父親に伝え、父親は大輔に自分の理想を押してつけてしまっていたことを謝罪する。父親は当初、「息子を殺して、自分も死のうかと考えた」などとも述べていたが、両者が本音で語り合うことで、大輔は新たな一歩を進むことができた。

 

 

しかし現実はそう上手くもいかない。昨年は70代の父親が40代の息子を殺害する「元農林水産事務次官長男殺傷事件」が起きた。あの事件の被害者も父親を尊敬していたようだが、執行猶予を求めた裁判ですらも、両親の息子に対する言葉は残酷だった。「それでもこういうドラマをキッカケに少しでも良い方向に進む家庭があるのなら…」と願う。