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細胞たちが頑張る前半のコメディパートに対して後半は…/永野芽郁、佐藤健共演・武内英樹監督『はたらく細胞』ネタバレ感想

【チラシ2種付き、映画パンフレット】はたらく細胞 永野芽郁、佐藤健、芦田愛菜、山本耕史

永野芽郁、佐藤健出演の武内英樹監督作品『はたらく細胞』を観た。

 

  • 『はたらく細胞』、実写でワンダーランド化

はたらく細胞(1) (シリウスコミックス)

本作は清水茜氏の細胞を擬人化した同名漫画を『のだめカンタービレ』『テルマエ・ロマエ』『翔んで埼玉』など数々のコメディ色の強い漫画原作を実写映画化して興行的、批評的に成功させてきた武内英樹監督がメガホンを取った作品。体内パートの赤血球と白血球のメインキャスト2人が朝ドラ『半分、青い。』以来の永野芽郁と佐藤健の共演、体の外の人間パートの親子が『マルモのおきて』以来の阿部サダヲと芦田愛菜の共演など、キャスティング面でも注目を集めた。武内英樹監督は昨年の『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』でティム・バートン監督の『チャーリーとチョコレート工場』のパロディをしていたが、今回は「笑って泣けてタメになる【はたらく細胞ワンダーランド】へようこそ!!」というキャッチコピーにも表れているように、体内世界のビジュアルは『アリス・イン・ワンダーランド』モチーフ。体内の箱庭的なセットも魅力的だし、その世界の中でドジっ子の赤血球を演じている永野芽郁が道に迷っている姿は愛おしいし、全身真っ白な佐藤健が『るろうに剣心』『亜人』などで培ったアクションを披露している姿もカッコいいのに、真面目にやってるからこそ笑えるという非常にズルい状態が生まれていて楽しい。体内のセットの中にはSTAP細胞を連想させるスナックの看板などがあったりと小ネタも効いていた。

 

 

  • 基本1話完結の原作漫画本編とスピンオフを融合

本来であれば、体内の出来事だけで映画を作らなければいけないのですが、それにはハリウッド並みの制作費がなければ無理だったんです。そこで"外"にあたる人間たちの物語を描こうというアイデアが生まれました。

『はたらく細胞』武内英樹監督が明かす制作秘話「トウモロコシの粒の制作に●万円」 - エンタメをもっと楽しむWebマガジン「J:magazine!」

原作漫画では 「自分の身体かもしれない」と思って読んでもらう方が読者も楽しいだろう、という意図のもと細胞たちの宿主の人間の姿は描かれないが、実写映画版では製作費の関係から外側の人間たちの物語も描かれる。これは基本1話完結の読切漫画を一本の長編映画化するに当たっては適切なアプローチだっただろう。漫画原作の本編は年齢や性別を特定させるような描写がない反面、「勃起」や「射精」など男性の体の細胞を描く『はたらく細胞BLACK』や女性の健康問題を描く『はたらく細胞LADY』などのスピンオフ作品も展開されており、実写映画版では基本的に本編の物語を主人公細胞が働く女子高生の娘、男性の体を扱ったスピンオフ作品の物語を父親の体内という設定で描いている。その結果、「まだ若くて健康な女子高生のクリーンな体内(ユートピア)に対して、不健康な父親の体内は汚くて、正にブラックな職場(ディストピア)だ」という対比も上手く生み出しており、ピクサーの『インサイド・ヘッド』的な面白さもあった。

 

 

  • 前半の細胞の頑張りに対して後半は…

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本作の物語前半は「くしゃみ」「かさぶた」「インフルエンザ」「便意」など日常的に訪れるピンチによって生じる体内の細胞たちの戦いをコメディタッチで描いて笑いに満ちている反面、物語後半は「白血病」に侵されて、体内も滅亡の危機を迎えるシリアスな展開になる。ここからはやや不満になるが、本作の前半は「擦り傷が出来た時、外の人間の視点だと血が流れて大変だけど、中の細胞視点だといきなり地面に大きな穴が空いて、そこに落ちたら一生戻ってこられない(血となって体内の外に流されてしまう)、だから一生懸命バリア(かさぶた)を張って守るんだ!」という細胞たちの働きの頑張りが描かれるのに対して、後半は正常な細胞にまで作用する「抗がん剤治療」によって、細胞たちはなす術なくただ単に全滅を受け入れるしかない状況に陥る。その結果、抗がん剤の影響から逃げながら展開される佐藤健演じる白血球とFukase演じる異常細胞のバトルなどが「ん?それでこの戦いに勝ったり、負けたりしたらどうなるの?というか、正常な細胞視点で『抗がん剤治療』はどういう見え方なの?」とイマイチピンと来ない。また父親の赤血球が娘の体内に輸血されるエピソードにあまり意味がないのも残念。「壊滅した土地に新たな細胞が降り立って希望の光となり…」「永野芽郁演じる赤血球が次の世代に対して想いを綴ったまま手紙を…」みたいのは少しジーンとは来たが、「抗がん剤治療によって死滅せざるを得ない自分たちの運命」と「排除されるしかない異常細胞の運命」を重ねて、「宿主のために最後まで懸命に働き次の世代に想いを託して消えていく美学」的なエモさがもう少し欲しかった。

 

 

  • 最後に…

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そんなこんなで個人的には前半に対して後半はややグダリを感じたりもしたが、中盤の便意のシーンなど大変楽しく観た。消化されることなくそのまま出てくることで有名なトウモロコシの粒など最高に笑えたが、監督曰くあの粒だけで70万円の費用がかかることから、プロデューサーには止められたが、監督は笑いのために押し切ったのだという。予告編でも異彩を放っていたし、大正解だろう。ところで、これだけ大ヒットだと便意のシーンで笑えないくらい自分もピンチになっていてリアル4D状態になっていった人もいたのかな…、なんてことも思ったりした。

 

  • オマケ

自分の中で「加藤清志郎ではなく鈴木福が判明キャスティングだったのでは?」疑惑のあるイケメン男子高校生は「デート初日に女の子の母親が既に亡くなっている地雷を踏む」「付き合った瞬間に彼女の父親が倒れて、その会社の上司から娘のための学費のために労働を重ねてたことなどセンシティブな話をされて、それを彼女に伝える役割を担う」「彼女が白血病で治療、彼女の父親と共に応援」「彼女の医学部入学式に彼女の父親と共に出席」という「なんかスゲェな…」なキャラになっていた。

 

 

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