『ドラクエ7』のネタバレ注意
『ドラゴンクエストⅦ』のPS版をプレイしたとき、自分はチビィを殺した。チビィとはルーメンという町に登場する虫で、その町で一番大きな屋敷に住んでいるシーブルというキャラクターによって飼われていた。チビィは町の住人から町を危機に陥れる怪物ではないかと恐れられており、主人公たちは「チビィを退治してほしい」とお願いされる。
自分はチビィを悪い虫だとは思っていなかった。ただ物語の進行上、この住人たちのお願いを引き受けないと「物語が進まない」と思い引き受けた。もうプレイしたのが何年も前なので記憶が定かではないが、一度断ったがその後引き受けるという形を取ったと思う。
自分は物語の流れに沿っていれば、チビィを助けるような展開になるのだと思っていた。だからチビィとのバトルが始まったときも違和感を覚えつつ、このチビィを倒したとしても物語上は瀕死状態で、何だかんだ救われるイベントが用意されているのだと信じていた。だから自分はチビィを倒した。
しかしその次に用意されていたイベントはチビィの死だった。そしてチビィと同じような虫が町を襲い、その町は滅びてしまった。現在に戻り、滅びてしまった町跡でマリベルは「滅びることは避けられない運命だったのね…」みたいなこと言う。自分はそのセリフを聞いて、『ドラクエ7』の鬱々とした雰囲気に酔いしれていた。
ただ実はこのイベント、チビィを殺さない運命も存在していたのだ。それなのに自分はチビィを殺す運命を選び、その挙句に勝手に「避けられない運命」と決め付けて酔いしれてた。それどころか後に訪れるレブレサックという村で、村人を守るために魔物の姿になっしまった神父を村の住人が気づかずに火炙りにしてしまう展開をみて怒りに震えていた。本当はその前の町で自分も似たようなことをやっていたのにだ。いや、もしかしたら薄々「チビィは別に悪くないんじゃ…」と思っていたのにも関わらず、物語の進行のためにその場の空気に流されて殺してしまったのだからレブレサックの住人よりタチが悪いかもしれない。
自分は3DSでリメイクされた『ドラクエ7』をプレイしたときにはチビィを救った。「もう同じ過ちは犯さない」と誓いながらプレイしたからか、どうして自分が過去にチビィを殺す展開を選んでしまったのか分からないくらい、スンナリとチビィを殺さない運命を選ぶことができた。
これほど簡単にチビィを殺さない運命を選ぶことができる選択で、過去の自分はどうしてチビィを殺してしまったのか… いくらリメイク版で殺さなかったからといって、オリジナル版で殺した事実は「なかったこと」にはできない。それをやったら、本当にレブレサックと同じになってしまう…
『ドラクエ7』は人間の闇の部分を描き出したゲームと評される。チビィを殺した人の中で「殺さない運命」があることを知らない人も多いと思う。自分もクリアした後に知った。それでいてレブレサックの過去の住人や現代の村長には怒ったりしていた。愚かだったのは自分だったということをクリア後に教えられたゲームとなった。
