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「劇場版コード・ブルー」と「万引き家族」が大ヒット!フジテレビ製作映画のバランスと亀山千広の想い

劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-

「劇場版コード・ブルー」が最終興行100億円が視野に入る大ヒットスタートを切った。現実問題流石に100億円突破は難しいようにも感じるが、実写邦画としては久々の大ヒットスタートになった事は間違えない。ただフジテレビ製作のテレビドラの劇場版が公開されヒットされる度に「これは映画じゃない」みたいな苦言をよく目にする。今回のエントリーでは「でもフジテレビ製作映画のラインナップって結構バランス良いんだよ!」という事を伝えたい。

 

亀山千広さんの映画への想い

youtu.be

まず初めにフジテレビに映画事業局を作り数々のヒット作品を連発した亀山千広さんの想いを解説をします。

 

  • テレビドラマと同じことをした「踊る」の劇場版

踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!

今のフジテレビ製作の映画がスタイルはやはり踊る大捜査線」のプロデューサー・亀山千広さんが生み出したといっても過言ではないだろう。亀山さんは「踊る大捜査線」の劇場版を製作する際に当初はテレビドラマ版とは打って変わって砂の器」のような本格サスペンスを作ろうと考えていた。しかしそれはお客さんが求める物とは違うと判断した亀山さんはテレビドラマのスタッフをそのまま使ってテレビドラマと同じことを劇場版でもした。今でこそこのやり方は当たり前だが、当時はテレビドラマの劇場版だとしても映画のスタッフを集め直して撮影した事が多かった為画期的なやり方だった。結果的に踊る」の1作目は興行収入101.0億円のメガヒットを記録。2作目に至っては173.5億円と未だに実写邦画の歴代1位をキープしている。しかし「踊る」のヒットは日本映画に観客が戻ったと評価される反面で、日本映画と観客の質が低下したと非難される事も多い。

 

  • 「踊る」の劇場版が非難された理由

踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!

何故非難されるかというと、それはテレビドラマと映画の壁を取ったしまったからだ。テレビドラマは多くの人が見る為にレーティングや放送禁止用語に考慮する。しかし映画は観客が作品を選んで観る為にレーティングや放送禁止用語には考慮しない。またテレビドラマだと洗濯を畳みながら観る人もいれば、スマホをイジりながら観る人もいる為画面だけで無くセリフでの説明を加えて観客を置いてけぼりにしない工夫がされている。しかし映画は劇場で集中して観るメディアな為セリフの説明がなくても画面だけで観客に意図を伝える事が出来る。ただテレビ局製作映画だとテレビ放送を前提に映画を製作する為初めからレーティングや放送禁止用語に考慮する。またテレビのスタッフがテレビドラマと同じように作るために説明セリフが多くなる。その結果テレビドラマと映画の壁がなくなってしまったというのが非難側の意見だ。

 

 

「踊る大捜査線」は日本映画の何を変えたのか (幻冬舎新書)

「踊る」の非難側の声に対して亀山千広さんは「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか?」という本の中で自分の考えを述べている。それを一部引用すると、

「テレビみたいな映画」という批判は、つまるところ「映画とは誰のものか」という議論に行き着くと思います。僕としては、『踊る大捜査線 THE MOVIE』もたくさんある映画のジャンルの中の一つに過ぎません。僕が映画館に通ってハラハラドキドキしながら見ていたものの中には、当然ATGのようなアート系の作品もあったし、大メジャーなハリウッド映画もあった。だから、芸術とか文化の邪魔をする気はないし、もちろんバカにもしていないし、心底素晴らしいものだと思っている。

(中略)

僕はハリウッドの人間ではないので本当のところは分かりませんが、こちらから垣間見える雰囲気で言うと、向こうは娯楽作品と芸術作品が共存しているように見えます。なぜそれが可能かというと、まずビジネスがベースにあるからです。

商業的に成功しなければ、何も始りません。それがあって初めて芸術作品が生まれてきたり、新人監督が脚光を浴びるようになったりするんです。もしビジネスとしての映画が崩れたら、映画文化は停滞してしまう。新人監督が出てくることもないだろうし、芸術作品がスポットライトを当てられることもなくなってしまうでしょう。だからまずは、ビジネスのベースがしっかりできていることが重要なのです。 

と語っている。つまり「踊る」のようなヒット作が出来ればその儲けで芸術に出資出来ると語っているのだ。

 

そして父になる

亀山さんは「踊る」以降「海猿」「ガリレオ」などテレビドラマの劇場版を量産させていきました。また特技監督だった樋口真嗣監督に長編映画監督デビューさせたり、三谷幸喜ブランドを作り上げたりと日本映画界へ貢献してきました。そして2018年からの視点でみれば2013年に製作した「そして父になる」に出資した役割は小さくはなかったでしょう。これは亀山さんが映画事業局を新設して局長として10年目を迎えた年で局長としての最後の作品でした。当時の記事を読むと、

フジテレビの映画事業にとって、今年はこの10年の集大成になりました。あくまで利益を上げることが命題ですが、人や意欲作に先行投資することもできた。その結果、「そして父になる」のような作品が生まれました。

(出典:【話の肖像画】フジテレビ社長・亀山千広(57)(1) - 産経ニュース)

と語られています。つまり商業主義と揶揄されたお金で見事に芸術作品を作り上げたのだ。そしてフジテレビが出資した事で福山雅治というスター俳優を主演に迎え、テレビを使って作品をしっかりと宣伝する事も出来た。その結果興行収入32.0億円の大ヒットを記録した。これは普段この手の映画に興味を示さない層にしっかりと作品をアピール出来た証なのではないか?つまりフジテレビは10年越しに再び日本映画の観客を増やしたのだ。

そして父になる
 

  

 

2018年フジテレビ製作映画

2018年フジテレビは7月までに4本の映画を公開している。 

 

  • 今夜ロマンス劇場で

今夜、ロマンス劇場で Blu-ray通常版

2月に公開された「今夜ロマンス劇場で」は映画監督を夢見る青年と映画の画面から飛び出してきたお姫様との切ない恋を描くファンタジー映画です。近年この手のスイーツ映画は劇場に溢れています。しかし本作が他の作品と違うのは少女漫画が原作では無くオリジナル脚本で勝負した事。フジテレビは昨年も「本能寺ホテル」や「ミックス」など人気原作に頼らず独自の作品を作ろうとしている。この心意気は作品の出来に関わらず賞賛に値するでしょう。

 

いぬやしき スタンダード・エディションBlu-ray

4月に公開された「いぬやしき」は人気マンガの実写映画化です。「ロマンス」の時は人気マンガに頼らない心意気を評価した矢先に人気マンガの実写映画を褒めるのは少しアレですが、別に人気マンガの実写映画化が悪い訳ではないのです。問題は全体のバランスを考えないで量産している事です。本作はクライマックスで新宿の空中戦が描かれますが、そのシーンは大量のCGが使われています。また海外の最新のCG技術を取り入れ機械にされた人間を描きました。これもお金があったからこそ出来た事であり、そのお陰で日本のCG技術の進歩にも一役買いました。さらに木梨憲武さんを主演にするという日本映画として珍しい人選が出来たのもフジテレビだからこそ出来た事だと思います。

 

万引き家族 映画 パンフレット

6月に公開された「万引き家族」はカンヌ映画祭パルムドールを受賞するなど世界的な評価を受け興行収入40億円を超える大ヒットを記録しました。本作のパルムドールを受賞する前の興行見込みは7億円程度で10億円行けばヒットといった感じだったそうです。しかし結果的には大ヒット。これはもちろん作品そのものが持つ魅力やパルムドールを受賞した事で世間から注目を浴びた事がヒットの理由でしょうが、「そして父になる」「海街diary」「三度目の殺人」と是枝裕和監督作品に出資し続け、地上波のゴールデンタイムで過去作品を繰り返し放送した事でブランド力を高めたフジテレビの功績は大きいはずです。

万引き家族【映画小説化作品】

万引き家族【映画小説化作品】

 

 

【チラシ付き、映画パンフレット】 劇場版 コードブルー ドクターヘリ緊急救命

7月に公開された「劇場版コード・ブルー」は大ヒットテレビドラマの劇場版で、フジテレビが一番得意とするジャンルです。そして一番普段映画に興味がない層を劇場に呼び寄せる事が出来る作品です。また本作は大規模災害を扱うためテレビドラマよりスケールアップした映像を大スクリーンで味合う事が出来映画の醍醐味を体験する事が出来る。ここから新規の映画ファンが誕生する可能性も秘めています。

さらに本作のように絶対ヒットすると確信出来る作品があるからこそオリジナル脚本の映画やCGを派手に使うアクション映画、社会派の映画などリスキーな企画に挑戦する事が出来る。これはやはり個人の力ではなく、フジテレビのような大企業ではないと出来ない事だろう。

また「ロマンス」は女性やカップル、「いぬやしき」は若い男性や中年男性、「万引き家族」は映画ファン、「コード・ブルー」はドラマファンと様々な層の為の作品を製作していて全体としてとてもバランスが良い。これこそが映画会社(フジテレビは映画会社ではないが)の理想的な形なのではないか?

  

 

最後に…

現在亀山さんはBSフジに行ってしまった為フジテレビ製作映画には関わっていません。しかし今のフジテレビ製作映画にも亀山さんの想いは確実に残っていると思います。仮に想いが残ってなくてもビジネススタイルは残っているはずです。それにしてもフジテレビ製作映画は「踊る大捜査線」を筆頭とするテレビドラマ映画の功罪ばかり語られて万引き家族」みたいな社会的な評価を得た作品はフジテレビとは切り離した評論ばかりになるのが少し残念です。