幕末を舞台にしたオープンワールドゲーム『Rise of the Ronin』をプレイした。
- メタスコアイマイチも大絶賛の幕末ゲーム
本作は今年の3月に発売されたゲームだが、メタスコアがイマイチだったことから懐疑的な空気が生まれてしまった作品。ただ発売から直ぐに「普通に面白い」「幕末の世界を探索できるのが楽しい」「幕末の偉人が登場する度にテンション上がる」「やめ時が見つからない」「メタスコアとは何だったのか」と好評な意見が相次ぎ、同日発売の『ドラゴンズドグマ2』の悪評が目立ったこともあってか2週目以降もジワ売れしているという。本作は浪人の主人公が坂本龍馬や高杉晋作、桂小太郎ら倒幕派と徳川慶喜や勝海舟、新選組ら佐幕派両陣営における義務教育の歴史教科書の太文字レベルの重要人物たちに「お前、面白い奴だな」と気に入られていきながら幕末の歴史的イベントを体験していくゲーム。好感度を高まると異性、同性問わず恋愛にも発展して、二股をかけると詰められるシミュレーションゲーム的要素もある。そのためある程度ちゃんと勉強してきた人なら伊藤博文が出てくれば「あっ!初代総理大臣!」と盛り上がれるし、どんなに学校の勉強をサボっていたタイプの人でも福沢諭吉が登場すれば「一万円札の人だ!」とテンションが上がることは間違いなしのゲーム。ただメタスコアを付ける海外のプレイヤーからすればペリー含めてそんなに有名人物という訳ではないので、イマイチピンと来ない部分もあるのかもしれない。
- 魅力と弱点
またアクション面は敵に合わせて流派を変えながら「石火」と呼ばれるパリィを決めていくアクションはやり応えがあって楽しいし、横浜、江戸、京都の3都市を駆け巡るオープンワールドも黒船が来航した横浜は日本と西洋の文化が入り混じっているのに対して、江戸にはまだあまり西洋の文化が入ってきていないみんながイメージするザ・江戸時代的な街並みが広がっており、京都に関しては清水寺など現代京都の観光スポットにも直接繋がる歴史を感じさせる建造物や道が探索出来る(横浜には中華街、江戸には浅草の雷門など今に繋がる観光スポットは勿論あるが、京都の今に繋がる歴史度の高さは段違い)など、それぞれの都市の特徴を捉えた雰囲気の異なるフィールドが用意されている。一方でアクションゲームとしてもオープンワールドゲームとしても特に目新しさは感じられず、グラフィックもPS5専用ソフトにしてはスペックを活かしきれてない感は否めないので、その点も海外のレビュアーからすると「可もなく不可もなく」という評価に至ったのかもしれない。街を歩く人々の会話が繰り返しなのも、直近の『FF7リーバス』と比較して生活感が感じられずに残念だった。ただそういう諸々のマイナス点を加味しても幕末の世界観を探索しながら、幕末の歴史的イベントをロールプレイングしていく感覚は堪らないので、そういうのを味わいたい人にはオススメのソフトと言える。
- 歴史イベントはザクザク展開
個人的には新撰組の一員として池田屋事件を体験出来たのは心の底から楽しかった。ただ池田屋事件に限らず、幕末の歴史的イベントはゲーム独自の解釈を交えつつ丁寧に歴史的背景を描写しながら進行していくというよりは「よし!次はXXだ!」と割とザクザク進んでいくので、重厚な歴史ゲームを望んでいる人にとっては期待に添えないかもしれない。また史実をベースにした独自解釈を超えて「村山たかが井伊直弼暗殺前に暗殺される」「浪士組の結成は徳川慶喜の京行きを護衛するため」など物語を盛り上がるためもしくは物語の都合のための歴史改変も普通にある。史実と舞台的シチュエーションが異なる描写も山ほどあるので本格派を期待する人にも合わないかもしれない。その割には「坂本龍馬生存」という劇的なイベントになりそうなシーンもプレイヤーに「ここで勝てばもしかしたら龍馬を救えるかも!」みたいな期待をさせる訳でもなく結構アッサリ助かったりしてしまって拍子抜けしたりもする。ただそういう細かいところがノイズにならない人、笑って見過ごせる人にとっては幕末の世を浪人としてロールプレイングする最高のゲーム体験になっていると思う。
- 最後に…
個人的な不満点としては倒幕派、佐幕派どちらにも肩入れせずに「片割れのためなら利用出来るものは何でも利用する個人主義の自由奔放な浪人」的なスタンスでプレイしていたつもりだったので、途中から主人公が「片割れよりも日ノ下のために」的なスタンスになっていったのは「あっ、お前そういう感じだったんだ…」と若干萎えた。それでもラストは感動的だったし、龍馬と片割れの交流を描く海外編と土方歳三の最期を描く北海道編のDLCを是非出してほしい。