スポンサーリンク

【ネタバレなし感想】トム・ホランド主演・MCU版『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を「本当の意味で楽しむ」とは何か

S.H.フィギュアーツ スパイダーマン [インテグレーテッドスーツ] (スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム) 約150mm ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア

日本でも大ヒットスタートとなった『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』だが、本作を本当の意味で楽しむには「××はマスト」という意見が後を絶たない。

 

勿論、全作観ているに越したことはない。それは大前提だ。そして本作は前作の直後から物語が始まっていることから、一見前作はマストなような気もしてしまう。しかし、実際は「前作の敵がスパイダーマンが悪人に見えるようなフェイク映像を流出させ、メディアがそれを報じて、ピーターの生活が大変なことになる」という認識さえ持っていれば、前作を観ていなくてもその後は問題なく物語についていける。寧ろ「前作は観た方がいい」を許すと、「ただ前作は『エンドゲーム』の直後の物語で、その『エンドゲーム』は完結編二部作の後編だから〜」と芋づる式に観なければいけない作品が増えてしまってキリがない。結局、ここまで作品数が増えてしまったMCUを今から楽しむには覚悟を決めて1から順に観るまたは重要作品だけをピックアップして順に見るか、もしくは何処かで割り切って途中から観始めて、気になったところを遡っていくしか道はない。そして「MCUには興味ないけど、過去作のヴィランが登場するなら気になるな… でもMCU観てなくて、話が分からないと嫌だから躊躇う…」くらいのテンションの人は、それで本作を見逃すのは勿体ないと思うし、全作観ない限り何処かで割り切らなきゃいけないなら、本作は「一緒に住むメイおばさんと彼女のMJと親友のニッドは正体を知っている」「ドクター・ストレンジという魔法を使う知り合いがいる」ということを抑えれば、人間関係も割とシンプルで単体でも観やすい。だから個人的には本作に関しては、過去シリーズのどっちかに思い入れはあるけど、MCUを観なきゃ分からないなら観ないという人は、予告編だけ観て雰囲気を掴んだらそのまま劇場に向かっていいと思うスタンスだ。

 

 

ただそれでも「本当の意味で本作を楽しむなら…」という人もいるだろう。ただその話を始めるなら、そもそも「本当の意味で楽しむ」とは何か、ということを考えなくてはならない。そしてこの話はどうしても嫌味たらしい表現になってしまうし、人を不愉快な気持ちにさせてしまう可能性がある。そして、これを書くと「じゃあ、お前はどうなんだよ」とブーメランが返ってきてしまう恐れもある。更にこの件は話が煮詰まるにつれてどうしても平行線を辿るだけになってしまい、最終的には「その人個人が好きにすればいい」以上の結論はない。

 

それを踏まえて、「こういう意見の人もいるんだな」くらいのニュアンスで捉えて欲しいのだが、例えば本作公開を機に過去作品を初めて観たという人は本作を本当の意味で楽しめているのだろうか?勿論、本作と過去作の演出としての繋がりを読みとることは出来るだろうし、様々な情報から過去作の置かれた不遇な立場の文脈を理解することもできるだろう。しかし、これは『シン・エヴァ』や『マトリックス レザレクションズ』にも当てはまることだが、「本作公開の予習として後追いで入れた知識」と「リアルタイムでの体験」では、やはり埋められない溝がある。これは「リアルタイムでの体験」をしてきた人が偉いという話ではない。当然、それはその人の年齢や文化環境によって左右される要素だし、こういう部分でマウントを取る人の声が大きくなり、多数派を占めるとそのコンテンツの衰退に繋がる。

 

 

一方で「リアルタイムの体験」が強いのは紛れもない事実だ。恐らく多くの人が「この映画シリーズ、後追いしてハマったけど、1作目からリアルタイムで観たかった」という悔しさを抱いたことがあると思うし、逆に後の大ヒット作品を初期から触れていたことを嬉しく思ったこともあるはずだ。その反面で好きな作品に辛いことが起き、その後は特に挽回の機会もなく世間からは忘れ去られたり、もしくは半笑いでネタにされ続けてしまい、悲しい想いをしたことがある人も少なくないはずだ。そしてそういう体験は同じ作品をリアルタイムで触れていても、人によってそれぞれ明確に、または微妙に違ったりする。だから本作はそういう「多くの人が思い入れてるであろう所や悔しく思ってるであろう所が癒される映画」になっている一方で、強い拒否反応を起こしたり、受け入れ難い映画と認識する人が出てくるのも当然な映画になっている。

 

まとまりのない話になってきたが、本作に関して「本当の意味で楽しむには〜」みたいな話をし始めると、「リアルタイムでシリーズを鑑賞してきた上で本編だけでなく役者やシリーズに関しての周辺知識も抑え、尚且つ各作品が本意でない形で幕を閉じ、新たなシリーズが始まってしまった悲しみの期間を持ってないと…」みたいな話になってくる。

 

 

ただ本作はそんな窮屈な楽しみ方しかないのだろうか?過去の『スパイダーマン』映画を観てなかったり、後追いだったとしても、MCUを順に追ってきた人だからこそ得れる体験があるように、過去作品をリアルタイムで追ってきたからこその体験がある。何が言いたいのかというと、本作を「本当の意味で楽しむ」とか言い始めるとキリがないけど、本作を「本当の意味で楽しんだ人」は大勢いる。そしてそういう人たちは全ての演出を拾えているのだろうか?きっとSNSで色々な世代や体験をしている人の感想を読むことで、「この映画にはこういうツボもあったのか」と新たな発見をした人が殆どだ。だから何か一つでも『スパイダーマン』映画に思い入れがあるのなら、別作品を追ってないことを理由に「本当の意味で楽しめないなら…」などとハードルを高くする必要はない。逆に「自分は順に観て、楽しみたいんだ!」とか「思い入れがあるからこそ観たくない」という人も、所詮は趣味の映画の話なのだから自分が思うようにすればいいのではないかと思う。

 

最後にMCUは順に観た方がいいということは前提に、殆どの作品が初見でも楽しめる作りになっていると思うし、また本作の特殊性から過去作に思い入れがあるのならMCUであることをあまり意識せずに観て欲しい作品だと思った。

 

関連記事