
関西・大阪万博と絡めた『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズのネタバレ感想。
- 「あのひたすら未来を信じられる感じ」
『ALWAYS~』は、まさに理想の昭和を映像化したものなんです。/だから昭和の、あのひたすらに未来を信じられる感じは、学んでもいいんじゃないかな。
『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズは西岸良平の漫画『三丁目の夕日』を原作に山崎貴監督がVFXを駆使して昭和時代を再現した実写映画。2025年開催の「大阪・関西万博」には『オトナ帝国』『20世紀少年』と並んで『ALWAYS 三丁目の夕日』を使った批判が多い。ただノスタルジー批判が前面に出ている『オトナ帝国』『20世紀少年』と異なり、基本ノスタルジーに肯定的な『ALWAYS 三丁目の夕日』は「大阪・関西万博」と共に批判の対象になりがちだ。実際、山崎貴監督も『ALWAYS 三丁目の夕日』で描かれる昭和は「理想的に塗り替えられた思い出の昭和」と位置付けており、そこから「あのひたすら未来を信じられる感じを学んで欲しい」という趣旨の発言もしている。
- 豊かになっても、お金では買えない「想い」
ただ『ALWAYS 三丁目の夕日』は「高度経済成長期の日本よ再び!」的なイメージが強い反面、シリーズで1番の名シーンと言われる1作目のプロポーズは「高価な指輪」ではなく「実態のない透明な指輪」で行われる。そこにはどれだけ日本が物質的に豊かになろうとも、お金では買えない「想い」が込められている。そしてその「想い」は昭和と今の夕日を通じて、どんなに時代が変わっても変わらない普遍的な価値として存在し続けることを伝えてくる。
- 「幸せ」とは何か…
昭和30年代から、遮二無二に行った先にある時代が現在とするならば、その過程で削ぎ落としていってしまった中に大事な物があったんじゃないんかという事に関して、ちゃんと映画の中で伝えていきたいと思っていました
どんどん成長していくのが正義という世界に生きてきたんだけど、やっぱりこのことは見直すべきだと思うんですよ。究極の目的が幸せを追求するということだったら、そっちじゃない。繁栄とか経済的に豊かになるということには正義がないということにそろそろ気づかなければいけない
「(楽屋ハナシ) 百田尚樹×山崎貴 幸せって何だろう」 朝日新聞/2013年12月30日
山崎貴監督は高度経済成長期に対して基本的に「敗戦から立ち上がった日本」としてポジティブに捉えている反面、その時代の「みんなで前を向こう、上を目指そう!」の空気によって失ってしまったモノへの懸念も抱いており、「繁栄とか経済的に豊かになるということには正義がない」とまで発言している。そうした想いは続編の2作目、3作目にも反映されており、特に東日本大震災の翌年に公開された3作目では「東京五輪で敗戦から復興した日本の高揚感」を描くと同時に老町医者が高度経済成長期にも関わらず「お金持ちになるより、人の安心する顔を見る方が幸せ」と出世を望まない若者について「こんな時代に得難い若者」との見解が示す。ラストの夕日の意味合いも前2作の「いつの時代も変わることのない幸せの確認」から「いつまでもこの幸せが変わらずに続いて欲しいという今への願い」に変わっている。
- 最後に…
『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズには「4作目は万博」との話もあったが、様々な事情から実現には至っていない。そして続編が実現する前に、55年ぶり2度目の大阪万博が現実の日本で開幕しようとしている。
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