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【「長野県警と毛利小五郎」の渋い合わせ技】上原由衣の大和敢助への愛の大きさ表現、『名探偵コナン 隻眼の残像』ネタバレ感想

劇場版 『名探偵コナン 隻眼の残像』オリジナル・サウンドトラック (劇場版『隻眼の残像』オリジナルミニ色紙2枚封入)

『名探偵コナン 隻眼の残像』を観た。

 

  • 今年は「長野県警+毛利小五郎」の合わせ技

本作は『劇場版名探偵コナン』シリーズ第29作目で、「長野県警」の警部・大和敢助が左眼を失った事件の全貌が描かれる作品。「長野県警」は原作ファンの間では「コナンからの信頼も厚い優秀な地方警察組織」として人気が高い反面、毎年の映画くらいしか観ないライトなコナンファン程度だと「誰?」とまではいかなくても、「あー、なんかいたかもな… よく覚えてないけど」となりかねない存在。製作陣も「長野県警だけでは興行的に弱い」と思ったのか、今回はコナンを少しでも触れたことのある人なら誰でも知ってるといっても過言ではない、原作初期からのレギュラーキャラにして圧倒的認知度の高い・毛利小五郎にもフォーカスを当てた作品となっている。メインビジュアルも長野県警のメンツよりも扱いが良いし、宣伝でも「今回わたくし眠りません!」「#眠らない小五郎」と完全にオッチャン推し。『ハロウィンの花嫁』でも「警察学校」+「佐藤・高木両刑事」だったので、製作陣としては「比較的最近or認知度の低いキャラ」と「初期からのお馴染みのキャラ」の合わせ技で、最近コナンの原作に触れてない人たちに「映画を機に再び戻ってきて貰いたい」的な目論見もあるのだろう。

 

以下ネタバレ(若干ネガティブ要素もアリ)

 

 

  • 近年終盤の活躍の場がなかった小五郎

劇場版での毛利小五郎の活躍は2005年公開『水平線上の陰謀論』以来20年ぶりで、声優が小山力也さんになってからは初めて。小五郎は「眠りの小五郎」としてコナンに麻酔銃で眠らされて、コナンの代わりに推理を披露する役割だが、劇場版ではコナンとゲストキャラのタッグによる推理が披露されるため、そもそも「眠りの小五郎」の登場率自体が低めの傾向。一昨年公開の『黒鉄の魚影』では久々に登場したが、 一昨昨年の『ハロウィンの花嫁』では冒頭で灰原哀を救う形で病院に緊急搬送されて、蘭姉ちゃんと共に退場。昨年の『100万ドルの五稜星』では五稜郭タワーで高所恐怖症を発症して腰を打って退場するなど、ゲストキャラの兼ね合いから近年の小五郎は推理面、アクション面共に終盤の活躍の場が与えられにくい存在となっていた。こうした経緯もあったので「今回はオッチャンの活躍が描かれる」となれば、そりゃあテンションが上がるのは当然。

実際、『14番目の標的』を連想させる、クライマックスの射撃シーンはカッコよかったのだが、本音をいえば「長野県警との合わせ技だから尺的に仕方ないのかもしれないけど、もう少しワニとの関係性の掘り下げがあった方がグッと来ただろうな…」とか「ワニが射殺された直後にみんなの前で涙まで流して狼狽えるのは若干イメージと違うな…」みたいなことも思った。小山さんはパンフレットで「『ついてくんな。遊びじゃねぇんだ』のシーンも、この一言を重視しすぎると型にはまってしまう可能性が出てきます」と発言していたが、そうした懸念が当てはまってしまっている部分もあったと思う。またその割には『水平線の陰謀論』的な「小五郎の事件への私的な想いの強さから、コナンの推理よりも先を行っていた」みたいな感じが薄かった(ワニのあだ名の推理的に小五郎独自で犯人に辿り着いていたのだろうが…)のも物足りなかった。正直、焼き直し感も否めなかったし、同じ焼き直しでも小五郎映画としてコッテリ焼き直してくれるならともかく、前述したように長野県警との合わせ技によるアッサリとした焼き直しなので、近年のビジネス的な期待が大きくなったコナン映画の弊害みたいのも感じたりした。

 

 

  • 上原の大和への愛の大きさ表現

毛利小五郎と並んで本作の目玉となっているのは、大和警部の過去。冒頭から「10ヶ月前」と表記されて、「『コナンの世界は半年くらいしか時間が経ってないのに、技術の進歩が早すぎる(その割に蘭姉ちゃんはいつまでもガラケー)』とツッコまれがちだけど、大和警部は左眼を失ってから1年も経ってなかったのか…」と改めてコナン世界の時間感覚の歪みを再認識させられる。大和警部の過去については、正直アニオリの枠を出ないような内容だったが、改めて大和警部が自分の入院中に上原が事件の捜査のためとはいえ地元の名家に嫁いでいた件に対して複雑な気持ちも抱いていたことや、上原側の大切な人を失ったと誤解した当時の自分の押さえられない気持ちを確認出来たのは良かった。また一昨年の『黒鉄の魚影』や昨年の『100万ドルの五稜星』に対してサプライズ感が薄いのは否めないも、青山原画で描かれる上原の大和への告白チックなセリフと表情も可愛かったので「これが観れれば全部良し」感はあった。余程ピュアな観客以外は騙されないであろう「大和が死んだミスリード」の際の上原の絶叫と涙は「どうせ映画で原作のメインキャラは死なせないんだから、こうやって分かりきったことを大袈裟にやられると萎えるな…」と思っていたので、「実は上原は大和が生きていることを知った上で、『もしも本当に死んでたら…』を想定した愛の大きさを表した演技だった」というオチは「クゥ〜、やられた、こう来たか」という満足感もあった。

 

  • 犯人の動機と着地点の不一致

ただ今回の犯人による「今、国会で通そうとしている新しい司法取引によって、人をチクッた奴が無罪放免になるのはおかしい!」と上原に対する「愛する人を失った人間は何をすればいい!?」という問いに対しての着地点が「警察の職務倫理を忘れたお前が悪い」と説教されて泣き崩れる、というのは「いや、話違くね?」と全然上手く回収出来てない感が半端なかった。そこは愛する人を失ったと思ってアクロバティックな行動に出た過去のある上原なりの犯人への言葉が欲しかった。また「司法取引」に関してはエンディング手前まで「この要素いる?」感は凄かったが、エンディング後はかなり後味の悪い使われ方をしていて「お、おう…」となった。かねてより一部では「コナン映画は警察権力を良く描き過ぎ」との批判があったので、今回の「司法取引」を特に批判も深掘りもしない描き方も「まー、そういうものかな…」と流していたが、最後は嫌な感じで締(し)めていて、「自分の理解不足なのかもしれないけど、結局この映画を通して『司法取引』について何を言いたかったんだ?」感もあった。まー、犯人視点では「最終的に『司法取引』に応じることで大切な人の大切な人を守れる皮肉」、安室視点では『ゼロの執行人』とは異なる「安室の恋人(この国)の守り方のエグい面を見せられた」という見方は出来るのかもしれない。

 

  • 追記

mjwr9620.hatenablog.jp

青山剛昌先生が「(上原由衣は)本当は犯人だった」発言を踏まえた上での「警察の職務倫理」の考察記事を書いたので、興味があったらこっちも読んで。

 

 

  • 最後に…

一応子供向け映画だから120分を切らなきゃいけない方針もあるのか、所々「テンポがいい」というより「展開が急だな…」みたいなところも多かった。最後に諸伏の氷ダイブからの一連の流れは「いくらなんでも無理があるだろ!」と苦笑いさせられた。

 

  • オマケ

最新107巻の「名探偵図鑑」、「なんでこのタイミングでこのキャラクター?」と思ったけど、今回の映画のゲスト声優を見て納得。

 

 

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